現場で注意したい!塗料を保管するときのトラブル事例

現場の研究 塗料・塗装のQ&A塗料塗装 2024.07.15 (最終更新日:2024.10.08)
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皆様は注文した塗料を塗装現場でどのように保管されていますか? 塗料と言っても、水性や溶剤・1液や2液などの様々な種類があり、季節によって温度も大きく変化します。

そのため、塗料の適切な保管方法は、施工の品質を保つ上で非常に重要です。しかし、現場での保管方法によっては、塗料に異常が発生してしまうこともあります。

本記事では、適切な保管方法・実際に発生した不具合事例とその発生要因、さらに具体的な対策を季節ごとに解説いたしますので、日々の塗装工事の品質向上と円滑な現場作業を実現するためにご活用ください。

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適切な現場保管例のご紹介

⑴日陰での保管やブルーシートを掛けるなどして直射日光を避けて保管してください。

・真夏の直射日光が当たる環境での保管は避けます。
・真冬で気温が0℃付近になる環境での保管は避けます。
・直接、雨や雪が当たる環境での保管は避けます。

⑵使用途中の塗料は、蓋やビニールなどでしっかりと密閉してください。

・ペール缶の場合、蓋を隙間なく締めます。
・一斗缶の蓋(天)を切った場合、ビニールマスカーで養生するなどして乾燥を防ぎます。

⑶溶剤塗料・シンナーは引火性がある危険物であり、現場保管は避けてください。

・その日の工事で必要な量を持ち込み、余った塗料は持ち帰ります。※水性塗料および溶剤塗料関係なく、長期間の現場保管は控えてください。

現場保管例(ブルーシート)
現場保管例(ビニールマスカー)

【通年の現場保管】水性塗料の表面皮張り

冒頭にある通り、塗料は適切な保管方法を守ることで、塗料の品質を確保できます。不具合事例の中には、季節や保管状況によって発生原因が異なる事例もあります。ここでは、通年で起こりやすい塗料の保管における事例・対策・注意点を詳しく紹介します。

1つ目は、水性塗料の塗料缶内で表面が乾燥し、膜が張る「皮張り」の事例です。 この現象は通年で発生し、複数の要因によって引き起こされる不具合事例です。また、溶剤塗料は樹脂がシンナーに溶けているため、ある程度皮張りが発生しても撹拌することで再び溶けて塗料に戻ります。

■発生要因(夏場)

①塗料を現場保管する。
②直射日光や気温が高いため、塗料内の液温が上昇する。
③徐々に塗料表面の水分が失われて、表面が乾燥し、皮張りが発生する。

■発生要因(冬場)

①塗料缶を現場保管する。
②塗料缶の一部に直射日光が当たるとその部分のみ温められ、部分的に水分が蒸発する。蒸発した水分は、直射日光が当たらない塗料缶面に結露が発生する。
③徐々に塗膜表面が乾燥し、直射日光が当たる箇所付近で皮張りが発生する。

■注意点

・塗料の蓋の締めが甘く隙間がある状態では、乾燥した水蒸気が塗料缶外に放出するため皮張りが発生しやすい傾向があります。
・使用途中の塗料は、塗料缶内の空間率が高いので乾燥が進みやすく、皮張りしやすい傾向があります。

■事前対策

➀使用途中の塗料が少ない場合は、小さい容器に移して養生テープなどで、しっかり密閉してください。
➁一度開封した蓋は、隙間がないように締めてください。
➂現場保管する場合は、ブルーシートをかけるなどして、直射日光を避けてください。

■事後対策

・表面の皮張りを取り除いて使用してください。
・皮張りに気づかず撹拌してしまった場合は、粒状となって塗料中に存在するため、ストッキングなどでこしてから使用してください。※屋外で、塗料の長期間の保管は控えてください。

■皮張り発生の検証試験

今回、ブルーシート等で直射日光を避けて現場保管を行うと、皮張りの抑制に効果があるかを検証しました。

➀試験概要

実施時期2023年11月上旬~中旬(昼夜の寒暖差が6~10℃程度ある時期)
保管場所屋外(弊社福岡県第一工場にて)
保管状況直射日光が塗料缶の一部にあたる状態で7日間程度放置
保管条件未開封の水性二液塗料をブルーシート有・無の状態で屋外に暴露

