直接取材 女性職人を取り巻く環境と課題
「現場女子」「塗装女子」という言葉を耳にしたことはありませんか。SNSなどでも目にすることがあるかと思います。
その言葉の通り、工事現場で働く女性、塗装工事を行う女性という意味ですが、近年建設現場で働く女性が注目されています。また、建設業界で働く女性を増やそうという取り組みも推進されています。
今回は建設現場で働く女性職人にフォーカスし、「建設業界で働く女性の比率」や「女性が働きやすい環境にするために何が必要なのか」などをご紹介いたします。
現在、女性職人を雇用している方や、今後雇用したいと思っている方の参考になりましたら幸いです。
建設業界における女性の労働者比率は
初めに建設業界での女性労働者比率や、女性管理職比率がどのくらいなのかを見ていきましょう。
上記の図表より、就業者に占める女性の割合を見ると、全体では13.6%*¹であり、技術者では5.7%、技能者では3.7%*²となっています。 なお管理職では、女性の比率は2.7%*³です。
雇用者総数に占める女性の割合は45.3%*のため、建設業界は女性が非常に少ない産業であることがわかります。
*¹:令和4年8月に国土交通省と業界団体などが策定した「女性定着促進に向けたアクションプログラム」より引用
*²:施工管理を行う者であり、直接的な作業は基本的に行わない。「国土交通省 技能労働者」より引用
*³:建設工事の直接的な作業を行う、技能を有する労働者のこと。「国土交通省 技能労働者」より引用
*⁴:「厚生労働省 令和2年の働く女性の状況」より引用
さらに、建設業界内の技能者(以下、職人と表記する) は、男女問わず、少子高齢化などの影響を受け慢性的な人材不足に陥っています。この状況を打破するためにも、「職人=男性」というイメージを払拭し、女性を職人として積極的に採用していくことも手だての一つになります。
女性を採用することで、男性社会であった建設業界に様々な気付きをもたらし、女性ならではの着眼点で、誰でも働きやすい環境を整備することができる可能性も高くなります。
女性活躍支援の現状
この建設業界を、もっと女性が活躍できる業界にして行くために、国土交通省では、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を平成26年に発表しています。
その行動計画は、「建設業界は業界を挙げて女性の更なる活躍を歓迎し、もっと女性が活躍できる産業に生まれ変わる。」という決意のもと策定されました。
主な取り組みとして、
①建設業に入職する女性を増やす
②働き続けられる職場環境を作る
③女性がさらに活躍しスキルアップできる環境を整える
④建設業での女性の活躍する姿を、広く社会に発信する
の4つが挙げられます。
具体的な施策に関しては、国土交通省のサイト をご覧ください。
国土交通省サイト:https://www.mlit.go.jp/common/001052116.pdf
上記の取り組みの結果、
◎女性技術者:平成26年(1.1万人)→平成30年(1.8万人) 1.64倍増加
◎女性技能者:平成26年(8.7万人)→平成30年(10.4万人) 1.19倍増加
となり、女性雇用者が増加することで、建設業界の課題である人手不足の解決に繋がっていることがわかります。
このように、今、国としても女性が働きやすい建設業界を目指して様々な取り組みを行い、建設業界で活躍する女性職人が増加しています。
女性職人が現場で抱える悩みとは
ここまで女性職人の採用のメリットや、国での動きについてご紹介いたしましたが、実際に女性職人を採用した場合、どのような課題があるのでしょうか。
塗装業界で働く女性職人様 (計9名)を対象に現場で働く上での悩み及びその解決策などをヒアリングしました。
《現場で働く上での悩み》
・近くにトイレ(コンビニ)がない時が大変
・女性の日に作業を行うことが大変
・着替えのスペースがない
・材料が重くて持てない
・肌や爪の間についた塗料を取るのが難しい など
業界全体で抱えているものから、女性ならではの悩みまでありました。
特に、上記2項目の悩みが多かったものになります。女性職人を増やすためには、こういった女性職人の抱える悩みを解決していくことが必要です。
女性が働きやすい環境づくりの取り組み事例
では、これらの課題をどうすれば解決することができるでしょうか。
実際に女性職人の活用を推進されている塗装会社様にお話を伺いました。一部の課題に対して、実際に行われていた解決策をご紹介いたします。
《悩みの解決策》
・近くにトイレ(コンビニ)がない時が大変
→自転車を持参させ、トイレのある場所まですぐに行けるようにしている
→女性2人組で作業を行い、言いやすい環境にする
・女性の日に作業を行うことが大変
→女性の日休暇が設けられており、特に体調が悪い場合は休みを取らせる
→タンポンを使用している
→低用量ピルなどのPMS症状を和らげる薬を服用する
・着替えのスペースがない
→車内に着替えができるスペースを用意している(黒カーテンを付けている)
→女性2人組で作業を行っている
上記以外にも、様々な悩みやそれに準じた解決策があるかと思います。
上記の内容を踏まえ、女性を採用する際、また自身が塗装業界で働いていくうえで、参考になればと思います。
まとめ
今回は女性職人に着目し、建設業界における女性の労働者 比率や、女性活躍支援の現状、女性職人が現場で抱えている悩み、女性が働きやすい環境づくりの取り組み事例などをご紹介いたしました。
今後、塗装業界で人材不足を解決するための手立ての1つが女性職人の採用です。女性を採用するには、女性ならではの悩みを理解し、悩みに応じた対策が必要です。
しかし、女性職人の採用によって、男性主体だった塗装業界に、女性の視点や感性が加わることで、新たな気付きや顧客満足度の向上が期待できます。
ぜひ、女性職人の採用拡大を検討してみてはいかがでしょうか。今後も、女性職人が働きやすい環境にするための情報などを発信していく予定ですので、ご期待ください。
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【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。