【塗装の基礎知識】耐候性試験の1つ「促進耐候性試験」とは何か?
塗料メーカーが出している製品カタログやパンフレットの中で、各製品の「促進耐候性試験結果グラフ」を見たことがある方は多いのではないでしょうか?
促進耐候性試験とはどんな試験なのか、説明が難しく、施主様への提案の際に困った方もいるかと思います。
「促進耐候性試験」とは、塗膜の劣化要因である紫外線・熱・水(雨)の強さを人工的に増幅させた専用機械に塗膜の試験体サンプルを晒し、その状態変化を測定し評価する試験です。
塗料メーカーは、様々な試験方法で塗料の耐候性を評価しています。今回は、「促進耐候性試験方法」を中心に「促進耐候性試験の内容」「試験方法の種類」「評価方法」などを詳しく説明します。促進耐候性試験について、施主様に聞かれた時の豆知識として、ぜひ参考にされてください。
■関連:艶調整塗料の促進耐候性試験について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事促進耐候性試験とは
「耐候性」とは、塗料やプラスチック等の高分子材料が屋外で使用された場合に、「変形・変色・劣化等の変質を起こしにくい性質」であることを言います。
そして、耐候性試験とは、塗膜の劣化要因である「紫外線・熱・水(雨)」に対する耐性を確認するための試験です。
試験の方法は「促進耐候性試験」と「屋外での暴露試験」の2つの方法があります。
①促進耐候性試験
「促進耐候性試験」は塗膜の劣化要因である「紫外線・熱・水(雨)」の強さを人工的に増幅させた専用機械に塗膜の試験体サンプルを晒し、その状態変化を測定し評価する試験です。
②屋外暴露試験
屋外での自然暴露試験で耐候性を評価する方法は、サンプルを実際に屋外にさらして状態の変化を確認する方法です。この方法では製品開発から発売まで、実に10年以上もの時間を要します。
そこで塗料メーカーの多くが、自然暴露試験よりも短い時間で耐候性を評価できる「促進耐候性試験」を導入しています。
なお、促進耐候性試験は、前述のように、人工的な試験環境下での評価となりますので、あくまで参考指標であり、耐候性を保証するものではありません。実際の自然暴露環境下では、現場における下地の状態、施工方法、気象条件等により耐候性は異なる場合があります。
測定方法の種類
塗料業界で主に採用されている促進耐候性試験を、2種類ご紹介します。
① キセノンランプ式試験
もっとも太陽光に近似したスペクトルを有した光源で試験を行うため、屋外暴露試験との相関性が高い試験と言われています。
国際的に多く利用され、日本国内でも塗料のJIS規格で採用されているため、現在は業界で主流となっています。
■代表的なキセノンランプ式の促進耐候性試験機
「スーパーキセノンウェザーメーターSX75」
塗料メーカーなどの、製品開発を行う企業に用いられる試験機です。
太陽光の約3倍の高照度でより早く試験結果を取得することができます。
公式サイトURL:https://www.sugatest.co.jp/productlist/sx75-2/
② スーパーUV(SUV)式試験
太陽光と比較して、紫外線が数十倍強い光を使用しているため、キセノンランプ式試験よりもさらに短い時間で劣化を促進させることができます。ただし、試験結果と自然暴露環境下での耐候性のズレが、キセノンランプ式試験より大きくなる可能性があります。
スーパーUV式試験では、高耐候性で劣化までに時間を要する塗料(無機塗料など)の耐候性目安として用いられます。
■代表的なスーパーUV式の促進耐候性試験機
「メタリングウェザーメーカーMV3000」
塗料メーカーなどの、製品開発を行う企業に用いられる試験機です。
太陽光・降雨・結露などの劣化因子を人工的に再現し、その環境に曝し、製品・材料の劣化を従来にないスピードで加速、促進させ短期間で寿命を促進させる試験機です。
公式サイトURL:https://www.sugatest.co.jp/productlist/mv3000-3/
促進耐候性試験方法
①前述の各促進耐候性試験機を用いて、各塗料の耐候性を評価します。
②両試験機ともに、試験用板に測定する塗料を塗布し試験体サンプル(写真1)を作成します。
③促進耐候性試験機に試験体サンプルをセットし、人工的に光源による紫外線・噴霧器による水・恒温機による熱をサイクルで発生させ塗膜の劣化を促進させます(写真2)。
促進耐候性試験の評価方法
促進耐候性試験の評価方法は塗料の種類によって異なります。
ここでは、一般的に行う艶有エナメル(色付き)塗料の耐候性測定方法をご説明します(艶調整塗料やクリヤー塗料では評価方法が異なる)。
艶有エナメル(色付き)塗料の耐候性を測定する際は、光沢計(写真3)を用いて光沢保持率※を確認していきます。
光沢保持率80%未満になると、塗膜の表面劣化が始まったとみなし、そこまでの時間を耐候性保持の時間として評価します。
※光沢保持率:劣化前の塗膜表面光沢度を100%とし、劣化後にどれだけの塗膜表面光沢度を維持できている割合
まとめ
この記事では、「促進耐候性試験方法」を中心に、「促進耐候性試験の内容」から「試験方法の種類」、「評価方法」などについてご説明しました。
今後、施主様より塗料の耐候性試験方法や評価方法に関してご質問された際に、改めてご覧ください。
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【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。