塗装業界におけるインフレの影響と対策の再考

代表コラム 2022.10.17 (最終更新日:2024.10.08)
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昨年末から塗装業界におけるインフレの影響とその対策について、多少なり私の考えをこの紙面でお伝えしてきました。そこでは、塗料メーカーの度重なる値上げが続き、職人および協力業者の賃金も引き上がる傾向の中、「塗装工事の販売価格を上げなければならない」との結論でまとめさせていただきました。

今回は以前にも増して世界的なインフレ傾向が続く中、我々の業界の現時点でのインフレの影響と対策について再考してみたいと思います。

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数値で見る塗装業界の現状

日本銀行と総務省による2022年7月の速報値によると、企業物価指数(企業間で取引するモノの価格動向を示す指数)は前年比8.6%上昇となり、1980年12月以来の高い伸びが続いています。この背景には、円安やロシアによるウクライナ侵攻などの様々な要因が重なっており、短期的に改善されるものではないと考えます。

同じく、2022年7月の消費者物価指数は前年比2.6%上昇、天候などで大きく数値が変わる生鮮食品等を取り除いた場合は前年比2.4%上昇となっています。その中身を見ていくと、物価上昇品目の割合が7割を超えており、消費者にとっては身の回りのほとんどは価格が上がってきており、多くの家庭においても実際に生活を圧迫し始めているかもしれません。

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しかしながら、企業物価指数8.6%上昇と消費者物価指数2.4%上昇の差を見ると大きなギャップがあります。これは単純に企業の仕入れ価格は上がっているが、販売価格に価格転嫁できていない状況だからであり、企業の利益は大きく圧迫されています。

一方で、2022年度の大手企業の業績見通し(三井住友DSアセットマネジメント社による金融セクターを除く406社への独自調査結果)を見ていきますと、対前年度の売上および経常利益において、伸び率はそれぞれ10%以上との見通しとなっています。すなわち、大手企業は仕入れ価格の販売価格への転嫁を実行および円安のメリットを享受して、大幅な収益増を実現しています。


このことから、企業物価指数と消費者物価指数の大きなギャップの中で「主に中小企業の多くが、価格転嫁できずに自社の利益を圧迫して苦しんでいる」と考えることができます。

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もう一つの参考情報として、商工中金の2022年5月調査分「中小企業収益へのコスト上昇・供給制約等の影響、および中小企業における価格転嫁の進捗状況」でも現状を確認できます。本調査の要旨を見ると、以下の結果が出ています。

・全体の7~8 割が、収益の悪化要因として川上価格の高騰や原材料・商品不足を指摘。
・賃金上昇や人手不足、円安進行は、比較的軽微な悪影響に留まっている。
・全体の8割以上が、価格上昇分の70%以上の価格を転嫁できていない。
・全く価格転嫁できていない企業は約25%。

これらはある程度想像通りの結果と考えますが、塗装業界の現状においては、上記の商工中金の調査結果よりもっと価格転嫁できていないと想像しています。

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塗料メーカーによる値上げはすでに数度あり、来年にも再度値上げがあると予想されています。アステックペイントでは、2022年は限界まで値上げをしない努力をしてきましたが、2023年からは値上げせざるを得ない状況になっています。
塗装職人や協力業者の単価はあまり上がっていないと聞いていますが、職人不足により需給バランスが崩れているにもかかわらず単価が上がらないということは、よほど職人さんに我慢をさせているという側面もあると思います。

それが、職人が塗装業界を離れてしまう要因となっていることでしょう。

塗装業界が抱える課題

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塗装業界は、職人さんが50年以上前から同じように刷毛、ローラー、吹付け機を使い施工し、過去30年間生産性が一切上がっていない業界という事実があります。

例えば、飲食業界であれば、原価が上がれば、自動販売機の導入で注文の手間を削減、ITを使って最少人数でホールをまわす、セントラルキッチンで料理時間を効率化、また営業時間を延ばすことで家賃の割安化も実現できます。

このようなことは、塗装業界において過去30年間何も行われていませんでしたし、今後もあまり期待はできないでしょう。すなわち、塗料代の値上げ、人件費の高騰は、会社の利益を直接圧迫し、販売価格を上げること以外で解決できる手段が無いのが塗装業界と言えるでしょう。

インフレの時代に生き残る会社とは

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利払いの負担を事業の利益で賄えない企業(2020年度で16.5万社)のことを「ゾンビ企業」と呼びますが、コロナ禍での潤沢な融資で延命してきた企業の多くはこのゾンビ企業の仲間入りをしており、これからそれら企業の大倒産時代を迎えようとしています。
現在、最も倒産が多い業種は建設業(全産業の34.3%)であり、その多くは物価高倒産と言われています。すなわち、販売価格に価格転嫁できずに倒産したということになります。塗装業界においても、同じ状況がこれから起きてくることでしょう。
インフレの時代で生き残れるかどうかの最も大きな鍵は、「販売価格を上げられるかどうか」です。

価格を上げても顧客が離れない企業が生き残り、「価格を上げたら顧客が離れる」もしくは「価格を上げられない企業」が大倒産時代に飲み込まれていく状況に入ったと言えるのではないでしょうか。

(2022年8月号アステックペイント定期発行物ホットラインの一部抜粋)

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このコラムの寄稿者と運営者

【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹

【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹

株式会社アステックペイント 代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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