塗料メーカー解説「塗料の付着性を確認する試験・評価方法」

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建築塗料メーカーの販売する製品のカタログには、近年の屋根・外壁塗料は期待対応年数10~15年という製品が多く、更に耐候性が高い製品は20~30年と記載されている塗料もあります。一般的には、樹脂のグレードが高くなると、期待耐用年数も向上する傾向がありますが、建物を長期間保護し続けるために必要な機能は上塗材の耐候性だけでしょうか?

たとえ上塗材の耐候性が高くても、外壁や屋根にしっかりと付着していなければ、期待耐用年数よりも早くはがれてしまうといった不具合も発生しかねません。

そこで本記事では、建築塗料メーカーが謳う期待耐用年数の根拠を、付着性という観点から詳しく解説していきます。付着性という言葉の解説から、実際にアステックペイントで行っている付着性の試験や評価方法、付着性を十分に発揮させるポイントといった内容について解説します。ぜひご一読ください。

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付着性とは?

建築塗装において、付着性とは「塗装した塗料が下地(建材や旧塗膜)に付着して剥がれにくい性質」のことを意味します。これは「下地と下塗材の層間」のことを言っているように思えますが、付着性が重要となる場面はこれだけではありません。

長期間建物を保護し続けるには、「下地と下塗材」の他に、「下塗材と上塗材」「その他製品(シーリング材や補修材)と下塗材」といったように、各層での付着性が重要になります。この各層での付着性が悪ければ剥がれてしまい、上塗材の性能が良くても長期間の建物の保護効果は発揮できません。

【補足】

塗装工程における「下地材」「下塗材」「上塗材」のそれぞれ用語について簡単に解説します。

下地材塗装する面のこと。 (窯業サイディング、カラーベスト、各種旧塗膜 など)
下塗材塗装工程で最初に塗装するシーラー・プライマー・フィラー等の塗料のこと。 下地や上塗材との付着を高める・下地の吸い込みを止める・下地表面の脆弱部を固めるといった役割がある。
上塗材下塗材の乾燥後に使用する塗料のこと。 建物(屋根や外壁など)の保護・美観(色・デザイン等)・機能の付与(遮熱性・低汚染性)といった役割がある。 ※一般的には中塗材と上塗材は同じ塗料を使用することが多いが、中塗材と上塗材を別の塗料で塗装する場合もある。 ※シーラーレス(下塗材を塗装しない)の上塗材もあり、直接下地に塗装できる製品もある。

上塗材のカタログ記載の適用下地について

基本的に下塗材の塗装後に上塗材を施工しますが、上塗材のカタログには対応できる下地の記載が書かれている場合が多いです。

これは、上塗材を直接下地に塗装できるということではなく、下塗材と組み合わせることでそれぞれの下地に対して塗装できるという意味になります。付着性の確保には、仕様内の下地に対して適切な仕様での施工が重要です。

付着性を確認する方法

アステックペイントの実施する付着試験

アステックペイントの取扱製品は、想定される塗装仕様にて「下地・下塗材・上塗材・その他製品」の各組合せで付着試験を行っています。付着試験は①~④の流れで実施しています。

試験体の作成

モルタル片やフレキシブル板などに旧塗膜を想定した上塗材(一般塗料や難付着系塗料等)を塗布し、その上から試験をする塗料を塗布する。

②温冷繰り返し試験で、試験体を劣化させる

「JIS K 5600-7-4耐湿潤冷熱繰り返し性」の試験方法に基づいて、昼夜や季節(夏と冬)による外気温の差や降雨といった劣化因子を再現した、温冷繰り返し試験機に一定期間入れ、試験体を劣化させる。

※下記条件を1サイクルとして、10回繰り返し試験し、塗膜を劣化させる。
①湿潤(浸水、23℃) 18時間
②低温(-20℃)     3時間
③高温(50℃)         3時間

温冷繰り返し試験後の試験体を碁盤目状にカットする

縦6本、横6本の切り込みを2mm間隔に入れ、25マスの碁盤目状にカットする。

④カット箇所にセロハンテープを張り付けて剥がす

カットした塗膜に透明テープを貼り付け、指でしっかりと付着させる。直後に貼り付けたテープを一気に剥がして、剥離した塗膜のマス数を確認する。 ※JIS K 5600:塗料一般試験方法にて「透明テープ」を使用すると規定されています。

