塗装中に車に塗料が付着した|意図しない箇所に飛散・付着した塗料の処理方法

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塗装作業中に塗料が飛散して、意図しない箇所に付着したという経験がある方も多いのではないしょうか。スプレーによる吹付けはもちろんのこと、ローラーを使用する際も塗料が飛散もしくは垂れることで、外壁や床、車などに付着することがあります。

また、養生に不備があると、周辺に塗料が飛散・付着した際、取り返しのつかない事態につながることもあります。

そこで今回は、塗料が飛散・付着してしまった際の事例や適した処理方法と養生方法をご紹介いたします。

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塗料が飛散・付着した事例

①飛散した塗料が車に付着

現場北海道札幌市内にある建設現場
状況高さ100メートルの煙突の塗装工事中に塗料が飛散し、近隣に止めていた20台以上の車に白い塗料が付着した。
原因養生等の飛散防止措置をとっていたが、煙突上部の風が強く、想定を超えて飛散した可能性が高い。

②飛散した錆が車に付着

現場山口県下関市の施設
状況職員3人が転落防止用の手すりについた錆を研磨機で落とす作業を行った。
その後、錆が飛散し、近く自動車販売店で取り扱う新車や中古車など、80台以上に付着した。
原因養生等の飛散防止措置をとっていたが、研磨機を使用したことで想定以上の量の錆が飛散した可能性が高い。
結果被害車両の原状復旧のための修繕費用や代車費用など、あわせておよそ1400万円の賠償金の支払いが発生。(そのうち1000万は保険で賄われた。)

上記の事例のように飛散防止対策を行っていたとしても、周辺に被害をもたらすことがあります。また、正しい飛散防止対策の知見がないと最悪の場合、損害賠償請求などのトラブルを引き起こすこともあります。

このような事態を防ぐために、塗装工事で意図しない箇所に塗料を付着させてしまった際の処理方法や正しい養生方法を知ることは必要不可欠です。

また、事前に賠償責任保険※1へ加入することを推奨します。➁の事例のように保険に入っておくことで万が一のトラブルに備えることができます。

※1賠償責任保険
他人の身体やモノに意図せず損害を与え、法律上の賠償責任を負った場合、その損害を補償する保険のこと。
・保険内容は、保険会社・契約条件などによって異なります。
・保証金額や補償内容(オプション等)は、事業規模に合わせて選びましょう。

飛散・付着した場合の処理方法

付着した塗料の処理方法として、以下の方法があります。

➀膨潤させる
②溶かす
③削り取る
④分解する

➀膨潤させる

1つ目の処理方法は「膨潤させる」ことです。

この方法は、水やお湯を使用します。他と比較して塗料は取れにくいが、下地や旧塗膜を最も侵しづらい処理方法です。塗料が付着して間もない段階では水拭きを試し、除去しきれない場合はお湯拭きで膨潤させます。

※2膨潤とは、物質が溶媒(水など)を吸収して体積が増加する現象のこと。塗装では、塗膜に水やお湯などが染み込むと、ふやけて軟化したり、付着力の低下などを引き起こすことがある。

➁溶かす

2つ目の処理方法は「溶かす」ことです。

この方法は、塗料用シンナー・ラッカーシンナーを使用します。塗料を溶かすため、膨潤と比較して除去しやすいです。しかし、この方法は下地や旧塗膜を侵し、艶引けなどを引き起こす危険性があるため注意が必要です。

※ラッカーシンナーは塗料用シンナーと比較し、溶解力が高いため、より注意が必要です。

➂削り取る

3つ目の処理方法は「削り取る」ことです。この方法は、成膜した塗料を削って除去します。削り取るため表面の塗膜は確実に除去できますが、この方法は下地や旧塗膜を傷つけてしまう危険性が高いため注意が必要です。

➃分解する

4つ目の処理方法は「分解する」です。この方法は、剥離剤を使用します。剥離剤は樹脂の結合を切断することで塗膜の剥離を促します。今回紹介した処理方法の中で最も強力ですが、剥離剤の種類や取り扱いによっては下地や旧塗膜を傷める危険性が高いので注意が必要です。下地や旧塗膜との相性のよい種類の剥離剤を選定することが重要です。

※剥離剤の種類によっては、人体や環境に影響を及ぼす成分が含まれている可能性があるため、保護具の着用や廃棄方法等を、取り扱いのメーカーに確認して、ご使用ください。

処理方法を試す手順

もし、意図しない箇所に塗料が付着した場合は、以下の順番で処理を進めてください。
※下地を侵さないかどうか、目立たない箇所で上記の順に試してから、処理方法を決定・実施してください。

➀車・窓サッシ・給湯器など
塗料が染み込まないため、付着した塗料を膨潤させるお湯拭きか塗料用シンナー拭きで除去

➁犬走り・コンクリート床など
付着した塗膜は軽く削り取った後、染み込んだ塗料をラッカーシンナーで拭き、溶かして除去
※付着した塗料が「取れない」・「下地を侵す」場合は専門業者へ依頼しましょう。

付着を防ぐための養生方法

ここまで、意図しない箇所に塗料が付着した際の処理方法を紹介してきましたが、事前の養生作業も大切です。養生をしっかり行うことで、意図しない箇所への塗料の飛散や付着、近隣への被害、トラブルなどを事前に防ぐことができます。  ここでは、塗料の飛散・付着が予想される場所への適切な養生方法を紹介いたします。

➀車の養生

汚れや傷がつかないようキレイなカバーで養生
※近隣の車は近隣の方に了承をいただいてから養生
自動車養生カバーは「不織布+ビニール」・「不織布」・「ビニール」を適宜使い分ける。

養生方法注意点
不織布のみ・塗料や汚れが不織布を貫通してしまう可能性がある
ビニールのみ・車に傷がつく可能性がある。 ・炎天下の環境では、ビニールが車体に張り付いて跡がついてしまう 可能性がある。(濡れた車に養生した場合)

➁開口部

ドアや窓は開閉できるように養生

➂給湯器や室外機、換気口の養生

給排気箇所はふさがないようにする。※最悪の場合、室内で中毒を引き起こす。

➃犬走り・コンクリート床の養生

ブルーシートやノンスリップシートを引き、テープ等で固定する。

➄建物全体の養生

ハトメに緩みがないように結ぶ。

まとめ

塗装作業中で、意図しない箇所に塗料が飛散・付着した場合、トラブルを防ぐためには、適切な処理方法を知ることが重要です。適切な処理方法を行うことで、トラブルのリスクを大幅に減らすことができます。さらに、事前の養生作業をしっかり行うことでさらなる効果を期待できます。

また、事前に賠償責任保険へ加入することを推奨します。加入することでトラブルが発生した際に備えることができ、損害賠償請求などの大きな負担を避けることができます。

正しい情報をもとに対策することで、安全で品質の高い塗装作業を行いましょう。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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