屋外給湯器周辺の塗膜の変色に要注意!正しい対処方法とは
給湯器はお湯を供給するために必要な装置で、一般的な住宅でも取り付けられています。
給湯を開始すると、給湯器から排気ガスが出てきますが、その排気ガスが外壁に直接当たる構造になっている住宅では、外壁塗装後に「給湯器の周辺の塗膜が変色している」というお問合せをいただくことがあるそうです。
実際、給湯器の排気ガスが直接外壁に当たってしまうと、その熱や成分によって塗膜が変性してしまい、外壁の美観だけでなく、塗膜の性能にも影響を与えてしまう可能性があります。本記事では、給湯器まわりの塗膜の変色について、メカニズムや対策方法をご紹介します。
実際の事例
汚染が発生した現場の壁や天井を観察すると、給湯器の排気方向に塗膜の変色が確認できます。こういった給湯器の排気は、ご自宅の建物の美観を著しく損ねるほか、排気の方向によっては他の建物にも影響を及ぼし、近隣トラブルにもなりかねません。
事例①
エリア | 群馬県 |
下地 | 窯業系サイディング |
発生時期 | 施工1年後 |
症状 | 給湯器の排気方向の外壁が薄く変色している |
事例②
エリア | 京都府 |
下地 | RC |
発生時期 | 施工半年後 |
症状 | 給湯器の排気方向の壁や天井が黄色く変色している |
変色の仕組み
給湯器の排気ガスには、微量ながら硫黄酸化物が含まれています。 そしてこの硫黄酸化物が、燃焼時に発生する窒素酸化物と一緒に建材に接触することで、建材が変性してしまいます。
さらに、これらの燃焼生成物が結露や雨水に溶けることで、硝酸や硫酸などの酸性液体になり、さらに建材を侵します。また、給湯器の排気口の温度は200℃近くにもなり、塗膜を変質させてしまう可能性が考えられます。
一部引用:不二サッシ株式会社 よくあるご質問(FAQ) https://www.fujisash.co.jp/hp/pdf/faq-28.pdf
変色の改善案
①給湯器の排気が壁や天井に当たらないような位置に、給湯器を設置しなおす。
各給湯器メーカーでは、安全のため以下のような設置基準が設けられています。安全のためにも、建物を保護するためにも、設置基準を厳守して取付けを行いましょう。
②給湯器に延長ダクトや排気カバーを設置する。
給湯器の移動が難しい場合は、延長ダクトや各給湯器メーカーから販売されている排気カバーを取り付けることで、排気の方向を調整します。熱い水蒸気やガスが直接外壁に当たらないようにすることで、塗膜の変色を軽減できます。
排気ダクト周辺におすすめの塗料は
実際に塗膜の変色が発生した現場にて、検証試験を行いました。
検証内容:
それぞれ水性1液、弱溶剤2液の塗料を塗装したA4サイズの塗り板を、給湯器の排気による塗膜変色が発生した現場(事例②)の壁面に設置し、塗料の違いによる塗膜の変色具合を比較する。
期 間:2ヶ月間
使用塗料:水性1液塗料、弱溶剤2液塗料
検証結果:
本検証では、水性1液塗料・弱溶剤2液塗料のいずれも塗膜の変色が発生することが確認できました。その中で、水性塗料よりも弱溶剤塗料、一液塗料よりも二液塗料の方が変色が起きにくいという結果となりました。
考 察:
一般的に、弱溶剤塗料は水性塗料と比べて水に馴染みにくいため、水蒸気の影響を受けにくいとされています。また、1液塗料は樹脂同士が融着(物理的にくっつく)して塗膜を形成しています。それに対して、2液塗料は樹脂同士の物理的な繋がりに加え、架橋反応(化学反応による結合)をするため、塗膜がより緻密になります。
以上の結果から、給湯器による影響が懸念される箇所では、弱溶剤2液塗料などの仕様組みが一つの対策に繋がります。
まとめ
給湯器のガスや水蒸気による塗膜の変色は、塗装だけで対処するのが難しい不具合です。
①給湯器の排気が壁や天井に当たらないような位置に、給湯器を設置しなおす。
②給湯器に延長ダクトや排気カバーを設置する。
契約前の事前調査で、給湯器周辺に塗膜の変色が見られた場合はご注意ください。
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この記事の監修者と運営者
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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株式会社アステックペイント
谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。