評価方法

付着試験の評価方法は「剥がれた塗膜のマスの数」で確認します。

アステックペイントの判定基準として「合格は剥がれた塗膜のマスの数が1マス以下」としています。

左の写真は塗膜の剥がれがないことから、下地や上塗材と良好な付着性を有していることがわかります。

それに対し、右の写真はすべてのマスが剥がれているため、不合格となります。

付着性を十分に発揮させるためのポイント

実現場で付着性を確保するには、「適切な塗装工程」と「適切な下塗材の選定」「付着性を発揮するまでの時間の確保」が必要です。そこで、本章では塗料の付着性を十分に発揮させるためのポイントを解説していきます。

①適切な塗装工程

塗料は現場で塗装して本来の性能を発揮できる「半製品」です。そのため、付着性の確保には塗装工事を適切に行う必要があります。ここでは、特に付着性に与える影響が大きい工程について解説します。

●下地処理・下地補修

下地処理とは、汚れや弱った旧塗膜を除去し、下地を清浄に保つことを言います。また、下地補修とは「下地のひび割れや欠損部を補修材などで平滑にすること」を言います。これらの作業が不十分な場合、弱った旧塗膜や下地が塗料の付着を妨げたり、膨れや剥離などの不具合に繋がる可能性があります。

●計量・撹拌・希釈・保管

計量・撹拌・希釈・保管については、製品ごとに仕様が決まっています。誤って使用された場合、塗料の付着不良のみならず、成膜不良や早期の剥離・膨れに繋がる可能性があります。

例えば、

①目分量で二液塗料の混合をしたり、ローラーで混ぜるなどの混合不足の場合

主剤と硬化剤のどちらかが過多となってしまい、硬化不良・塗膜のべたつきなどが発生し、本来の塗膜性能を発揮できない可能性があります。

②希釈剤を通常よりも多く入れてしまった場合

塗料の粘性が大きく低下し、水っぽいサラサラの状態になります。その結果、塗料ごとの規定塗布量を塗装することが難しくなり、下地に吸い込まれやすくなったり、塗料が垂れてしまったり、付着性や仕上がりに影響を及ぼす可能性があります。

②適用下塗材の選定

上塗材の性能を発揮するには、建材や旧塗膜に対して適切な下塗材の選定が重要です。

例えば、無機やフッ素コーティング、光触媒機能が施された下地は「難付着系下地」と呼ばれ、通常の塗料では付着が確保できないため、専用の下塗材が必要となります。また、金属系下地には錆止め塗料を使用するなどが挙げられます。

3-2-1.現場で出来る付着試験(パッチテスト)

塗装現場にて、下地や旧塗膜の判定ができず、下塗材の選定が困難になる場合があるかと思います。そのような場合に、現場で出来る簡易的な付着試験があります。それがパッチテストという方法です。

下地や旧塗膜と下塗材の付着状況を確認することで、早期の不具合の発生を防ぐことができます。

よくある建材別おすすめ下塗材の紹介

付着性を十分に発揮させるためのポイントの中で各下地に対して対応の下塗材を選定することが重要とお伝えしました。そこで、よくある建材別のアステックペイント推奨下塗材を紹介します。

※下記仕様以外にも塗装可能な下塗材はあります。

●外壁編

●屋根編

●付帯部編

付着性を発揮するまでの時間

塗料を施工して、付着性が十分に発揮されるまでには時間が必要です。塗装後間もない状態で塗膜を触ったり、テープ試験をすると塗膜剥離や塗膜表面に傷がつく可能性があります。塗料は水分や溶剤成分が揮発し、樹脂同士の融着や樹脂間の化学的な結合(架橋反応)が起こることで成膜し、付着力を発揮します。

このような性質を加味したうえで、製品ごとに「工程間時間」や「最終養生」といった施工間隔の目安を定めています。メーカーの定める目安を守って施工することも、付着性を発揮するための重要なポイントになります。

まとめ

本記事では、付着性に関する用語の解説から、実際にアステックペイントで行っている付着性の試験や評価方法、付着性を十分に発揮させるポイントといった内容について紹介しました。

本記事で皆様の「付着性」に関する不安は払拭できたでしょうか?

高品質の施工でお施主様に最大限ご満足いただけるよう、本記事をご参考にしていただきますと幸いです。

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