住宅塗装市場が縮小していく未来を想像してみる

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昨年より、客層の変化、インフレによる実質賃金の低下などの影響など、様々な要因で住宅塗装市場は厳しい市況を迎えていると考えてきた。

しかし市況が厳しい根本的な原因は「住宅塗装市場は縮小し始めている」ためだと思うようになってきた。新築住宅市場では、年間の新築着工戸数は過去に160万戸あったが、現在は80万戸、そして2040年には60万戸を下回ると言われている。住宅塗装市場においても、多少の程度の差はあれ、同じ道を歩むことになる。そして、住宅塗装市場が成長路線から衰退路線に転換したタイミングは、もしかしたら2023年だったかもしれないと勝手に想像している。そのタイミングは多少ズレていたとしても、衰退路線に入ったという事実を把握でき、そしてその先に起こることを想像しておくことはとても大切なことだと思っている。

「市場が縮小する」とはどういうことか?

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市場規模が小さくなっても、プレイヤーの数は減ることはないので、競争は益々激化していく。住宅塗装市場においては、ホームセンターや家電量販店などの大手企業も参入してきており、住宅塗装専門店にとっては、さらに激しい過当競争の時代に巻き込まれることになる。

さらに現状においては、コロナ禍で加速したデジタルシフトの影響はかなり大きい。具体的には集客の中心がチラシからWEBに移行し、さらにWEBでの集客手法はポータルサイトが独占しつつある。ポータルサイトの仕組み上、低価格化を促す仕組みとなっているので、「住宅塗装の低価格化」の流れに巻き込まれていくことになる。これらのことを総合的に考えていくと「大多数の住宅塗装専門店は淘汰の道を歩むことになる」と思っている。

全国の住宅塗装専門店で、これからやってくる未来に対して、「次の手を打てている」企業はほぼ皆無であろう。市場規模が小さくなり、競争が激化していくと「集客コスト」が上がってくるのは自然の流れである。集客コストとは一人の顧客を獲得するために必要なコストであるが、実際に2023年から上昇し始めている感覚はある。住宅塗装専門店のように、ほぼ単品商品(塗装工事)だけしかなく、次の工事が10年以上のためリピート受注がほぼない営業の構造では、新しい顧客を探し続けることでしか、利益を出すことはできない。しかし、この集客コストが上がり続けると、いつか利益が出せない分岐点に到達することになり、その頃には多くの住宅塗装専門店は淘汰され始めることになる。

この問題を回避する方法

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この問題を回避するには、数少ない選択肢しかない。

まずは、ポータルサイトの案件に対して、高い成約率を上げられる営業の仕組みがあれば、集客は安定化させることはできるようになる。しかし、販売価格が低下していく上に、ポータルサイト業者にも多くの手数料を払うので、残る利益はかなり低くなるため、小規模型のビジネスとなっていくであろう。

次の選択肢としては、ポータルサイト以外で新たな集客の手段を見つけることだろう。他の業界ではSNSの活用で、集客コストを下げて、事業を大きくしている事例はよく見るが、住宅塗装業界ではまだ見たことがない。SNSは一部の成功企業に案件が集中する傾向があるため、全国的に成功企業が多く出るというより、ごく一部の企業だけの成功事例が出てくる可能性があるだろう。

そして、もう一つは、集客コストが上がっても、ビジネスとして利益が出せる仕組みを作ることである。例えば、健康食品の通販会社では、2000円の商品を売るのに、テレビなどの広告を活用しながら、1件当たりの集客コストに1万円以上をかけるようなことはあると聞く。すなわち、リピートを前提として生涯価値で1万円以上の利益を作れるなら、最初は2000円だけの売上でも、1万円の集客コストをかけることができるという考えである。住宅塗装の単品工事から、どのようなリピート受注が作れるかがテーマになるであろう。

「市場が縮小していく未来」において、市場が既に衰退路線に入ったということであれば、急いで準備をしていかなければ、大多数の淘汰される企業の仲間入りになっていくことだろう。

<2024年6月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>

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コラム寄稿】株式会社アステックペイント代表 菅原徹

菅原 徹(すがはら とおる)

株式会社アステックペイント代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

アステックペイント

運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

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