貼りタイルのエフロレッセンス(白華現象)の除去方法を徹底解説

外壁製品名 2022.05.30 (最終更新日:2024.10.09)
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戸建住宅や集合住宅など「貼りタイル」を使用している物件の建物調査の際、貼りタイル目地のモルタルから白い汚染物が発生している状態を目にしたことはありませんか?

その白い汚染物は「エフロレッセンス(白華現象)」と呼ばれています。

今回の記事では「エフロレッセンス(白華現象)がなぜ発生するのか?」という発生原因から、除去方法、除去後の貼りタイルの改修方法について詳しくご説明いたします。

貼りタイル物件にてエフロレッセンスが発生した際の対策方法について知りたい方はぜひご覧ください。※白華現象を、以下「エフロレッセンス」と表記します。
※「エフロ」とはエフロレッセンスの略称であり、意味は同じです。

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エフロレッセンスの発生メカニズム

エフロレッセンス
エフロレッセンスの様子

エフロレッセンスとは「セメント成分を含む下地材に発生する特有の汚染現象」です。

セメントを主成分とする目地モルタルに含まれる余剰のカルシウム成分が、ひび割れ・隙間などから浸入した雨水に溶け、水酸化カルシウムとして染み上がります。
これが建材表面で空気中の二酸化炭素と反応して、白い析出物(炭酸カルシウム化)となる現象のことをエフロレッセンスと言います。

このエフロレッセンスの除去が不十分な状態で塗装工事を行った場合、塗料の付着不良の原因となる可能性があります。

エフロレッセンス
エフロレッセンスが発生するメカニズム

貼りタイル物件の改修工事で使用するもの

貼りタイル物件を改修工事する上では洗浄剤・目地部の吸水防止剤を使用しましょう。本章では、下地の洗浄から塗装工事までに使用する備品・塗料をご紹介します。

種類 製品名 用途 特徴

酸性洗浄剤

ハッカトル(塩酸系)

エフロレッセンス除去用の酸性洗浄剤

エフロレッセンスを溶かす効果に優れている。

洗浄剤のケレン道具

スコッチ・皮スキ・ダイヤブラシなど

物理的にエフロレッセンスを除去する

洗浄剤の塗布前後で、物理的にエフロレッセンスを削り取ることで、洗浄時間を短縮できる。

中和剤

ソフター(水酸化ナトリウム系)

酸性洗浄剤使用後の中和処理をする

貼りタイルや目地モルタル表面をアルカリ性に戻す効果がある。また、酸による貼りタイルの焼けを予防する。

高圧洗浄

溶けたエフロレッセンスと洗浄後の洗浄剤や中和剤を洗い流す

溶けたエフロレッセンスや洗浄剤が残存している場合、塗料と反応して不具合につながるため、洗い流して予防する。

その他

保護具(※)

洗浄時に酸性洗浄剤や中和剤の皮膚への付着を防ぐ

耐薬品性(酸性・アルカリ性)がある保護具を使用する。

塗料

ジョイントシールド

タイル目地のモルタルからの吸水防止剤

タイル目地のモルタルへの雨水の浸入を抑制し、貼りタイルの浮き・剥離・剥落など防ぎます。
エフロ防止剤として効果を発揮する塗料です。

※洗浄剤(強酸性・強アルカリ性)を使用するため、必ず適切な保護具(防毒マスク又は送気マスク・保護メガネ・不浸透性の保護手袋・保護衣・長靴等)を着用の上、洗浄作業および高圧洗浄を行ってください。

貼りタイル物件の工事の流れ

本章では、エフロレッセンス除去から目地モルタル専用吸水防止材「ジョイントシールド」を塗装するまでの流れを説明します。エフロレッセンスが発生した際の対策方法として参考にしてください。

作業内容詳細
①洗浄箇所周辺の養生ハッカトルは塩酸系の強酸であり、養生の隙間などから酸性洗浄剤が入り込んだ場合、ガラス・アルミサッシ・金属等を腐食させる恐れがあります。
そのため、ハッカトルが付着する可能性がある箇所を中心に養生作業を行います。
また、芝・植木等は枯れる恐れがありますので、近くで作業するときは必ず養生を行ってご使用ください。
②エフロレッセンスの除去作業予め洗浄箇所周辺に水(ホース・バケツなど)を吸収させることで、目地の保護(養生)を行います。
ハッカトル(原液)を刷毛などでエフロレッセンス発生箇所に塗布し、5分程度放置します。
※ケレン道具(推奨:スコッチブライト(3M 7447)、皮スキ)の併用によって、作業時間が短縮できます。
※エアレス・スプレー・噴霧器等による施工は、ハッカトルが飛散するため使用しないでください。
 近隣の車・ガラスなどに付着すると、クレームに繋がる可能性があります。
※エフロレッセンスを除去する洗浄剤として「ハッカトル」を推奨していますが、貼りタイル全面を洗浄する場合は「ビートル」という酸性洗浄剤もありますので、使用される際はお問合せください。

