油断大敵!波形スレート屋根の踏み抜き事故防止のための安全対策


波形スレート(波型スレート)は、「セメントと繊維を主成分として作られる屋根外壁材」のことで、主に工場屋根や倉庫などの建造物に使用されています。
※以後、波形スレートに表記を統一そんな波形スレートが屋根に使用されている場合、経年劣化で強度が低下しているため屋根を踏み抜いてしまい、転落事故が発生することがあります。
そこで今回の記事では、「波形スレート屋根の踏み抜き事故事例」と「事故防止のために必須となる安全対策」を紹介します。
塗装現場の安全対策の一つとしてぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
✅ 波形スレート屋根の踏み抜き事故件数と発生傾向(10年間で145件)
✅ 経年劣化(30年経過)による強度低下データ(新品比50%以下)
✅ 実際の死亡事故事例2件から学ぶ、やってはいけないこと
✅ 労働安全衛生規則が定める3つの必須安全対策
✅ 現場で今すぐ実践できる安全対策
目次
波形スレート屋根とは?危険性を正しく理解する
波形スレートとは、セメントと繊維を主成分として作られた波形状の屋根・外壁材のことです。主に以下の建造物に使用されています。
- 工場の屋根
- 倉庫の屋根
- 農業用施設
軽量で施工しやすいため広く普及していますが、経年劣化による強度低下が深刻な材料です。
波形スレート屋根の踏み抜き事故件数

まずは事故の件数についてご紹介します。
平成18年から平成27年までの10年間で145件のスレート屋根の転落死亡事故が発生しており、その内の9割以上は踏み抜きによるものです。
■スレート屋根からの墜落死亡災害の発生件数(原因別)

【データで見る】経年劣化で波形スレートの強度はどこまで低下するのか?

冒頭でご紹介した通り、波形スレート屋根からの転落事故の多くは踏み抜きによるものです。
そこで、アステックペイントでは、波形スレート屋根が経年劣化(30年経過後)によって、どの程度強度低下するのか調査しました。
試験体を固定し、中央に1線の荷重を加え、試験体が破壊した時の力(重さ)を測定する試験方法を用いています。
■試験結果
経年劣化(30年程度経過)した波形スレートの強度:182kg
※新品波形スレートの強度:400kg以上
この試験により、30年ほど経過した波形スレート屋根を新品のものと比較すると、半分以下の強度であるということが確認できました。試験は下記写真のように6点で力を支えているため、1点で耐えることができる加重は30kg程度になります。
以上のことから経年劣化による波形スレート屋根の強度低下が、踏み抜き事故の原因となっていることが分かります。
■試験写真
| 【試験前】 | 【試験後】 |
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事故事例

実際に発生した波形スレート屋根の踏み抜き事故の事例をご紹介します。
経年劣化した波形スレート屋根は人が乗れるほどの強度がありません。しかし、波形スレート屋根上作業での事故は、波形スレート屋根の危険性を軽視した事例が多くを占めています。
【事例】スレート屋根の一部が抜け、落下した男性が死亡・命綱なし(2020年2月20日 神奈川新聞より)
19日午前10時20分ごろ、横須賀市内川1丁目の横浜鋼材の工場で、補修作業中に屋根の一部分が抜け、同市長浦町の建設業の男性(46)が落下した。
男性は全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
浦賀署が事故原因を調べているが、傾斜があるスレート屋根の一部分(約90センチ四方)が抜け、男性が約12メートルの高さから床部分の鉄板に落下したという。命綱は付けていなかった。
落下した破片などが工場内にいた横浜鋼材の社員の男性(33)に当たり、軽傷を負った。
【事例】スレート屋根を踏み抜き・墜落(厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害事例より)
工作所屋根改修工事において、鉄骨平屋の工場のスレート屋根の上で、雨漏り箇所の修繕のためにスレート屋根上全面に波形鉄板の敷き込み作業を行っている際、スレート屋根を踏み抜き、高さ約5mの箇所から墜落し、死亡した。
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
① スレート屋根上の作業にあたり、踏み抜き防止措置等の安全措置を講じていなかったこと。
② 保護帽を着用していなかったこと。
落下事故の防止対策