②試験結果

ブルーシートを掛けることで、皮張りの抑制効果が期待できます。

【夏場の現場保管】可使時間超過によるゲル化

2液塗料を混合・撹拌後に、可使時間を超えたことで塗料の反応硬化(架橋)が進行し、ゲル化(粘度の上昇)した事例です。可使時間が設定されている2液塗料限定の不具合事例です。

可使時間とは、主剤(A液)と硬化剤(B液)を混合してから「使用可能な時間」のことです。

■発生要因

・2液塗料の混合撹拌後、可使時間を超えたことにより塗料の反応硬化(架橋)が進行し、ゲル化(粘度の上昇)が発生します。

・直射日光下で塗料や希釈剤(水やシンナー)を放置すると、液温の上昇によって可使時間内でも早期にゲル化(粘度の上昇)が発生することがあります。

■可使時間を超過してもゲル化しなかったことにより塗装してしまった事例

稀なケースですが、混合後に可使時間を超過しても一時的にゲル化せず、塗装された事例があります。今回は、モニエルパワープライマー※の可使時間を超過した状態で塗装された事例です。

※モニエルパワープライマーとは、劣化したモニエル瓦に深く浸透固着し、上塗材との付着性を高めることができる透明タイプの「水性形二液モニエル瓦用エポキシ系下塗材」です。

浸透力(濡れ色)の違い

モニエルパワープライマーは、可使時間を超過すると、A液とB液の架橋反応が始まり、粒子が大きくなります。この状態のモニエルパワープライマーは浸透力が低下しており、塗装した場合でも浸透せず、モニエル瓦表面で塗膜が形成されてしまい濡れ色になりません。

しかし、透明な塗膜は形成されるため、光沢がある状態で乾燥します。

この事例は可使時間が超過してもゲル化(粘度の上昇)は発生していないため、塗装可能に思えますが、塗料の性能が十分に発揮されないため、可使時間を超過した塗料は使用しないでください。

■事前対策

・使用前の塗料や混合後の塗料は、日陰保管やブルーシートをかけるなどして、直射日光を避けてください。
・直射日光で液温が上昇している希釈剤(水やシンナー)の使用は避けてください。
・可使時間以内に使い切れる量を混合してください。

■事後対策

・可使時間を超過した塗料に希釈剤を加えることで一時的に粘度は下がりますが、架橋反応が進行しているため塗膜性能が低下しています。そのため、使用せずに産業廃棄物として処分してください。

【冬場の現場保管】水性塗料の凍結

冬季では、夜間の気温が0℃を下回る環境で現場保管をすると不具合が発生することがありますので、適切に塗料の保管が大切です。次に、冬季に起こりやすい塗料の保管における事例・塗料の保管に関する対策・注意点を詳しく紹介します。

水性塗料の水分が0℃付近で凍り、樹脂が凝集してしまう事例です。

この現象は、気温が0℃付近の環境で、塗料を現場保管していた場合に起こりうる不具合事例です。また、塗料内部の水分が凍結することで発生する事例のため、水分を含まない溶剤塗料では発生しない事例です。

塗料が凍結している様子・塗料を解凍後、ダマが発生する

■発生要因

気温が0℃付近になる環境で塗料を現場保管すると、水(溶媒)が凍結して膨張し、分散していた樹脂が圧迫されます。この結果、周辺の樹脂や顔料に押し付けられ、粒や塊(凝集)が発生します。

■事前対策

・夜間や翌日の最低気温が0℃付近になる予報の場合、缶の蓋を密閉した状態で屋内保管をしてください。

■事後対策

・一度凍結し粒やダマが発生した塗料は、本来の性能を発揮できないため、産業廃棄物として処分してください。

まとめ

適切な塗料の保管方法を守ることは、施工の品質を保つために必要不可欠です。夏場や冬場を問わず、適切な環境で塗料を保管し、開封後の取り扱いにも注意することで、塗料の性能を最大限に引き出すことができます。逆に、保管方法を誤ると、今回紹介した不具合に繋がり、施工品質を下げることがあります。

紹介した保管方法や対策を皆様の現場で実践していただき、不具合を未然に防いでいただければと思います。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

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株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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