住宅塗装市場のピークアウトについて考える


今年度のアステックペイント全国加盟店会議にて、「住宅塗装専門店の従来型ビジネスモデルは終焉」を迎えたと発表した。その背景には三つの要因があると考える。
1.住宅塗装市場のピークアウト:団塊の世代が後期高齢者となり、市場から撤退したことで確定した2.客層の変化:団塊の世代から、団塊ジュニア世代に変化したことで、あらゆる価値観が変わった
3.デジタルシフト:コロナ禍で加速し、集客や顧客接点のあり方を大幅に変化させた
そして「住宅塗装市場でのピークアウト」について様々な意見をいただいた。
その理由としては、住宅リフォーム市場自体は、市場規模は微増している中で、住宅リフォーム市場の中の一部である住宅塗装市場でなぜピークアウトしているのか、という疑問であった。
そこで、まずは住宅の新設住宅着工戸数から生まれる塗装需要から考えてみた。1990年ごろにピークとなる167万戸から減少し続け、昨年2024年では79万戸、そして2030年には63万戸まで減少すると大手研究所が予測している。
住宅を購入する年齢は、35歳から40歳の間が最も多いと言われているが、逆算すると「団塊の世代」が40歳ぐらいの時に、新設住宅着工戸数はピークを迎え、それからバブルの崩壊を迎えながら減少し続け、2007年のリーマンショックの80万戸から、団塊ジュニア世代が40歳前後のころには、100万戸まで盛り返しながら、2020年に入るころから新設住宅着工戸数は80万戸頃まで下がり続けている。

住宅塗装の需要としては、人口ボリュームが最も多い「団塊の世代」と「団塊ジュニア世代」が35~40歳で新築住宅を購入し、その10~15年後に大きな需要が生まれると想像できる。
塗装会社の動向

ペイントハウスという訪問販売会社を覚えているであろうか?柔道の田村亮子(現、谷亮子)選手を起用したCMが、テレビから繰り返し流れていた住宅塗装の訪問販売で、住宅塗装だけで売上300億円、リフォーム工事も含めて500億円まで作り上げた。
設計に隈研吾氏が関わり、施工を鹿島が担当した地上8階地下2階建て、延べ床面積3万3800m2の「ペンタくん多摩センター店」は2003年の竣工で、この時がピークであったと言えるかもしれない。そして、2003年というと、団塊の世代が新築住宅購入のピークとなる1990年ごろから13年後となる。
この時代は、ナカヤマやオンテックスなど、独立系住宅リフォーム会社のトップ企業のほとんどが住宅塗装専業の訪問販売会社であった。
そして、本来であれば、2025年は団塊ジュニア世代の初めての塗装ニーズで盛り上がるはずではあるが、新設住宅着工戸数は団塊の世代と比べて大きく減少しており、団塊の世代の市場からの撤退を吸収するほどの需要さえもなかったと言えるであろう。
ハウスメーカーの動向

もう一つは、ハウスメーカーの動向から考えてみたい。
ハウスメーカーが住宅リフォームに力を入れ始めたのは2000年ごろと記憶している。当時はそれほど本気ではなかったとは思うが、それでも1990年に160万戸作った住宅が10年を迎え、大きなリフォームニーズが生まれ始めてきた時だと思う。
その時のハウスメーカーの戦略は、住宅リフォームの中心を「塗装」に据えて、新築から10年後に塗装を行うことで延長保証を出す仕組みなどを整え、大きな売上を作り始めていた。2010年ごろまでは、ほとんどのハウスメーカーの住宅リフォームに占める住宅塗装の比率は30%ほどであり、ヘーベルハウスにおいては60%ほどと、住宅塗装が住宅リフォーム売上の中で圧倒的な売上シェアを占めていた。
住宅塗装ニーズの動向予測

そのように、ハウスメーカーにとっては、住宅塗装を起点に住宅リフォームをスタートさせ、それから様々な内装リフォームを獲得していくという戦略であったと思う。しかし、今では住宅塗装の比率は全体的に10%近くまでに下がってきており、住宅塗装以外のリフォーム商材が中心になってきているという事実がある。これらの流れを考えていくと、市場の動向では、まずは「新設住宅着工戸数」の数で、それぞれの年代での住宅リフォーム市場の規模が決まってくる。
そして、その10年後以降から先行して「住宅塗装」のニーズが高まり、住宅塗装を起点に様々なリフォーム商材の需要が生まれてくるという流れであろう。
このようなことをトータルで鑑みると、団塊の世代という偉大なメイン顧客は市場から撤退し、そして現時点では住宅リフォーム市場の市場規模全体では微増だが、新築の次に、住宅塗装が先行してリフォーム需要を先食いしていくという構造であれば、住宅塗装市場は既にピークアウトしたという理屈も納得できるのではないか。
もしかしたら、本来であれば2020年過ぎには住宅塗装のピークアウトを迎えていたはずが、コロナで延期され、2023年にピークアウトを打ったというのが私の仮説となる。
<2025年3月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>
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【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹
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株式会社アステックペイント 代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。