知っておきたい基礎知識! シーリング材の打設方法の違いについて

現場の研究 2024.09.27 (最終更新日:2024.10.09)
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窯業系サイディングやALCなどの外壁塗装時、板間目地のシーリング材には、先打ち工法と後打ち工法の2つの方法があります。

これらの打設方法の種類は知っていても、それぞれの特徴やメリット・デメリットについては理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、各打設方法の違いや特徴、メリットとデメリットなどをご紹介いたします。

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シーリング打設の工法は2種類

シーリング打設方法には「先打ち工法」と「後打ち工法」の2種類あり、それぞれの特徴についてご紹介いたします。

先打ち工法

外壁塗装前にシーリング材を目地部に打設する工法のことです。

「先打ち工法」の施工フロー
先打ち工法の仕上がり例

後打ち工法

外壁塗装後にシーリング材を目地部に打設する工法のことです。

「後打ち工法」の施工フロー
後打ち工法の仕上がり例

各工法のメリット・デメリット

 メリットデメリット
先打ち工法・シーリング材が、紫外線・雨の影響を受けにくく、防水性や柔軟性が長持ちする。 ・シーリング材の上に塗り替え塗膜が重なっているため、目地部と外壁面で色の差が無く、仕上がりがきれい。 ・建物の動きなどによるシーリング材の挙動でシーリング材上の塗膜にひび割れが発生する可能性がある。 ・シーリング材と塗料の相性が悪かった場合、早期の膨れや剥離に至る可能性がある。 ・ノンブリードタイプのシーリング材を使用しないと、早期に塗膜が汚染する。
後打ち工法・塗膜のひび割れによる美観の低下がない。 ・シーリングに異常があった場合、シーリングのみ改修が可能。  ・外壁塗装後、塗膜が乾燥した後にシーリングを打設するため、工期が長くなる。 ・シーリング材自体の耐候性はあまり高くないので、高耐候性タイプを選択する必要がある。 ・塗り替え塗料とシーリング材の色が異なると板間目地に沿って線が出るため目立つ。

各工法の不具合事例紹介

先打ち工法による不具合事例

事例①シーリング材の痩せによる塗膜のひび割れ

〇発生時期:施工直後~数日経過
〇現場状況:シーリング材の上にある塗膜が亀の甲状にひび割れが発生している。
〇使用材料:変性シリコーン系シーリング材+水性形下塗材+水性形上塗材
〇発生原因:シーリング材の硬化が進み切っていない状態で塗料を塗装したことで、塗料がシーリング材の乾燥収縮に追従できず、ひび割れてしまった。

〇事前対策:気温に合わせてシーリング材の乾燥時間を確保し、塗料を塗装する。
〇事後対策:
①再度、下塗材と上塗材を使用して補修する。 ※再発する恐れあり
②下塗材を微弾性フィラーに変えて補修する。
③弾性エポシーラー+超低汚染リファイン弾性1000MS-IRで再塗装する。
④後打ち工法に変える。

事例②建物の動きによる塗膜のひび割れ

〇発生時期:施工後数か月以上経過
〇現場状況:シーリング材の上にある塗膜が縦筋状にひび割れが発生している。
〇使用材料:変性シリコーン系シーリング材+水性形下塗材+水性形上塗材
〇発生原因:建物の振動・気温変化による外壁材の挙動でシーリング材が伸縮を繰り返すため、塗膜が追従できなかった。

〇事前対策:目地追従性を持つ塗料を選定する。
〇事後対策:
①再度、下塗材と上塗材を使用して補修する。 ※再発する恐れあり
②下塗材を微弾性フィラーに変えて補修する。
③弾性エポシーラー+超低汚染リファイン弾性1000MS-IRで再塗装する。
④後打ち工法に変える。

事例③シーリング材と塗膜の付着不良

〇発生時期:施工後数か月~数年経過
〇現場状況:シーリング材と塗膜の界面で剥離が発生している。
〇使用材料:シーリング材(種類は不明)+水性形下塗材+水性系上塗材
〇発生原因:相性が良くないシーリング材と下塗材を塗り重ねてしまい、密着せずに早期の膨れ、剥離が発生してしまった。

〇事前対策:密着性が確認されているシーリング材と塗料を選定する。
〇事後対策:
①使用塗料と密着性が確認されているシーリング材に打ち換えて、再塗装する。
②シーリング材上の塗膜をテープなどで除去後、経過観察し、シーリング材の劣化タイミングで改修する。

後打ち工法による不具合事例

事例④シーリング材表面のチョーキング・ひび割れ

〇発生時期:施工後数年経過
〇現場状況:シーリング材表面でチョーキング・ひび割れが発生
〇使用材料:高耐候タイプではないシーリング材(種類は不明)
〇発生原因:耐候性が低い(高耐候タイプではない)シーリング材を使用し後打ち工法にて施工した。
〇事前対策:耐候性が高い(高耐候タイプ)シーリング材を使用する。
〇事後対策:
①耐候性が高い(高耐候タイプ)シーリング材で打ち換える。
②シーリング材を打ち換え、先打ち工法としてシーリング材上を塗装する。

事例⑤シーリング材の破断

〇発生時期:施工後数年経過
〇現場状況:シーリング材が経年劣化により破断した
〇使用材料:高耐候タイプではないシーリング材(種類は不明)
〇発生原因:耐候性が低い(高耐候タイプではない)シーリング材を使用し後打ち工法にて施工した。 経年劣化が進むにつれてシーリング材が硬くなり、目地の挙動に追従できなかった。

〇事前対策:耐候性が高い(高耐候タイプ)シーリング材を使用する。
〇事後対策:
①耐候性が高い(高耐候タイプ)シーリング材で打ち換える。
②シーリング材を打ち換え、先打ち工法としてシーリング材上を塗装する。

まとめ

今回、シーリング材の各打設方法の違いや特徴をご紹介しました。それぞれメリット・デメリットがありますが、どちらが良い・悪いというものはありません。

それぞれの仕上がり感や特徴、注意点などをお伝えしたうえで、施主様のご要望に合わせて施工いただければと思います。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

【運営会社】
株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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