知っておきたい基礎知識!下塗材の効果を徹底解説

LINEで送る Twitterでシェア Facebookでシェア
image
image

下塗材の主な役割は、以下の3つです。

①下地と上塗材との付着力を高める役割
②劣化した下地の吸い込みを止める役割
③下地の凹凸や段差を埋める役割

また、下塗材の色や機能(遮熱・防錆・難付着対応)によって、上塗材の性能を向上させ、下地の保護機能も高める効果があります。ただし、どのような効果を期待して下塗材を選定するかは、本記事を参考にしていただき、下塗材の重要性を理解していただければと思います。

この記事が、新たに塗料業界に就職された方や下塗材の役割について不明瞭な点がある方にとって、日々の営業活動のお役に立てていただければ幸いです。

バナー

下塗材の遮熱効果

まずは、遮熱効果を持つ下塗材についてご紹介します。遮熱効果とは、太陽光の近赤外線領域の光を反射し、塗装表面の温度上昇を抑制する機能です。
遮熱顔料を使用しており、太陽光中の近赤外線を反射し、遮熱性を発揮します。

遮熱塗料のJIIS K 5675(高日射反射率塗料)では、下記の様な数値になります。

・淡彩色:近赤外線反射率80%以上 (※明度80%以上)
・中彩色:近赤外線反射率40~80% (※明度40~80%)※
・濃彩色:近赤外線反射率40%以上 (※明度40%未満)
※中彩色は明度以上の近赤外線反射率を有している必要があります。

遮熱塗料でも太陽光の近赤外線を100%反射することはできません。そのため、下塗材にも遮熱効果を持たせることでより効果的に近赤外線を反射することが可能になります。

※当社遮熱効果を持つ代表的な製品
弱溶剤遮熱下塗材     :「サーモテックシーラー」
弱溶剤遮熱錆止め下塗材:「サーモテックメタルプライマー」

また、太陽光(熱)は、透明色が最も透過しやすく、白色に近づくほど反射されやすくなります。そのため、下塗材の色味によって近赤外線の反射率に差が生じ、白色に近づくほど遮熱性を発揮しやすいと言われています。

2製品とも、「白」と「グレー」の2色をラインナップしており、どちらの色を使用した場合でも太陽光を反射することができますが、より遮熱性能を発揮させたい場合は「白」をご選択ください。

下塗材の防錆効果

「防錆効果」とは、金属を錆による腐食から守る性質です。

金属の錆の発生メカニズム

まずは、下塗材の防錆機能を紹介する前に、錆の発生のメカニズムを説明します。金属に付着した水分(湿気・降雨・結露など)が、空気中の酸素と反応し、金属が酸化することで表面に錆が発生します。鉄製の金属製品であれば赤錆が発生し、アルミニウム製製品であれば白錆が発生します。

そして、錆が発生した状態で放置すると、孔食※1に至り、建材の強度低下や雨漏れにつながる恐れがあります。
※1:孔食とは、金属材料の表面に局所的に内部に向かって孔状に深く進行する腐食のことです。

孔食のイメージ写真

防錆効果を持つ下塗材の防錆メカニズム

下塗材が錆を防ぐメカニズムについてご説明します。

下記イラストは、鉄に防錆効果を持つ下塗材と上塗材を塗装し、上塗材や下塗材まで傷つき、水滴が付着したイメージ図です。 鉄は水や酸素によって赤錆になりますが、鉄よりも錆びやすい防錆剤(防錆顔料等)を下塗材に配合しています。そのため、防錆剤が鉄の代わりに水分や酸素と反応することで、鉄の錆びを抑制します。一般的にこのメカニズムを犠牲防食と呼んでいます。

※当社防錆効果を持つ代表的な製品

・弱溶剤2液錆止め下塗材:「エポパワーメタルJY」
・弱溶剤遮熱錆止め下塗材:「サーモテックメタルプライマー」
・弱溶剤錆止め下塗材   :「一液エクセルエポプライマーJY」

防錆性を図る試験方法

下塗材の防錆性は、サイクル腐食性試験(「JIS K 5674」※2)によって規定されています。試験方法としては、錆の発生していない鋼板に対して、防錆効果を持つ下塗材を塗装し、☓字にカッターで切り込みを入れます。

その後「①塩水噴霧、②湿潤、③乾燥」を1サイクルとして、36~120サイクルを繰り返したのち、錆の発生状況を確認します。
※2:JIS K 5674(鉛・クロムフリー錆止めペイント)とは、一般的な環境下での鉄鋼製品及び鋼構造物などの錆止めに用いる塗料です。

サイクル試験手順のイメージ

※ 沿岸部などの厳しい環境の場合は、2液であるエポパワーメタルJYの使用を推奨します。
※ 写真は社内試験による試験体のものであり、外部試験によるものではありません。また、切り込み傷は素地まで達するように付けており、必ず錆が生ずるものであるため、傷部分の錆の発生は評価の対象外です。

下塗材の色による隠ぺい効果

隠ぺい性とは?

