【職人不足の救世主】「職人道場」創設者に聞く! 即戦力職人を次々に生み出す教育の極意とは?
※本記事は上記動画の内容を一部編集しています。
・トークゲスト: 小山宗一郎 様(株式会社メガステップ 代表取締役)
・MC:菅原 徹(株式会社アステックペイント 代表取締役)
・MC:中村 浩一(株式会社アステックペイントフィールドエンジニア部 部長)
・MC:関 勇輝(株式会社アステックペイント 大阪営業所所属)
・MC:秀島 舞(株式会社アステックペイント 大阪営業所所属)
目次
【登壇者紹介】株式会社メガステップ 代表取締役・職人道場創設者 小山 宗一郎様
株式会社メガステップ様は、東京都品川区に本社を構え左官・防水工事を中心とした加納工事業を展開されている会社様です。
代表取締役を務められる小山総一郎様は、職人不足・高齢化など、建設業界における長年の課題を解決するために、栃木県那須塩原市に職人研修施設「職人道場」を創設。
左官、クロス、内装、各種リフォーム工事など職人を即戦化するオリジナル研修プログラムは大変好評で、専門工事、元請け企業、健在メーカーなど全国多くの建設事業者がサービスを利用されていらっしゃいます。
また事業の傍ら、一般社団法人建設職人甲子園の初代理事長を務められるなど、業界の課題解決のために奮闘されています。
オープニングトーク
菅原徹(以下、菅原):実は昨年一度、職人道場さんに訪問したことがあります。
その時にびっくりしたことなのですが、設備の大きさとか充実度もとても素晴らしかったのですが、小山社長と小山社長を支えるスタッフの情熱が半端でなくて、人生をかけて取り組んでいる姿に本当に感銘を受けました。
今回、アステックペイントとして職人道場さんとタイアップさせていただくことになりました。私として期待したいことは、塗装職人の多能工化です。
過去30年間、塗装職人の生産性は全く上がっておらず、結果として給与水準も全く上がっていません。今のままであれば、塗装職人の給与が上がることはまずないと思います。
しかしながら、同じ現場で塗装職人さんが様々な仕事ができるようになれば、その職人さんの給与を上げることが可能になるはずだというふうに私は思っています。
すなわち、それは多能工化がその鍵を握っているというふうに思っております。
職人道場とは?
小山宗一郎様(以下、小山社長): 職人道場の創設の前に、中学を卒業して、その時スーツを着て人にペコペコ頭を下げるのが嫌だという思いがありました。勉強も嫌だったしで、ただそれだけで職人の世界に飛び込みました。
一生懸命仕事を覚えて、隣の先輩とかをどんどん抜かしてこうと努力をして。
16歳から左官の業界に入ってくるんですけど、5年ぐらいした時には、もう大体誰にも負けないぐらいの速さと綺麗さっていうので塗っていって実力を身につけていきました。
22歳の時にこのメガステップって会社を作って、そこから3年間ぐらいで社員が120人ぐらいになってくるんですね。
その時に、社内がすごく愚痴だらけの、離職率が半端じゃない会社になっていって。
今から振り返ると、なんでそうやって120人になっていたかっていうところに、自社研修所っていうのを作ったんですよ。これが職人道場の前身になるんですけど。
自社研修所を作って技術を短期間で教えて。自分の会社だけにあう研修技術だけを教えて、すぐ現場に送り込んで、出来高を現場で叩いてこられる職人を育てられる研修所っていうのがあったので、人はどんどん入ってくるし、利益もめちゃくちゃ出るのですごい良かったんです。
良くて、良くてどんどん人を増やしていくんですね。気が付いたら120人ぐらいに3年間ぐらいでなっていって、利益もめちゃくちゃ出るし、っていう形になってくんですけど、そこから大反発を受けるんですね。
今から振り返ると、金儲けの手段にしていた職人を。要は、会社が儲けるために人を育てて働かせていた。だから「働かないやつはいらない」ぐらい思っていたと思います。
僕の中ではものすごい強烈な経験で、本当に人を大切に、人を育ててくっていうことが、当時やっていた研修施設にはなかった。
人を、利益を出していくための手段としてだけ育てるっていうことに重視していたってことにも気づいたので、今の職人道場っていうのはしっかりと安心して働いていくために技術を覚えていく場所っていう。いろんなものを組み合わせてやっていきたい道場の内容になっています。
だから、幸せに働くことができる人生を歩むことができる。そういう初めの1歩っていうところがこの職人道場になったらいいなって、そんな思いで作らせていただきました。
一問一答
Q.職人道場で実施をしている研修内容とは
小山社長:職人道場はどちらかというと技術。知識というより技術。
「これやって」って言われたら、「わかりました」って体が勝手に動いていくっていうのに重きを置いてやるような形にしています。
