【メガヒット塗料が生まれたきっかけとは?】超低汚染リファインSi-IRの誕生秘話

APラインナップ 塗料製品名 2021.04.08 (最終更新日:2024.01.16)
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アステックペイント初の自社開発品である超低汚染リファインSi-IR。2015年の発売から約5年でアステックペイントの人気No.1塗料へと成長を遂げたメガヒット商品です。この超低汚染リファインSi-IRを開発したのは、アステックペイント技術開発本部の大坪 麻理子さん。

大坪さんは2013年に入社し、アステックペイント初の自社開発塗料の主担当者として、研究・開発を任されました。今回は大坪さんへのインタビューを元に「超低汚染リファインSi-IR開発ストーリー」をまとめました。超低汚染リファインSi-IRが根強い人気を誇る理由から、研究開発に込められた想い、研究に際して苦労したことなど、開発秘話を詳しくご紹介します。

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超低汚染リファインSi-IRとは

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◯水性形二液型の遮熱超低汚染シリコン塗料
◯ラインナップ:屋根用「500Si-IR」・外壁用「1000Si-IR」の2種類

超低汚染リファインSi-IRが多くの塗装店様に支持される最大の要因は、建物を永く美しく守る「あらゆる機能を高いレベルで兼ね備えている」点にあります。

①高耐候性
無機成分を豊富に配合し、さらに塗膜の劣化要因「ラジカル」の発生を抑える「ラジカル制御型白色顔料」を採用。ダブルの効果により、期待耐用年数約15~18年と高い耐候性を発揮。

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②超低汚染性
塗膜表面が「緻密」かつ「親水性」に優れているため、他社の塗料と比較して圧倒的に塗膜表面に汚れがつきにくく、塗りたての美しさを長期間維持。

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③遮熱性(遮熱保持性)
特殊遮熱無機顔料が温度上昇の要因となる近赤外線を反射。また、熱を吸収する要因「汚れ」がつきにくい塗料のため、汚れによる熱の吸収を防ぎ、一般の遮熱塗料より長く遮熱性を発揮。(遮熱保持性)

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▼超低汚染リファインシリーズについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください

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【インタビュー】超低汚染リファインはなぜ生まれたのか?

第2章からは大坪さんへのインタビューを元に、超低汚染リファインSi-IRの発売に至るまでの開発ストーリーを詳しくご紹介していきます。

自社開発品第1号として開発をスタート

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2000年の創業以来、当社はオーストラリアにあるアステックペイント社の塗料を輸入・販売する塗料商社の機能が強い状況でした。そのため菅原社長をはじめ多くのスタッフが「自社で塗料を開発・製造する正真正銘の塗料メーカーになりたい」という目標をずっと抱き続けており、その目標を実現するための第1号塗料として開発をスタートさせました。

なぜ「低汚染塗料」開発に挑戦したのか?

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塗装の目的は「保護と美観」と言われるように「建物を美しく保つ」ということに対してのニーズは非常に高く、低汚染性を発揮する塗料は強く求められています。
しかし、当時のアステックペイントで販売している塗料の中には建物を守る「保護」機能を持った塗料はありましたが、美観を維持する「低汚染塗料」のラインナップがなかったため、美観のニーズに応えるカテゴリの塗料開発を検討することにしました。

また、開発する以前から「遮熱性」を持たせた遮熱塗料が市場に多く出回っていましたが、遮熱塗料の課題として「塗膜に汚れが付着すると、汚れが熱を吸収し、遮熱機能が低下してしまう」ということがあります。この点に着目し、汚れにくさを持った遮熱塗料を開発すれば、汚れによる遮熱性の低下を抑えて、他社にはない「美観も遮熱性もどちらも長期間維持される塗料」になるのではないかと考えました。

こうして「超低汚染性+遮熱性に優れた製品」という、これまでの塗料業界にはない全く新しいコンセプトを設計し、具体的に開発を進めていきました。

超低汚染リファインSi-IR 開発ストーリー

初の自社開発への挑戦に悪戦苦闘

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入社してまもなく上司に「塗料の研究開発をお願いしたい」と言っていただいたのですが、私自身塗料に関する知識が全くない状態だったので、正直に申し上げると嬉しいというよりはプレッシャーや不安しかありませんでした。

また、創業から10年以上輸入・販売を事業の中心としていた当社には、当然ながら研究開発のノウハウ・設備が全くありませんでした。そのため「そもそも塗料はどう作るのか」「どのような試験を行いどんな基準を満たせば塗料として完成なのか」「どんな製造設備が必要なのか」など知見がなく、会社にとっても私自身にとっても、まさしく「ゼロ」からのスタートでした

開発顧問と二人三脚で開発に励む日々

当社は、他社塗料メーカーで塗料の研究開発経験が豊富な研究者の方を開発顧問として2013年に招聘していました。私が研究開発を行う拠点が福岡、その方は東京営業所にて勤務という物理的距離があったため、試験で行き詰まったときなどにすぐに相談できないというような苦労はありましたが、「塗料とは何から出来ているのか」という塗料の基礎中の基礎から徹底的に教えていただきながら「二人三脚」で研究・開発を進めていきました。とにかく分からないことばかりで日々初めての挑戦ばかりで苦労したことを覚えています。

配合量の微調整で失敗の連続

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塗料を設計・開発する上で一番大変だったことは性能のバランスを取るための「塗料中に配合する添加物の配合量の調整」でした。