続いて、下塗材の色による隠ぺい効果について紹介します。下塗材の色によっては、外壁色を覆う・隠ぺいすることで、奇麗な仕上りにすることが可能です。以前は、淡彩色の外壁が主流でしたが、近年では、「淡彩色・濃色での塗り分け」や「多彩仕上げ」などデザイン性が高い塗装工事が増えて、濃色を淡彩色、または淡彩色を濃色に塗替えるケースも増えています。​

特に、淡彩色から濃色に塗り替える場合、透明な下塗材を使用すると、上塗材を規定回数塗布しても下地の色が透ける場合もあります。(※以下 塗り替え時の下塗材のイメージ写真となります。)

より幅広い色味への塗り替えに対応するために、「エポパワーシーラー」「エクセルエポシーラー」「プレミアムSSシーラープライマー」「弾性エポシーラー」の4製品は「グレー色」をラインナップしております。

隠ぺい性を図る試験方法

隠ぺい性試験(「JIS K 5600」※3の規格)の結果は以下のようになりました。

※3:隠ぺい性試験とは、淡彩色や低明度の塗料が下地をどの程度隠ぺいできるか確認するため の試験のことです。黒と白が印刷された隠ぺい率試験紙に、塗料を塗った時に黒と白が隠れているのかを測定することで判断します。

全製品のグレー色で隠ぺい性が非常に高い数値となっています。淡彩色から濃色への塗り替え時はグレー色の選定を推奨します。下塗材の色の使い分けは以下のパターンを参考にしてください。

(1)下地と塗り替え色が同系色の場合 ➤ 透明を推奨
(2)濃色から淡彩色に塗り替えの場合 ➤ 白​を推奨​
(3)淡彩色から濃色に塗り替えの場合 ➤ グレーを推奨​ 

※下塗材の色の選定は「下地」と「使用する上塗材の色」によって、左右されるため、あくまでも下塗材の色の選定基準目安としていただければと思います。

下塗材による難付着系塗膜への強付着効果

難付着系塗膜とは?

最後に難付着系塗膜に付着可能な下塗材について紹介します。 難付着系塗膜とは、フッ素樹脂、変性無機系、光触媒塗料など、無機系の結合材を有する塗料のことです。耐候性が高くて長持ちをする塗膜ですが、一般的な下塗材(アクリル・エポキシなど)では付着性が悪く、塗装後に剥離する可能性があるため、塗替え工事では難付着系対応の専用下塗材を選定する必要があります。

以下の写真は、難付着系塗膜に一般的な下塗材を塗装して剥離した事例となります。

※当社難付着系対応の代表的な製品
弱溶剤難付着系対応2液下塗材:「エポプレミアムシーラープライマーJY」
水性難付着系対応2液下塗材  :「プレミアムSSシーラープライマー」

難付着系塗膜への付着するメカニズム

難付着系塗膜は、一般的な塗膜と比べて無機質な結合材の成分(セラミックやガラス質など)が多く含まれています。その無機質な塗膜に付着するために、A液に有機成分(赤矢印)をB液に無機成分(青矢印)が含まれており、それぞれの結合材が既存塗膜に付着することで、高い付着性を発揮し、難付着系塗膜にも付着することが可能となります。

両製品とも、有機成分・無機成分が含まれているため、それぞれの成分が一般的な塗膜や難付着系塗膜に付着することで、高い付着性を発揮することが可能となります。

まとめ

今回は「下塗材」の必要性について、下塗材がなぜ必要なのかや機能付きの下塗材の紹介など、下塗材に関するあらゆる情報をご紹介しました。

塗装工事現場では、最適な下塗材を選定するために「シーラー・プライマー・フィラー」「水性・溶剤」「1液・2液」「色」「機能(遮熱・防錆・難付着対応)」など、さまざまな組み合わせを考慮する必要があります。

この記事を読んでいただき、少しでも「下塗材」についての必要性や知識を理解していただければ幸いです。


谷口

記事監修】株式会社アステックペイント 谷口智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

アステックペイント

運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

バナー

この記事に関連する用語

記事カテゴリ

  • 塗装業界チャンネル
  • 営業活動レポート
  • 経営サポート
  • 塗装の現場から
  • 代表コラム
  • 製品紹介