知っておきたい塗装の知識!艶調整塗料の「耐候性」を徹底解説!
施主様から艶調整塗料の「耐候性」について質問された時に、どのように説明すべきか悩まれたことはありませんか?
一般的に耐候性は「促進耐候性試験」によって評価されます。促進耐候性試験とは「人工的な環境下で塗膜の劣化を促進し、劣化後の光沢保持率によって塗料本来の耐候性が発揮されているか」を判断する評価方法です。(詳しくはこちら)
この評価方法では、塗装初期の光沢を光沢保持率100%とし、光沢保持率が80%を下回ると塗料の性能が低下したと判断します。
しかし、同じ塗料でも艶を抑えた「艶調整塗料(5分艶、3分艶、艶消など)」の耐候性は、促進耐候性試験の光沢保持率では評価できません。
本記事では「艶調整塗料の耐候性が光沢保持率では評価できない理由」と「当社で採用している耐候性評価方法」についてご説明いたします。艶消塗料の耐候性について、施主様に質問されたときの豆知識として、ぜひご参考ください。
艶調整塗料の耐候性が光沢保持率では評価できない理由
艶調整塗料の耐候性が光沢保持率で評価できない理由は、元々の光沢度が艶有塗料に比べて極めて低く、劣化前後の差がわずかで測定誤差範囲の差となるためです。
なぜ、艶有塗料と艶調整でそのような差が出るのかを「艶有塗料」と「3分艶塗料」の光沢の変化を例にご説明いたします。
艶有塗料の場合
艶有塗料では、塗装初期の光沢度と光沢保持率80%の光沢度には大きく差があるため、光沢保持率での評価が可能です。
例えば、初期の光沢度が90%の場合、光沢保持率80%のラインである光沢度72%になるまでは、塗料本来の耐候性が発揮される期間と判断されます。この時、劣化前後の光沢度の差は18%と差が大きなため、光沢保持率で評価ができます。
3分艶塗料の場合
3分艶塗料は、塗装初期の光沢度がもともと低く、塗膜劣化が進行したとしても光沢度が大きく低下することはありません。そのため、光沢保持率での評価が難しくなります。
例えば、初期の光沢度が20%の場合、光沢保持率80%のラインである光沢度16%になるまでは、塗料本来の耐候性が発揮される期間と判断されます。しかし、劣化前後の光沢度の差はわずか4%と差が小さく、測定誤差範囲程度の差となるため光沢保持率では正しく評価できません。
以上のように、艶調整塗料の耐候性は光沢保持率では評価できないため、当社では異なる方法で評価しています。
艶調整塗料の耐候性評価方法
当社では、艶調整塗料の耐候性を「促進劣化後の塗膜表面の状況変化」で評価しており、塗膜の表面の「ひび割れ」と「顔料の抜け落ち」など物理的異常の発生の有無を劣化の指標としています。
この物理的異常が確認されるまでの期間を、塗料本来の耐候性が発揮される期間と定めています。
手順
①艶調整塗料を耐候性試験機で促進劣化させる。
②電子顕微鏡で塗膜表面を拡大し「ひび割れ」や「顔料の抜け落ち」などの物理的異常がないかを確認する。
③この工程を物理的異常が確認されるまで繰り返す。
他社品では促進劣化後の色差変化で評価しているものもありますが、公的に明確な合否判定がないため、採用しませんでした。
まとめ
今回の記事では「艶調整塗料の耐候性が光沢保持率では評価できない理由」と「当社独自の評価方法」についてご説明いたしました。
■ 艶調整塗料は光沢度の変化の差が小さなため「光沢保持率」では評価できない
■ アステックペイントでは塗膜表面の「ひび割れ」や「顔料の抜け落ち」など物理的異常の有無によって評価している
艶調整塗料の塗料の耐候性試験方法や評価方法について、お施主様からご質問いただいた際にぜひご活用下さい。
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この記事の監修者と運営者
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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株式会社アステックペイント
谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。