塗料に配合するシリコン樹脂やその他の成分の量が少し違うだけで、発揮する性能も全く異なるため、そのバランスを取る作業は困難を極めました。

また塗料としてただ単に低汚染性に優れているだけではなく、耐候性や遮熱性などの性能も高いレベルで発揮できる塗料にしないといけません。そのため、例えば、3つの性能をクリアさせたいときに、1つがクリアしても、もう一つが不合格になってしまうことばかりで、その度に、塗料に配合する成分の添加量を細かく調整したり、時には1から配合を作り直すこともありました。多くの失敗を繰り返していくうちに、どうすれば塗料が完成するのか、本当に間に合うのかなど、悩みや不安を抱えながら進めていったことを鮮明に覚えています。

革命的な「超低汚染性」の秘密は“無機成分”にあり

超低汚染リファインSi-IRの最大の魅力とも言うべき「超低汚染性」。私たち技術開発部では、一番はじめに塗料を設計した段階で「他社の低汚染塗料よりも汚れにくい塗料を作る」ことを目標としていたため、この性能を発揮させることには、並々ならぬこだわりを持って取り組みました。

そして、低汚染性を発揮できるあらゆる方法を模索し、試験を繰り返す中で、「緻密性」と「親水性」が重要であるという結論にたどり着き、そして、その2つを実現できる“ある成分の配合”に着目しました。それが業界唯一とも言うべき「無機成分を含有する強化剤」です。

たとえばガラスは無機成分を主成分として構成されているように、無機成分は、紫外線などの劣化に強く、汚れがつきにくいのが大きな特徴です。この無機成分が配合されている強化剤をB液として設定し、A液(主剤)にバランスよく配合することで、「反応硬化し、他社塗料にはないような緻密で強靭かつ、親水性に富んだ塗膜を形成できないか」と考えたのです。

そして、強化剤を加えた試作品の低汚染性を確認するために「防汚性評価試験」という試験を行いました。この試験は、塗料が塗られたサイディングボードをカーボンブラック分散水で汚染させた後、水で洗浄し、汚染前と汚染後で汚れの落ち具合を比較する試験です。

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低汚染シリコン塗料や無機塗料、光触媒塗料など、他社を含むあらゆる低汚染塗料を用意し、超低汚染リファインSi-IRの試験サンプルとの汚れにくさを比較しました。その結果、他社の低汚染塗料は、汚染後の塗膜に汚れが残るのに対して、超低汚染リファインSi-IRは、汚染後の塗膜表面を水で洗い流すと、なんとほぼ真っ白に。 この結果が出たときは、目標であった「他社よりも汚れにくい」ということを超えて「他社を圧倒的に凌ぐ革命的な低汚染塗料ができた」ということが実証されて、本当に嬉しかったです。

各種試験にて他塗料を凌ぐ結果に

試行錯誤を繰り返して開発してきた塗料試作品の性能を検証するため、低汚染性以外にも耐候性、遮熱性などを実証する各種試験を実施していきました。

たとえば「塗膜が汚れる前の日射反射率」と「塗膜を汚染させた後の日射反射率」を比較し、汚れる前後でどれくらい日射反射率が保持されるか確認する「遮熱保持性比較試験」を行ったところ、他社の遮熱塗料の日射反射率の保持率が約50%なのに対して、超低汚染リファインSi-IRのサンプルは日射反射保持率が他社を圧倒する96%という数値を出しました。

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こうして試作塗料が、耐候性、低汚染性、遮熱保持性などあらゆる性能で他社の同等製品と比較して高い水準の性能を実証することができ、超低汚染リファインSi-IRを超低汚染塗料として発売できるレベルの状態まで進めることができました。

塗装職人の方からの声を開発に反映

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あらゆる試験を合格し、発売できるレベルの塗料が完成しましたが、開発作業の最後の工程として必ずやるべき工程がありました。それは「塗装職人の方からの声」をヒアリングすることです。

塗料を最終的に使用するのは、塗装職人の方々です。職人の方々にとっての被りの良さや作業性など、扱いやすい塗料を作ることがメーカーとして非常に重要なことであると考え、実際の塗装現場3物件でテスト施工を行い「塗装職人の方からの声」をヒアリングしました。

そして職人様からのご意見を元に、作業性に関わる改善点を微調整し、開発の全行程が完了、2015年7月に無事発売を開始することができました。

発売初日「お客様から初出荷の注文が入った」という連絡を受けたときの、あの喜びや感動は忘れることができません。

研究開発の魅力とは?

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開発業務の魅力・楽しさは自分の開発した製品が世の中に出て、売れていくということにあるかと思います。あとはそれが施主様の家に塗られて、完成したときに喜びを感じますので、超低汚染リファインSi-IRが発売されて、日々出荷量が上がっていく様子を見たときは非常に嬉しかったです。

また、開発者にとって一番うれしいことは、塗料を使ってもらっているお客様はもちろん、売っている自社の営業担当からフィードバックをもらえたときです。しっかり製品を見てもらえているんだと感じます。時には、厳しい意見もありますが、絶対改良し、お客様の悩みを解決したいという原動力になります。

これからの目標・展望

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開発業務は「開発して発売されたら終わり」というものではないと考えています。発売後も常に職人様から使用の声を聞いて、作業性が向上するように改善したり、少しでもお安く提供できるような努力をしたりなど、改良・改善を繰り返していくことも開発者の重要なミッションであると考えていますので、これからも現場の声に耳を傾ける開発者でありたいと思います。

また、会社から与えられた課題をクリアするだけでなく、「世の中になくてこんな塗料がほしかったんだ!」と塗装店様からも施主様からも言われるような付加価値の高い塗料を発案していきたいですし、これからも多くの塗料開発に携わっていきたいです。


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記事監修】株式会社アステックペイント 谷口智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

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運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

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