塗布量と塗膜厚の関係について正しく知ろう
戸建て住宅の塗り替え工事において、屋根や外壁などの㎡数に合った必要量の塗料を塗装することは、塗り替え塗料の性能を最大限発揮するためにとても重要です。
塗料の規定量を示す言葉として、「塗布量」や「塗膜厚」などがありますが、皆さまは「塗布量」と「塗膜厚」について、正しく理解できていますか?
塗布量は、適切な塗膜厚を確保するために重要な数値で、塗装の品質を左右する鍵となります。そこで今回は、アステックペイントが基準としている塗布量と塗膜厚の関係について詳しく紹介します。
塗布量とは?
塗布量とは、㎡当たりの塗料の使用量を示す値で、通常kg/m²またはm²/ℓで表されます。
塗料の性能を発揮し、きれいに仕上げるために必要な「塗着量」と塗装作業時に塗着しない損失分(塗装ロス)を合計した量が設定されており、塗装工事において必要な塗料量の見積りや、適切な量の塗料を使用するために重要な指標です。
たとえば、塗布量が「0.30㎏/㎡」である製品では、1m²あたり0.30kgの塗料が必要することを表しています。この塗布量に従って塗料を使用することで、塗料の性能を十分に発揮することができます。
塗布量計算方法について
ここで、実際の製品を例に挙げ、塗布量から必要な塗料の缶数を計算してみます。
例) シリコンREVO1000-IRを150㎡の窯業系サイディングに塗装する場合
これは塗料缶や製品カタログに記載されている仕様書で、この製品では「0.25~0.35kg/㎡(2回塗り)」の塗布量が必要だと分かります。
塗り平米(㎡)は150㎡であるため、必要塗料を計算すると以下のようになります。
150㎡× 0.30kg/㎡= 45.0 (kg)
よって、45.0 kgの塗料が必要だと分かります。
シリコンREVO1000-IRは1缶15kgですので、
45.0kg ÷ 15kg/缶 = 3缶
以上から、3缶が必要ということが分かります。
つまり、この塗装現場では3缶分の塗料を塗る必要があるということがわかります。
ただし、実際には下地の凹凸や吸い込みにより、計算値よりも多い材料が必要になることもありますので、施工する現場の状況に応じて、しっかりと塗布量が確保できるよう、注文缶数を調整してください。
塗膜厚とは
塗膜厚とは何でしょうか。塗膜厚とは、塗装完了後の塗膜の厚みのことで、µm(マイクロメートル:1mmの1000分の1)で表されます。塗布量と同じく、塗膜厚は塗料の性能が十分に発揮されるために重要な要素で、一定以上の塗膜厚が確保されていないと、塗料本来の性能が発揮されないリスクがあります。
塗布量と塗膜厚の関係は?
一般的な戸建て住宅で使用される外壁材(窯業系サイディング・ALC・モルタル壁など)や屋根材(平板スレート瓦・セメント瓦など)では、現場で塗膜厚を正確に測定することが非常に困難です。
正確な測定が難しい理由としては以下のようなものが挙げられます。
・下地の種類や模様、劣化度合いなどの様々な要因から、塗装した塗膜厚が不均一になるため。
・非破壊での塗膜厚測定方法が確立されていないため。
そのため、各塗料メーカーは製品ごとに「規定塗布量」を定め、適切な膜厚を確保するために必要な塗布量の基準を設けています。
つまり塗布量とは、「塗料の性能を十分に発揮できる膜厚を確保するために必要な塗料の量」だと言い換えられます。
規定塗布量:製品の比重や固形分の割合を元に、理論膜厚(塗料が期待される性能を十分に発揮できる膜厚)を確保できる最低限の塗布量のこと。
ただし、劣化して吸い込みが激しい下地の場合、規定塗布量では不足することがあります。そのため現場の状況を見て、実際に必要な塗布量を判断することが重要です。
適切に塗装工事がされていたかを証明するには
塗装工事が適切に行われていたかの基準の一つは、「規定塗布量分の材料を使用しているかどうか」です。これを証明するためには以下の手順が有効です。
施工工程の記録:各施工工程を逐一撮影し、書面で記録する方法
使用材料の写真や、塗布前後の塗料の重量を比較した写真等を残しておくことにより、工事後に各工程が適切になされていたかを証明することができます。
空き塗料缶の保管:完工まで使用材料の空き缶を保管しておく方法
完工までに使用した塗料の空き缶を保管し、塗料使用量の証拠とすることで、適切な塗布量が使用されたことを証明できます。
これらの方法を採用することで、施主様に対して適切に工事が行われたことを示し、信頼性を高めることができます。写真や記録を活用することで、後々のトラブルを防ぐための証拠にもなります。
まとめ
本記事では、塗布量と塗膜厚の関係について詳細に解説をしました。最後にご紹介した塗装工事が適切に行われているかの証明方法は、塗装工事後のトラブル防止に役立つだけでなく、会社の施工の信頼性を高めるために有効な方法です。皆さまの現場でもお役立てください。
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この記事の監修者と運営者
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。