塗装現場で発生した「一酸化炭素中毒」の事故事例と対策

現場の研究 安全対策塗装 2022.01.14 (最終更新日:2024.10.09)
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一酸化炭素中毒と聞いて、一般的には「ガス給湯器・石油ストーブ使用中の事故」「大雪で動けなくなった車内に排気ガスが充満した事故」等を想像される方が多いと思います。しかし、これらの事故は一見関係のないように見える塗装現場でも起こっています。その原因の一つとなっているのが、高圧洗浄のために使用する「エンジン式発電機」です。

本記事では、実際に塗装現場で発生した「一酸化炭素中毒」の事故事例を交えて、その対策をご紹介いたします。

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一酸化炭素中毒とは

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一酸化炭素は無色・無臭の有毒成分です。吸入すると、本来「酸素」と結合して体中に酸素を送るはずのヘモグロビン(血液中の赤血球に含まれる物質)が、一酸化炭素と結合しやすくなり体内に充分な酸素が行き渡らなくなってしまいます。それが、一酸化炭素中毒です。

一酸化炭素は気体であるため人が気づかないうちに症状が発生し、摂取する濃度によって死に至る危険性があります。初期症状は軽度の頭痛、吐き気等からはじまり、無意識のうちに致命傷へ進行するという特徴があります。

一酸化炭素中毒の事故事例

今回、2現場で発生した一酸化炭素中毒事故の共通点として、塗装作業中にエンジン式発電機を使用していたことが挙げられます。以下が、事故の詳細になります。

事例① 外壁の高圧洗浄中に施主様が一酸化炭素中毒になった

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事例概要
発生状況戸建て住宅の塗装工事で外壁の高圧洗浄をするため、エンジン式発電機2台を使用していた。
敷地が狭かったこともあり、発電機からの排気ガスが基礎換気口に入る向きで発電機を設置してしまい、排気ガスが床下から室内に充満した。
症状 施主様が失神して倒れ、救急車で搬送され病院で受診。一酸化炭素中毒と診断された。
事故原因・基礎換気口近くに発電機を置いた。
・発電機の排気ガス排出が基礎換気口側に向いていた。
事故対策・発電機は換気の良い場所に設置する。
・排気ガスの排出先を換気の良い方向に向ける。

事例② 室内の塗装工事中に作業者3名が一酸化炭素中毒になった

出典:厚生労働省「工業中毒等特殊疾病(障害)情報報告」より

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事例概要
発生状況店舗内天井の塗装工事中、エンジン式発電機を建物外に置かず店舗内の扉近くに設置していた。
また排気ガスが室外へ排出されるように開口部を2方向設け、扇風機で発電機に向かって送風していた。
症状 作業者3名の気分が悪くなり、病院で受診。一酸化炭素中毒と診断された。
事故原因・換気が不十分な室内で発電機を使用した。
・呼吸用保護具が未着用であった。
事故対策・発電機は屋内に設置せず、換気の良い場所に設置する。
・排気ガスの排出先を換気の良い方向に向ける。
・室内の十分な換気を行う(換気扇の使用、窓を開ける)。
・呼吸用保護具を着用する。

まとめ

本記事では、一酸化炭素中毒の事故事例をご紹介いたしました。

エンジン式発電機から排出される排気ガスは一酸化炭素などの有害成分を含んでいます。今回の2現場の事例は、エンジン式発電機の設置方法が原因であるため、適切に発電機を設置できてさえいれば未然に防げた(大事に至ることはなかった)事故と言えるでしょう。一酸化炭素は発生したことを気が付きにくいものであるため、より注意して設置することが重要です。

一酸化炭素中毒は、初期症状として頭痛、吐き気といった症状から始まりますが、中毒者の摂取濃度によっては命を落とす恐れがあります。また一命をとりとめても、後遺症が残り日常生活や作業に支障が出てしまうこともあります。

これらの事故は、前提として私達のどの現場でも起こり得ることとして考え、安全な塗装現場づくりのために参考にされてください。

塗装現場での安全対策に関するそのほかの情報はこちらをご覧ください

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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