成長企業の課題「施工力」への取り組みについて考える
新型コロナウイルスの流行により施工件数が減り、職人不足に関する心配はしばらく無くなるような声もありましたが、実際のところ、建築塗装業界においては新型コロナウイルスによる影響はほぼ無く、今までと同様に慢性的な職人不足に悩んでいる会社は多いようです。
「プロタイムズ」の事例で説明しますと、2021年は新店舗が増えたことによりプロタイムズ全体で大きく売上が伸びており、店舗ごとを見ても平均で前年比120%以上の受注ベースで成長しています。しかしながら、完工高の平均は前年度とほぼ変わっていませんでした。
すなわち、受注件数は増えているが、施工班を増やしていない(増やすことができない)ために、結果、お客様を待たせながら何とか今いる施工班で施工をこなしているのが実情のようです。
現時点で職人不足について悩んでいるということは、新型コロナウイルス終息後はもっと深刻な施工力不足(職人不足)に悩むようになるとも言えるでしょう。
未来永劫続く「施工力解決」の対策
塗装会社として成長し続けるためには、施工力(施工班の数)を増やすことが条件となります。
全国で多く目にする事例は、受注が増えてきても施工班を増やすことをせずに、結果として営業行為を多少緩めながら閑散期までに工事を引っ張り、最終的に全ての工事を円満に完了させることです。この行為は、会社の売上を安定させ、工事品質を確保できる手段かもしれませんが、結局は会社が成長することはありません。
慢性的な職人不足と言っても、職人が存在していないわけではありません。
建築塗装業界は、市場規模が変わらない中で職人の数が減り、需要と供給のバランスが崩れることによって職人不足になっています。だからと言って、需給バランスのギャップを埋めるために、新たな人材を塗装業界に入れるという考えはかなり大きなハードルになり、長い時間軸で取り組む必要があると思います。
そこで、考え方としては「既存の職人を自社に引き込むための体制をつくること」が、即効性のある方法と言えるでしょう。
既存の職人を自社に引き込むための体制づくり
既存の職人を自社に引き込むための鍵は「単価」と「安定供給」の2つと考えます。
まず「単価」は、最も重要な指標となることは間違いありません。新たに他の施工班を自社に引き込むためには平均より高い単価でなければ会話の土台にも上がれないでしょう。しかし、自社施工班も含めた単価を上げることは、会社の利益を減らすことに直結するため躊躇することも当然のことだと思います。
この問題を根本的に解決するためには、自社の受注単価を向上させることが最も有効です。提案商品のランクアップに向けた努力、付加価値のあるサービスの提供など様々な取り組みが可能だと考えます。
受注単価アップは、結局は会社の信用、営業のサービス品質、現場職人の教育など、全てを底上げしなければ継続して実現しないため、経営者による覚悟を持った取り組みが必要になります。
「安定供給」も、最も重要な要素の1つであることは間違いありません。安定供給なくして施工班の定着はなく、工事品質も確保できなくなるでしょう。
一般的な安定供給の考え方として工事の受注には年間を通じて必ず波があり、繁忙期は忙しくて閑散期には少し暇になる傾向があると思いますが、安定供給の工事量のラインを閑散期にあわせる会社がほとんどです。閑散期にあわせることで、関わる施工班に確実に工事を供給できるという意味においては、安定供給を実現できていると思います。
とはいえ、この考え方では会社が成長することはありません。会社が成長し続けるためには、安定供給のラインを繁忙期にあわせ、その足りない工事量に対して新たな施工班を探しながら、「絶対に工事は切らせない」という経営者の強い覚悟のもとで営業を強化していくことが必要になります。
その上で、新しい施工班の教育と施工管理をしっかり行うことで、会社の継続的な成長を実現していくことが可能となります。
仕事を快適に行ってもらえる環境づくり
さらに重要なのは、安定供給を実現しながらも、現場管理アプリ「現場ポケット」のようなITツールを活用し施工班と円滑な情報共有を行い、可能な限り手間暇をかけない段取りにより、仕事を快適に行ってもらえる環境づくりです。
また、工事品質は維持しながら工期を短縮する取り組みにも入り込むことで、協力業者の利益を増やすことも可能です。
高単価、安定供給、快適な仕事環境、工期短縮などの取り組みを行うことで、他の塗装会社との比較の中で、新たな施工班を継続的に自社に引き込むことは十分可能と言えるのではないでしょうか。
そして上記のような取り組みを実現するためには、自社の取り組みとして「受注単価アップ」できるように会社の実力を上げていくことと、安定供給ラインを繁忙期に設定するための「営業力の強化」の2つを同時並行で行う必要があります。
複合的な取り組みを全て同時に行っていくことが、結局は会社の成長に繋がるのだと考えます。それは塗装業に限ったことではなく、全ての業種に共通していることですので、経営者の強い覚悟と努力で乗り切るしかないでしょう。
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【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹
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菅原 徹
株式会社アステックペイント 代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。