2023年の住宅塗装市場を振り返る

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<2023年10月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>

アステックペイントは、全国の塗装会社と取引きをしておりますが、2022年と2023年では住宅塗装市場が全く変わってしまったと実感しています。総括とするには少し早いですが、その変化を整理しながら「2023年の住宅塗装市場の振り返り」をしてみようと思います。

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コロナ後の変化

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※イメージ写真

2020年4~8月までは、新型コロナウイルス感染症が拡大し始め、市場が完全に停止したような印象でした。しかし、2020年9月頃から市場が少しずつ動き始め、2021年からは市場の動きは活発になりました。

その大きな要因となったのは、2020年7月頃に始まった「特別定額給付金」であり、一人につき10万円、一世帯では約40万円給付されました。全国民に約13兆円弱のお金が給付された結果、2021年から2022年にかけて住宅塗装市場のプチバブルが起こったと言っても過言ではありません。

2023年の住宅塗装市場の理解のためには、コロナ禍を通じて起きた「大きな二つの変化」を知る必要があると考えます。

変化①WEB集客への移行

一つ目の変化は、社会全体の強制的なデジタルシフトにより、住宅塗装の集客手段が、チラシからWEBに大きく移行したことです。今でも、集客はチラシとWEBの併用型が多いとは思いますが、WEBの比率が大きくなっていることでしょう。このことにより、優れたノウハウと資金力を持つポータルサイトに多くの顧客は流れるようになりました。その結果、WEBでの集客は以前より遥かに難しく、そしてWEB集客コストが上がってきたという現状があります。

変化②顧客層の変化

二つ目の変化は、WEBを通じて問い合わせをする顧客層が大きく変わったことです。特に、団塊ジュニアの世代がコロナ禍で住宅塗装市場に流入し始めたことが挙げられます。「団塊ジュニア」とは、現在の49歳から52歳を指します。その世代が、10~15年前の30~40代で住宅を購入し、コロナ禍に初めての住宅塗装を行なったという仮説は成り立つと思っています。

「団塊ジュニア」は約800万人の人口層の世代で、2019年から2021年に生まれた新生児の人口が220万人であることを考えると、人口の多さとそのインパクトがイメージしやすいでしょう。この団塊ジュニアが給付金を手に取り、住宅塗装市場に流入したことは、プチバブルを起こす力になるであろうと想像できます。

塗装需要が落ち込んだ背景

戸建住宅
※イメージ写真

2021~2022年の住宅塗装市場のプチバブルにより、2023年の年初からの市場は一変した感覚があります。その裏付けとして、全国のほぼ全ての住宅塗装専門店の受注が激減し始めたことが挙げられます。そこには多くの複合的な要因があると思いますが、住宅塗装需要が落ち込んだ要因を三つに整理しました。

一つ目の要因は、インフレによる「消費者マインドの低下」です。実際に、スーパーマーケットの商品、電気・ガソリンなどのエネルギー、飲食店などのほとんどが10~20%以上値上がりしている感覚がある中、給与はほぼ上がっていないため、実質賃金は下がっています。つまり、実際に自由に使える可処分所得の低下が消費マインドを下げていることは間違いないでしょう。

二つ目の要因は、巨額な約13兆円弱の給付金の行先がかなり限定的で、衣食住の中でも、特に家の中で消費するモノに集中する傾向がありました。一方、住宅リフォームにおいては、外壁塗装にそれらの支出が向かったと考えられます。住宅塗装市場のプチバブルによる「塗装需要の先食い」は、2023年の塗装需要の低下に繋がったと考えられます。

三つ目の要因は「客層の変化」で、最も大きな要因かもしれません。先述のように、コロナ禍に団塊ジュニアが住宅塗装市場に本格的に流入し始めました。このことにより、団塊ジュニアの大多数は初めての塗装を終えたため、次の大きな塗装需要が出てくるまで10年近くかかるかもしれません。

これからのメインターゲットは「団塊ジュニア」へ移行

団塊ジュニア
※団塊ジュニア世代

そこで問題となるのは、今まで住宅塗装のメイン顧客であった「団塊の世代(74~76歳)」の7割が後期高齢者になっていることです。「後期高齢者」とは75歳以上を指し、一般的には日常生活に必要なモノ以外の消費を積極的に行なわない層でもあります。この住宅塗装市場からの「団塊の世代」の段階的な撤退が、今年度の塗装需要にも影響していると思っています。

「団塊の世代」は、高度成長期を支えてきた約800万人の世代であり、自由に使える最も大きな貯蓄額を有し、消費に貪欲な特徴があります。一方、「団塊ジュニア世代」は不遇の世代と言われており、社会人になった年から「失われた30年」が始まり、ほぼ全ての社会生活をデフレ下で過ごしてきた世代です。すなわち、「団塊ジュニア世代」は給与が上がってない世代であり、住まいに関してもローコスト住宅のメイン顧客であったとも言えます。

2024年以降の展望

ビジネス
※イメージ写真

これらの3つの要因により、住宅塗装需要が低下したと仮定すると、この厳しい状況は2024年以降も続いていくと考えることが賢明だと思っています。その中で、最も注意を払わないといけないのが「顧客層の変化」です。多くの住宅塗装専門店の現在の集客・営業手法は、市場から撤退しつつある「団塊の世代」のために生み出されたものです。

そのため、団塊の世代とは全く違う価値観を持ち、貯蓄と所得の少ないデフレ体質の「団塊ジュニアの世代」に向けた新たな取り組みが必要となります。アステックペイントとしても、この大きな市場の変化に対応した商品とサービスを皆様に提供していきたいと考えています。

今、一つ言えるのは、とても厳しい時代を迎えているということです。


コラム寄稿】株式会社アステックペイント代表 菅原徹

菅原 徹(すがはら とおる)

株式会社アステックペイント代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

アステックペイント

運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

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