今後の鍵となる「塗装職人の多能工化」について

代表コラム 2022.07.08 (最終更新日:2024.01.16)
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最近では原材料費の高騰に伴い、塗料代も含めたあらゆるモノの価格が上がりつつあり、塗装工事の原価は確実に上がっていくと考えられます。

< 住宅塗装工事の内訳 >
■ 塗料代10~20% ■ 足場代10~15% ■ 人工30~40%
■ 経費5~10% ■ 粗利益30~40%

しかしながら、塗装工事の中で塗料代は工事全体の10~20%程度なので、塗料代の値上げの影響より30~40%を占める人工の価格変動の影響の方がはるかに大きいと言えるでしょう。職人不足という背景がありながら、塗装職人の人工が大きく上がっているという話はまだ少ないですが、これから確実に上昇していく傾向にあると考えるべきです。

むしろ今後は、成長している塗装会社には人工代の引き上げを受け入れなければ、新しい施工班が増やせないという時期がいずれ来ることになると思っています。

企業の成長に比例して新しい施工班を増やし続けなければ、成長は確実に止まります。

社会の動向に逆らうことはできません。結果として、全ての施工班の単価アップは時間の問題と考えるべきでしょう。そして、単価アップのために塗装工事の販売価格を引き上げることも今年最大のテーマになると考えます。

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塗装現場の生産性向上

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※イメージ写真

あわせて、もう一つ取り組むべきことは「塗装現場の生産性向上」でしょう。

職人の単価が上がっても「現場の生産性」が上がっていれば、むしろ会社としては利益をより多く残すことも可能となります。特に住宅塗装の現場において、そのチャンスは大いにあると考えられます。
鍵は「塗装職人の多能工化」です。住宅塗装工事では、工事金額の単位が比較的小さいにもかかわらず、塗装、足場、シール、防水、板金など業者が細分化されており、多種多様な職人が出入りします。単位の小さい工事を多数の協力業者に発注することで、実は割高になってしまう工事も必ずあるはずです。

そこで住宅塗装においては、塗装職人がシール、防水、板金工事までできるようになると、協力業者の都合で工事を不効率に段取る必要もなく、また塗装職人の隙間時間を別の作業で埋めることで結果として現場の生産性を上げることができます。

これが意味することは、塗装職人により多くの単価を払いながら、自社の原価を下げることも可能となるWin-Winの取り組みに成り得るということです。

多能工化と職人不足の改善

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※イメージ写真

「職人不足」だと長いこと言われ続けながらも、決定的な解決策は存在していません。「若い人に塗装業界に入ってほしい」と思っても、その術がありません。本当に若い人に塗装業界に入ってほしいのであれば、クリアしなければならない条件があるはずです。

その条件とは次の5つだと考えています。
1) 給与は同世代、および同じような職種と比較して高い
2) 独立できるという選択肢もあれば、社員として残り安定性を得られるという選択肢もある
3) 社会人としての当たり前の社会保障がある
4) 雨の日でも安定的に仕事がある(プライベートの計画が立てられる)
5) 休みが週休二日制である

この条件を実現するためにも「塗装職人の多能工化」は大きな鍵になると思っています。

職人の給与を引き上げることができ、かつ会社の利益をより多く残すことができるからこそ、上記5つの条件をクリアできると思っています。

一方で、多能工化実現のために以下のような障害も多く存在しています。

1) 経営者が自社職人および協力業者の職人に対して教育、もしくは人的投資をしなくてはならない
2) 育成途中においては、工事のスピードが遅れ、工事品質が落ちる場合もある
3) 扱っている物件数が多い場合は、多能工化より専門人員による分業化の方が効率が良い

しかしながら未来の発展のため、また職人の単価アップと現場の生産性向上を実現するためには、ぜひとも「塗装職人の多能工化」を目指していただきたいと思っています。

建設業における多能工の必要性

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※イメージ写真

国土交通省が管轄していた「一般財団法人建設業振興基金」が主導して、建設業界内の業界4団体の会員1,895社に対して行った「多能工に関するアンケート」ではこのような結果も出ています。

一部を抜粋してご紹介します。

 【建設業における多能工の必要性】

 ● 大いに必要 23.8% ● 場面や工事内容によっては必要 65.6%
 ● あまり必要ない 4.5% ● わからない 6.1%

 ⇒ 実に、89.4%の会社が「多能工化は必要」と回答。

 【複数作業を行う人材(多能工)が必要な理由】

 ● 前後工程の他職種工事を一緒に行う方が効率的なため 76.0%
 ● 各職種の工事量が少ないため 52.8% ● その他 多数

塗装職人の多能工化支援

このような状況を踏まえ、この度、アステックペイントでは「塗装職人の多能工化」という課題解決の一環として、職人道場様とタイアップし「塗装職人向けアステックペイントオリジナルカリキュラム研修(防水工事・シール工事・屋根材葺き替え)」の開催を決定しました。

これから第二弾、第三弾と開催を続けていく予定ですので、まずはこの研修を通じて多能工化の第一歩を踏み出してほしいと思っております。


コラム寄稿】株式会社アステックペイント代表 菅原徹

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菅原 徹(すがはら とおる)

株式会社アステックペイント代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

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