またエフロレッセンスの発生が激しい場合、「洗浄剤塗布前のケレン作業」を推奨いたします。
物理的に皮スキやダイヤブラシなどで、可能な限りエフロレッセンスを除去することで、洗浄に要する作業時間を短縮できます。その後、エフロレッセンスの粉や汚れを取り除きます。
③洗浄箇所周辺の水洗いハッカトルを塗布して5分程度経過したら、洗浄箇所周辺に水をかけて酸を薄めます。
※ハッカトルを塗布して5分以上経過した場合、酸によって貼りタイルが焼ける可能性があります。
※水をかける際に高圧洗浄機を使用した場合、ハッカトルの飛散が懸念されます。
加盟店様の事例として、飛散対策としてホース・バケツに水を汲むなどの対応をされています。
※エフロレッセンスが落ちにくい場合
「②エフロレッセンスの除去作業、③洗浄箇所周辺の水洗い」の工程を繰り返してください。
④中和剤の塗布ハッカトル塗布箇所に水をかけて酸を薄めていますが、貼りタイル面の焼けを防ぐには不十分であるため、中和剤(強アルカリ性)のソフターを塗布します。
また、芝・植木等は枯れる恐れがありますので、近くで作業するときは必ず養生を行ってご使用ください。
⑤洗浄箇所周辺の水洗いソフター塗布後は、塗布箇所のみ水をかけてアルカリを薄めます。
※水をかけてアルカリを薄める前に高圧洗浄を行いますと、ソフターの飛散が懸念されます。
加盟店様の事例として、飛散対策としてホース・バケツに水を汲むなどの対応をされています。
⑥建物全体の高圧洗浄通常通りの高圧洗浄を行います。
⑦吸水防止材の塗装目地モルタルを中心にジョイントシールドを刷毛・ローラー・噴霧器などで塗装します。
ジョイントシールド塗布の目的は、撥水ではなく、雨水をコンクリート内部に浸入させない防水層の形成です。
ジョイントシールドに含まれるシラン成分がセメント下地に含まれる砂(ケイ素)と反応し、雨水の浸透を防止し、下地の劣化(凍結による貼りタイルの浮き・剥離・剥落など)を抑制します。
※モルタルの砂成分とジョイントシールドは反応するため、貼りタイル・シーリングに塗装されたジョイントシールドは反応することなく揮発します。
エフロレッセンス2
ジョイントシールドによる吸水防止層の形成イメージ

ジョイントシールドの施工上の注意点

ジョイントシールドを使用する上では、次のような点に注意して施工しましょう。

注意点① 冬季施工の場合、「吸水防止効果の発現の遅延」・「水の染み込み」が発生する場合があります。
低温状態でジョイントシールドを塗装した場合、数日経過しても吸水防止効果が発現せずに目地モルタルが濡れ色になる場合があります。
ジョイントシールドによる防水層は化学反応によって形成されるものであり、下地のアルカリ度(pH)が低い、温度が低い、目地モルタルが劣化しているような状況であれば防水層の形成が遅くなる傾向があります。
【事後対策】
不具合発生箇所に対して、部分補修を適宜行います。
注意点② 中和剤(ソフター)が残存した場合、ジョイントシールド塗装後のべたつきが発生する可能性があります。
ジョイントシールドは、アルカリの環境下で反応が進みやすい傾向があります。そのため、貼りタイル面に中和剤(アルカリ成分)が存在すると、ジョイントシールドが反応して濡れ色になりべたつきが発生します。
【事後対策】
シンナーによる雑巾がけ もしくは 希釈した酸性洗浄剤にて洗浄します。その後、水洗いを行ってジョイントシールドを再塗装します。

ジョイントシールドの施工時の不具合事例

対策方法

ジョイントシールド塗装後に汚れが発生

汚れの原因

エフロレッセンスを酸性洗浄剤で除去し、水洗いを行わずにジョイントシールドを塗装したため。
エフロレッセンスが溶けた酸性洗浄剤の乾燥によって、エフロレッセンスが薄く延ばされたような状態になります。そのため、下記写真のような白く靄がかかったようになったと考えられます。

対策方法

酸性洗浄剤で汚染箇所周辺を洗浄し、水洗いを行い、十分に乾燥させた上でジョイントシールドの再塗装を行いました。

エフロレッセンス事例

まとめ

今回の記事では、白華現象の発生メカニズム、その除去方法、除去後の貼りタイルの改修方法についてご説明いたしました。戸建住宅や集合住宅などでタイル貼り物件の改修工事の際は、ぜひご活用いただければと思います。

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【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

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谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
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AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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