住宅塗装市場の現在の立ち位置と未来を考える


住宅塗装市場の市況は引き続き冷え込んでおり、出口のない状況のように感じられます。
また最近では総合住宅リフォーム市場でも市況の悪化が目立ってきており、新築住宅においてもタマホームを始め、多くの住宅関連企業では非常に厳しい状況を迎えているようです。
そこで、今一度、住宅塗装市場の過去から現状までの歴史を振り返り、現在の立ち位置と未来の姿を考えてみたいと思っています。
住宅塗装市場のこれまでの歴史

まずは住宅塗装の市場規模は、「10~15年前の住宅着工戸数」でほぼ決定します。
例えば、バブルのピークとなる1990年ごろの住宅着工戸数は約160万戸となり、現在80万戸の約2倍の新築住宅が作られていました。
その10年~15年後の2000年以降は、「ペイントハウス」という訪問販売会社が、柔道の田村亮子(現、谷亮子)選手をCMに起用して社会に一大旋風を巻き起こしていました。
当時は、住宅塗装だけで売上300億円、リフォーム工事も含めて500億円まで急成長した企業でもありました。その象徴として、隈研吾氏が設計した地上8階地下2階建て、延べ床面積3万3800m2の「ペンタくん多摩センター店」を2003年に竣工する程でした。
この時代は、ナカヤマやオンテックスなど、住宅塗装もしくは外装専業の訪問販売会社の売上が100億円を超えてくる時代でもありました。
そして、当時のこの160万戸の住宅を購入していた世代が「団塊の世代」となります。高度成長を作り上げ、膨大な人口を誇る団塊の世代が35歳から40歳ごろに160万戸の新築着工戸数を1990年ごろに生み出し、その10年~15年後に住宅塗装のバブルが作られました。
塗装工事会社による元請化の開花

そして団塊世代の2回目の塗り替えが始まったのが2010年ごろになります。その頃は、訪問販売会社によるリフォーム悪徳業者が社会的問題となり、その穴を埋めるように「塗装会社による元請化」が一気に開花して、住宅塗装専門店が生まれたときでもありました。
それまでの住宅塗装専門店は、売上1億円でも全国的に注目されていましたが、それが一気に売上3億円、5億円、10億円の住宅塗装専門店が生まれてきた時代でもありました。
実はその2010年ごろとは、「団塊ジュニアの世代」が40歳ぐらいとなり、ローコスト住宅が一大ブームとなり、タマホームなどが大躍進した時代でもありました。当時の住宅着工戸数は100万戸ほどとなります。コロナ明けの2022年ごろに住宅塗装市場でミニバブルが起きていましたが、当時はコロナ中に溜まった需要が噴出したと思っていましたが、実は「団塊ジュニアの世代」の第1回目の塗装が始まっていた時期でもありました。
そのような流れを経て2025年、インフレによる消費マインドの低下とともに住宅塗装が冷え込んでいる現状をどのように考えるべきでしょうか。
住宅塗装市場における1990年からの約35年間の歴史と現状を整理すると
❶最大の資産と人口を誇った「団塊の世代」は、75歳以上となり市場から消滅した
❷「団塊の世代」の消滅もって、住宅塗装の市場規模はピークから明らかな下降線を辿っている
❸その代わりとなる「団塊ジュニア世代」の人口規模は大幅に少なく、さらに資産は限りなく少ない
❹着工戸数の推移は、1990年代の160万戸、2010年代の80万戸、2030年以降は60万戸へ
❺着工戸数が減る中で、ハウスメーカーの市場占有率は20%から50%近くまで上昇している
❻すなわち、外壁材は高耐久性、ノーメンテナンス仕様、塗装をますます必要としない住宅が中心
❼ハウスメーカーの囲い込みが洗練され、ハウスメーカー顧客が住宅塗装専門店に流失することがなくなった
住宅塗装市場の現在の立ち位置

上記の内容を要約すると、「住宅塗装専門店としての未来は実に暗い」ということになります。
これが住宅塗装市場の偽らざる現在の立ち位置だと考えます。そして今と同じことを今後もやり続けるだけであれば「未来は実に暗い」ということになります。
当然、市場は一気に消える訳ではないので、競合相手との熾烈な戦いを続けながら、市場シェアを奪い続けることでしか生き残ることはできません。
住宅塗装だけで生き残ることは難しい時代になってきていると考えています。住宅塗装とは消費頻度が10年から15年に一度の単品商品という特性があるため、リピート工事はほぼ生まれません。
すなわち、新規顧客を取り続けなければならない宿命であり、市場規模が縮小していく時代において、集客コストは確実に上昇していくため、新規だけを取り続けるビジネスでは成り立たなくなるのは明らかです。
よって、住宅塗装という単品工事だけではなく、工事の品そろいを増やしていくことは非常に有効です。だからと言って、総合リフォーム会社と同じでは到底敵うわけがありません。
そこで、外装工事まで工事の幅を広げることで、仮に集客コストが今までは一件当たり5万円だったのが10万円になったとしても、塗装工事請負金額が150万円から、外装工事も加えて250万円まで単価アップできるのであれば事業として十分成り立ちます。
もしくは集客コストが10万円で150万円の塗装工事を請けたとしても、さまざまな外装工事を提案し続け、同じ顧客から今後10年間の総売上高が1000万円になれば、膨大な利益が残ることになります。
このような取組みは住宅塗装の単品工事ではできなかったことです。外装工事まで工事範囲を広げて、品揃いを増やしながらリピート工事を獲得できるのであれば、仮に10万円の集客コストでも「販促を継続できる」ので、競合他社は自然と消えていき、結果として自社エリアの占有率を高めながら、未来に生き残っていけるでしょう。
自社も変化させ続ける重要性

市場は必ず変化していきます。過去35年間の経緯を見ても、住宅塗装市場は大きく変化してきましたし、これからも変化していくことでしょう。重要なことは、市場の変化に合わせて、「自社も変化させ続ける」ことです。アステックペイントとしては住宅塗装専門店のための新たなビジネスモデルとして外装工事まで幅を広げるための「おうちReカバー」というサービスをリリースしました。
もちろん完成されたサービスではなく、これから皆様とともに作り上げていくものだと思っています。ぜひとも市場の変化とともに自社も変化させ続け、「暗い未来」を「明るい未来」に変革させていきましょう。
<2025年10月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>
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このコラムの寄稿者と運営者
【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹
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菅原 徹
株式会社アステックペイント 代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。








