塗装工事会社がインフレのメリットを享受するためには

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<2023年8月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>

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経団連が8月4日発表した2023年春闘の最終集計によると、大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.99%、引き上げ額は1万3362円で、およそ30年ぶりの高い水準となったようです。記録的な物価上昇に加え、人手不足の解消に向けた人材確保のために各社が積極的に賃上げの対応をしたとのことで、今後もこの傾向は強まっていくことでしょう。

反面、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、2023年6月の1人あたりの実質賃金は去年の同月と比べて1.6%減少し、15ヶ月連続でマイナスとなっているようです。

多少の時差があるとは思いますが、全企業数の0.3%を占める大企業(全従業者の約30%)はインフレ(物価高)以上の賃上げを行っているが、99.7%を占める中小企業(全従業者の約70%)では実際の給与は多少上がっているがインフレ以下の賃上げでしかないため、全企業での実質賃金は下がっていると理解できます。

最も賃上げ率の高い建設業界

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※イメージ写真

ただし、その中でも人手不足が著しい産業においては、企業規模に関わらず賃上げが実行されており、特に建設業界は最も賃上げ率が高い産業の一つとなっています。

現岸田政権は「構造的賃上げの実現」を優先課題に掲げており、社会全体として賃上げは非常に大きなテーマとなっています。そして、賃上げに取り組めない企業は淘汰の道を歩むことになると言っても過言ではないでしょう。過去30年間、日本の平均賃金はほぼ横ばいで推移してきました。

その主因はデフレ経済であったことが挙げられますが、デフレ時においては仮に給与が横ばいでも、物価が下がることによって生活レベルはむしろ向上している側面もありました。

実際にデフレ時は、給与は上がっていなくても、100円マック、ダイソー、ユニクロ、回転寿司などあらゆるモノとサービスの価格が下落し、消費者の多くにとってはむしろ豊かな生活を送れていたことは記憶に新しいと思います。
しかしながら、インフレ時代への転換により、平均賃金も多少上がってきていますが、実質賃金がマイナス1.6%と公表されているように、現在のインフレ下では多くの国民の生活レベルが低下し、困窮し始める家庭も急増すると考えられます。

一方、建設業界においては、スーパーゼネコンを筆頭に大幅に収益を改善しながら、大幅に給与を上げている企業も出始めています。

建設業界全体でも、平均賃上げは4.51%となっていますが、その中身としてはスーパーゼネコンを中心としたピラミッド構造の上層部の平均賃金は大幅に上昇していると想像できます。
一方で、ピラミッド構造の最下層部(専門工事業者)では、賃金の上昇までには多少の時差があり、しばらくは賃金の上昇幅もそれなりに抑えられることでしょう。

すなわち、現在の業界構造において、下請けや孫請けの塗装工事会社はまだ賃上げができる状況ではないと理解すべきではないでしょうか。

塗装工事会社が秘める「チャンス」

塗装会社
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ただし、塗装工事会社には「大きなチャンス」があります。それは、塗装工事会社は「元請け」になれる数少ない建設業界の業種の一つだからです。塗装工事会社の元請けは、住宅塗装をはじめ、アパートやマンション、もしくは工場、倉庫、店舗まで直接お客様から工事の受注が可能です。

元請けのメリットとして、お客様と直接契約ができるため、物価高をそのまま販売価格に転嫁しやすいことが挙げられます。すなわち、インフレ時代においては、自社が提供するサービスの価値をしっかり提案できるのであれば、インフレ以上の単価アップにより、社員および協力業者の賃金を上げ、さらに会社収益を上げることができる立場となれるのです。

現在、電力会社、石油会社はインフレに乗じて膨大に利益を伸ばしており、スーパーゼネコンにおいても低採算受注から高収益受注に切り替わりつつあります。塗装工事会社も「元請け」であるならば、同じようにインフレのメリットを享受できる立場であることを理解する必要があります。

「元請け」として、インフレ以上の価格を上げるためには、自社サービスの価値を上げる必要があります。インフレ時代に、未だに安売りをしている会社は淘汰の道を歩むことになります。

なぜなら、これからも塗料などの材料費は上がり、職人手当も上がり続けます。原価が上がるなか、安売り業者は自社サービスを向上させる手立て、もしくは経験がありません。
すなわち、価格を上げたタイミングで顧客が離れ、結果淘汰されることになります。

インフレ時代にやるべきことは

社会
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現在は、インフレ時代への過渡期となります。
そのため、自社サービスの価値を上げる時間の余裕が多少あります。

自社の商品ラインナップを見直し、事務員の電話対応や営業マンのサービスレベルを格段に高め、塗装工事会社として工事品質だけは地域圧倒的No.1になり、職人のマナーや提出書類の精度を上げることなど、やるべきことは山積しているはずです。

しかし、これらはコストはほとんどかかりません。社長が絶対に自社サービスの価値を格段に上げると決断し、関係者全員で努力し続けるだけのことです。しかしながら、これらのことに取り組まず、販売価格を上げられなかった結果、従業員の賃金も上げられない。
そして、営業スタッフや職人が去っていき、廃業の道を歩む塗装工事会社は後を絶たないと予想しています。

現在は、インフレ時代への過渡期です。すなわち、時代の変化に対応するための多少の時間は残されています。
インフレ時代においては、価格を上げられる企業だけが生き残っていけると考えることができます。ぜひとも、今からでも自社サービスの価値の向上に取り組み、販売価格と会社収益の向上を実現していきましょう。


コラム寄稿】株式会社アステックペイント代表 菅原徹

菅原 徹(すがはら とおる)

株式会社アステックペイント代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

アステックペイント

運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

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