給与格差の時代に対応するために

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給与格差社会とは

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当社は福岡市に本社を構えているが、2025年度の新卒入社より福岡の地場大手企業の多くが新卒の給与を大幅に上げてきた。その背景には、新卒の採用が 難しくなる中で、東京の大手企業並みの初任給にしておかないと、 優秀な九州の学生の採用が難しくなってきたことが考えられる。 今年度までは、福岡の地場大手企業の初任給は多くは23万円以下で あったが、2025年度より地方銀行が26万円まで上げたことに続いて、 他の地場大手企業が26万円以上に上げてきた。

すなわち、福岡の新卒採用においては、初任給23万円以下の企業か、26万円以上の企業に二分される「給与格差社会」に入ってしまっている。

当然、当社も同じタイミングで、初任給を26.5万円に引き上げた。 初任給を上げるということは300人以上いる既存社員全体の給与も上げる必要があり、結果として1億円以上の経費を上げることを決断した。

採用に関する考え方

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ここでの考え方としては、「今年度の経常利益 から換算して捻出できる初任給を決定するのではなく、採用活動で勝てる必要条件を満たすことが重要であり、1億円以上の経費アップが必要だとしたら、1億円以上の利益を捻出してでも、採用活動するための必要最低条件を必ず満たす」という考え方である。 仮に、1億円がもったいないという考えで、初任給23万円以下の企業グループに入ると、自社に来る学生のレベルはそのレベルになってしまう。なぜなら、企業と学生とは分相応にあった者同士の出会いだと考えるからである。当社としては九州において最低限、 地場の大手企業と同じ条件に立ち、その上で当社の価値観と合う学生との出会いを求め続けていきたい。 この考えはとても重要だと思っている。

昨今のインフレ時代、多少給与を上げるぐらいでは、物価高に対して実質賃金が下がっているのが中小企業の実態である。すなわち社員が貧しくなっていくことに対して、企業として対応できなければ、 良い人材が採用できないどころか、既存社員が流出していく時代となる。インフレの時代、原価を下げる努力をするのではなく、 多少コストを掛けてでも販売価格を上げる努力をしていかなければ、 利益を出すことはできない。つまり、社員の給与を上げることはできない。

30年間続いたデフレ思考を早く捨て去る必要があるのである。 既存の事業で販売価格を上げる努力を行いながらも、他の事業への 展開や他の市場開拓も必要になってくるだろう。いずれにしても、 給与格差社会において「社員の給与を上げられない企業には未来は ない」と断言できる。給与を上げるために、会社の利益を上げる という発想は、社員の協力が得られる取り組みとなる。

よって、 社員を巻き込んででも販売価格を上げるためのアイデアを募り、 実行し続けていくことは有効だろう。販売価格を上げるためには、 商品力、営業力、工事品質、顧客サービス力、全てを上げていく 必要があり、社員の協力は不可欠だ。

人手不足時代に給与を上げる重要性

今の日本社会は、どの業界においても人手不足であり、建設業界に おいてはとりわけ深刻である。タクシー業界でも同じように人手不足の状況であるが、都市部でのタクシー運転手の給与は爆上がり中であり、 若い運転手が入り始めている。近い未来に、同じような状況が建設業界 でも起きるかもしれないが、業界全体で広まるまで待つのではなく、 自社の地域内で先手で給与を上げることに取り組み、早めに良い 人材を採用していくことが大切である。

人手不足時代の特徴の一つ として、社員を増やした分だけ比例して売上を上げることができる とも言える。すなわち、先手で給与を上げることで、良い人材を採用し、 企業成長の良い循環を早く作ることが未来に繋がっていくこと だと考える。

この取り組みが、給与格差の時代に対応していくための 得策だと思っている。

<2024年4月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>

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コラム寄稿】株式会社アステックペイント代表 菅原徹

菅原 徹(すがはら とおる)

株式会社アステックペイント代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

アステックペイント

運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

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