だから、どちらかと言ったら先輩の職人さんがいる元で、「ここからこうやって養生して」って言われたら、「わかりました」って。もう手直しのないパパパパってやるように育てるイメージ。
この努力って単純なことをひたすら繰り返していくっていうことだと思うので、たとえば、スイミングスクールっていうのは、子供は水が怖い。だからまず水に5秒間顔をつけられたら「はい、合格」って言って、なんかワッペンをもらえる。
バタフライができたら、またワッペンとか。バタフライができるようになるまで、300個ぐらいろんなワッペンをもらえて。
そういったスイミングスクールのイメージをちょっと取り入れて、研修プログラムとかを作っているような、そんな育て方です。
菅原社長:大体研修って1ヶ月ぐらいだと思うんですけど、実際に1ヶ月終わって現場に入ったあとの職人道場さんに対する評価ってのは、どのような声が多いんですか。
小山社長:この技術っていうことを本当に突き詰めて、カリキュラムもスイミングスクールのように50個とか80個とかの試験があるんですね、1ヶ月の中に。
1か月で25日なので、50個あったら1日2個試験合格していかなきゃいけない。そのぐらいカリキュラムを色々研ぎ澄ましていって。
それからお客様に卒業生はどうでしたかって後から聞くと、「よかった」「明るくなって帰ってきた」「元気になって帰ってきた」って、「別人になって帰ってきた」って言うんです。
「技術はどうですか」って聞くんです。「いや、そんなことよりも人が変わって入ってきた」って。来るお客さん来るお客さんがみんなそうやって言ってくるんですよ。
なんで技術の学校なのに、技術褒めてくれないんだろうみたいな。
要は試験に合格して「よっしゃできた!」。できなかったら、すごい悔しい思いをしてひたすら頑張って、自分ができるようになって「できた!」っていう、これを1か月の中に50回とか小さい成功体験を積んでいくんですね。職人道場の中で。
例えば左官入ってきた子は「本当に僕、この壁を塗れるようになるんですか?」って言って入ってくるんですよ。最初与えられるのはコテを回すとか。1分間に60回回せとか、こて返し1分間に何十回とかって。「こんなことをやって、本当に僕塗れるようになるんですか」って。
でもその1つ1つに合格して「よっしゃ!」っていった先に、本当に塗れるようになっていく。
もの作りの楽しさって「なんかできなかったことができるようになった」。
この喜びって誰でも楽しいし、嬉しいし、これを細かく積み重ねていった時のエネルギーっていうかパワー。これが職人道場で、お客さんもすごく喜んでくれています。
そういう声が1番多いですね。
Q.職人教育において、経営者が気を付けるポイントとは
小山社長:とは言っても、社長は自分会社の業績を伸ばしたい。売り上げを伸ばしたい。
そのために人を入れてこよう。人を大切にしていこう。そういう姿勢で職人道場とか送り込んでくれるんですね。
だけど、その会社で働く職人さんとかは全然違うことを考えているんですね、社長と。
要は、抜かされちゃうとか。自分が3年かかって覚えてきたことを、新人のこいつは1ヶ月で覚えて3ヶ月でできるようになって「みんなにちやほやされてなめんなよ」みたいな。
1か月、職人道場で学んできたとは言っても、架空の場だし、たった1ヶ月だし、現場のことだって知らないし、わかっていない。そういう子が会社に戻ってからどれだけ暖かく、応用力を伸ばしていってあげられるかっていう。
この見守り、要は会社に戻ってから、どうその子を引き延ばしてあげられるかっていうことで大きく成果が変わってくると思います。
下手したら逆に潰されてっちゃう。せっかく頑張ろうと思って帰ってきたのに、「お前、職人道場行ってきてこんなもんかよ」とか。
毎日一緒にいる先輩が、その新しい新人にどう接するかっていうことで、その芽が積まれるのか、それともめちゃくちゃ活躍して、未来の担い手っていうか会社の中の基盤人材に変わっていくのかっていうのは、この現場で一緒につく職人さんにものすごくかかっているんじゃないかっていうふうに思います。
Q.塗装職人を多能工化するための秘訣とは
小山社長:職人さんが多能工をしていくっていうことは、本当に難しいことなんじゃないかなっていうふうに思っています。
それはまず、新しいことを覚えるっていうのは企業側からすると投資にあたるし、ベテランになればなるほど、人にもよりますけど、新しいことを一からまた覚えるっていうことは嫌だっていう人もいるだろうし。
だけど、今どんどん同じようなことができる人が増えていって、この差別化、あと新しい時代がどんどん変化していく中で新しいニーズを捉えて必要とされる企業になっていくには、多能工化っていうのが必須だと思うんですね。
やっぱり塗装の仕事と交わる、屋根だったりとか防水だったりとか、もしかしたら左官だったりとか。
