「セルフ・キャリアドック」という制度から様々発想してみた
「セルフ・キャリアドック」という制度が、厚生労働省から推奨されている。
セルフ・キャリアドックとは、『企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のこと』とのこと。
その実現のためには『従業員が社会や組織の変化を先取りする形で変革に対応し、持てる能力を最大限に発揮していくために、従業員が自らのキャリアについて立ち止まって考える「気づきの機会」が必要である』と厚生労働省からの提言されている。
これらの取り組みを通じて、以下の二つを実現することを目的としているようである。
① 従業員にとっては自らのキャリア意識や仕事に対するモチベーションの向上とキャリア充実
② 企業にとっては人材の定着や活性化を通じた組織の活性化
セルフキャリアドックへの所感
内容は素晴らしいと感じるが、一方で様々な違和感を覚えてしまう。まず、②に関してはセルフ・キャリアドック以外で、もっと大切な他の取り組めが様々あるはずなので全く問題外だと思っている。①に関しては、多くのコストを負担しながら、社内にキャリアコンサルタントを育成・配置して、社員全員を対象に多様なキャリア研修を行い、そして本人が望むなら、キャリアチェンジを促し、その教育と育成まで支援をすることを提言している。
しかしながら、キャリアの変更とは、理論的には給与は下がることになる。海外では当たり前だろうが、必要なスキルや経験がないため、給与を落としてでも新しいキャリアに挑戦して、未来に向けた取り組みという位置付けになるはずだ。しかし厚生労働省の提案では、本人が望むキャリアチェンジに対して、その教育とスキルと経験不足に対する給与のギャップは企業が負担することを前提としているだろう。
すなわち、企業の生産性低下を促進させているように感じてしまう。さらには、シニア層に向けたキャリア取り組み支援もかなり強く言及しているが、このような内容を見ると、日本国として定年を60歳から65歳、そして70歳以上まで働ける環境作り、すなわち生産性が低い日本においては低賃金で一生働く制度作りの一環ではないかと勘繰ってしまう内容である。そもそも厚生労働省は企業の生産性という概念を考慮する立場でもないので仕方ないかもしれない。
インフレ時代に必要なこと
根本的に、これからしばらく続くであろうインフレ時代に必要なのは、「稼ぐ人材」作りだと思っている。入社時に配属された職種にてまずは業界一流人材になることを目指して、様々な研修や教育を通じて支援して、稼ぐ人材を育成し、そしてその成果を正当に評価できる評価制度を作ることで、給与をより上げていくことが重要だと思っている。
そうは言っても、キャリア迷子になる社員は必ず出てくるため、その時点で個別にしっかり対応し、本人の望む道を支援し、再度決めたことに対して、とことん稼ぐ人材になるまで支援することが、結局は会社と社員のwin-winの関係になると思っている。
日本では昭和時代から続いている終身雇用制度を前提とした人事制度を多くの企業は維持してきている。もちろん、全社員が成長し続けているのであれば、終身雇用とは企業にとって最高の形態だろう。しかし、実際には成長を止めている、労働意欲がない、会社の変化に追随しない人材など、様々な社員を抱え雇用を維持している。結果的に多くの企業は昭和時代から現在にかけて衰退をしてきた。
日本は先進国では生産性が最も低い国であり、企業の国際競争力も発展途上国並みになってきていることが証明している。衰退していく企業では、決して社員のキャリアを支援することはできないし、結果として共倒れしかない。稼ぐ人材を育成することに集中し、企業も発展し続け、そして企業と社員のwin winの関係を模索していくプロセスでは、私はセルフ・キャリアドック制度は必要ないと考えている。
これらは会社の価値観の問題なので、正解はないと思う。それぞれの会社の規模、人口構成、価値観に基づいて経営を行なっていくべきだと思うが、今回はあくまで私の価値観を整理してみた。
<2024年7月号アステックペイント定期発行物ホットラインより>
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【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹
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株式会社アステックペイント 代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。
【運営会社】
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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。