波形スレート屋根等からの落下事故を防止するための規定として、労働安全衛生規則に下記の規則が設けられています。
【労働安全衛生規則】第524条(スレート屋根等の屋根上の危険の防止)
事業者は、スレート屋根、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅が30 センチメートル以上の歩み板を設け、防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
【労働安全衛生規則】第518条(作業床の設置等)
① 事業者は、高さが2メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
② 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等、墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
以上のように波形スレート屋根の施工時は、歩み板の設置、墜落防止ネット、親綱の取付け、墜落制止用器具の装着などの安全対策が必須となります。
今回ご紹介した2つの事例では次の3つの安全対策のいずれか、もしくはすべてが不十分でした。
① 幅30 ㎝ 以上の歩み板の設置 ② 落下防止用ネットの設置
③ 親綱の設置と墜落制止用器具(安全帯)の使用
事例から分かる通り、①~③の安全対策を徹底することが波形スレート屋根の踏み抜き事故を未然に防ぐための対策方法であると言えます。
波形スレート屋根で作業する前に必ず実施すべき安全確認チェックリスト
現場作業前に以下の項目を確認してください。
【作業前チェックリスト】
- □ 屋根の経年数・劣化状態の事前確認(築30年超は特に注意)
- □ 幅30cm以上の歩み板の準備・設置
- □ 落下防止用ネットの準備・設置
- □ スタンションの設置・親綱の張り設定
- □ 全作業員への墜落制止用器具(安全帯)の装着確認
- □ 保護帽(ヘルメット)の着用確認
- □ 作業員への危険性の周知(踏み抜きリスクのある箇所の共有)
まとめ:スレート屋根の安全対策は「やって当たり前」の基準で
今回の記事では、「波形スレート屋根の踏み抜き事故の事例」と「事故防止のために必須となる安全対策」について紹介しました。安全対策は日々の積み重ねが大切であり、特に波形スレート屋根の施工は注意が必要です。皆様の現場で同じような事故が起きないためにも、ぜひ参考にされてください。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| 経年劣化の危険性 | 30年経過で強度が新品比50%以下、1点あたり約30kgしか支えられない |
| 事故の主な原因 | 安全対策の未実施・軽視(10年間145件の死亡事故の9割以上が踏み抜き) |
| 法令上の必須対策 | 歩み板(幅30cm以上)・防落下ネット・スタンション+親綱+墜落制止用器具 |
| 作業前の確認 | チェックリストによる安全確認の徹底 |

FAQ:波形スレート屋根の安全対策に関するよくある質問
Q1. 波形スレートとは何ですか?
波形スレートとは、セメントと繊維を主成分として作られた波形状の屋根・外壁材のことです。主に工場・倉庫などの建造物に使用されています。軽量で施工しやすい一方、経年劣化により強度が著しく低下するため、施工・補修時には踏み抜き事故への十分な注意が必要です。
Q2. 経年劣化した波形スレート屋根はどれくらい危険ですか?
アステックペイントの強度試験によると、約30年経過した波形スレートの強度は182kgです。新品の400kg以上と比較して半分以下に低下しています。試験条件(6点支持)から換算すると、1点あたりの耐荷重は約30kg程度になります。成人男性の体重(60〜80kg)を支えることは困難であり、踏み抜き事故が起きやすい状態です。
Q3. スレート屋根での作業時に法律で義務付けられている安全対策は何ですか?
労働安全衛生規則第524条・第518条に基づき、以下の3つの措置が義務付けられています。①幅30cm以上の歩み板の設置、②落下防止用ネットの設置、③スタンションによる親綱の設置と墜落制止用器具(安全帯)の使用です。これらを怠った場合、死亡事故につながるリスクが高まります。
Q4. スタンションとは何ですか?波形スレート屋根での設置はどうすればよいですか?
スタンションとは、高所作業時に親綱(命綱を張るためのロープ)を設置するための支柱のことです。波形スレート屋根では屋根の形状・勾配に対応した製品を選定し、製品仕様書に従った間隔・耐荷重の基準で設置します。作業開始前に必ず設置状態を点検してください。
Q5. アステックペイントに加盟すると、現場の安全管理についてもサポートしてもらえますか?
はい、サポートしています。アステックペイントでは加盟店向けに職人向け勉強会・安全大会を定期開催しており、波形スレート屋根の踏み抜き対策をはじめとした現場の安全・品質向上を専門スタッフがサポートします。現場の課題・不具合に迅速に対応する体制も整えています。
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この記事の監修者と運営者
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。


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