そのより売上げ利益につながる次の技術、向こう3軒両隣りなのかもしれないし、これは本当に利益を生むんだと思うんですね。
そういうちょっと大きなスパンで考えた時に、そこにかかる投資の期間っていうのは、今変わっとけば隣の会社と比べてもすごい差ができると思います。
この多能工化、多能工化って言うけど本当に難しいから、なかなかそれをできる会社っていないと思うんですね。そのぐらい途中で妥協したくなる。
途中で妥協したくなる人が多ければ多いほど、圧倒的に有利なポジションに取れる。だからこれはすごいチャンスだと思っていて、じゃあそこにどうやって行くかっていうのはやっぱり研修しかないんだと思うんですね。
この多能工化させる秘訣っていうのは、本当だったら現場に行って売上げ、その職人さんが今日何㎡とか、この現場を終わらしてくるとかっていうところに行かしたいところを、ぐっと我慢をして。今度、屋根に手を出してみるとかっていうところに配置をして、教育をして、進めていくことによって、1つの現場で売り上げが今までの倍。100万だったものが200万になると。
そうしたら今度管理も楽だし、新しい人を入れてきた時に見ていく、そういう管理っていうのもすごく効率も良くなるだろうし、1つのこの現場終わったら次、こっちの現場に行かなきゃいけない。でも1つの現場で、1人でも多くの人がちょっとでも長い期間入れる。
こんなに段取りを組む上でも楽なことはないんだと思うんで、まず決めることだと思うんですね。
最低でも1年間と決めてやり続けると芽が出てきている感っていうのは、結構あります。
菅原社長:実際、多能工化は非常に難しいっていうお話だったと思います。
その中で重要なことはまずその経営者が絶対多能工化するっていう覚悟を持ってやるって決めるっていうこと。そして、最低でも1年以上はやり続けるということは1番重要だというお話だったと思うんですよね。
その上で、自ら新しい技術を覚えたいっていう職人さんが職人道場に来て、ある程度技術を覚えていく。だけどその職人さんってのはある程度技術を覚えるだけであって、決してその現場を収めることはできない、っていう。
その後、会社に戻っていくとことになると思うんですけど、その会社の職人さんをしっかりとした1人前の多能工に育成するためには、まずどの取り組みが必要になるんでしょうか。
小山社長:やっぱり本当に、熟知している、いろんな建物を経験をしてる人と一緒に収めていくというのがベストだと思うんですけど。
そのパターンとして、自社にそういう職員さんがいない場合は採用するのか、もしくは今いる仕入れ先っていうか外注さんにお願いをするしかないと思うんですね。
ただ外注さんに頼むにしても、その外注さんは仕事をもらっている側からそういうことを頼まれるってことは自分たちの仕事がなくなっちゃうんじゃないかっていうふうに陥ると、なかなか協力って得られづらいと思うので、それを成り立たせる方法としてはやっぱりその外注さんに自分とこに教えてもらう代わりに「こうこう、こういうことでなんとか協力してもらえないか」っていう。引き換え条件じゃないけど。
自分とこの会社がそれをどうしても内省化したいんだったら、それはもう知恵を振り絞ってでも気心あう、そういう近い会社さんに頼み倒すってことが1番の方法だと思います。
その多能工化したい職種がボリュームがあるのであれば、例えば塗装工事で100万円で、その多能工もう1つの仕事として100万円とかってあるのであれば、1人を採用して職人道場に新人を、給料の安い子を送り込むことによって、ベテランの職人とこの研修を受けて1人で納められないけど技術を覚えた新人とをセットにしてすごく出来高が叩けるコンビを作ることによって、すごい最短で出来高を叩いてくることができると思います。
菅原社長:それではもう1つ、質問です。多能工化の難しさを十分理解したつもりなんですが、今まで多能工化で成功した事例を塗装職人に限らずでも構いませんので教えていただけますでしょうか。
小山社長:職人道場で1番多いパターンは、ユニットバスの新しいリフォームで、これは解体工事をして、電気設備して、ユニットバスを組み立てて、造作をして、ボードを張って、クロスを張って床を張るっていう仕事が。これを2日間でできるようになると。
今までユニットバス職人だと2万円してくるのがやっとなんですね。朝から5時まで働いているとだけど、それが一気に7万円ぐらいになってくる。
でも、逆を返すとその狭い空間でクロス屋さんが手待ちになっていて。ちょっと張りに来ても1~2時間で終わっちゃうような、そういう床屋さんが来てっていうのを考えると、お客さんからしたらものすごく安くて済むし、工期も短縮できるしって喜ばれる。これが今1番ニーズが多くてですね。
外壁とかになると、タイルを張り替えてシール、防水をして。あと、調査、打診調査をしてとかっていうことを全部できることになることによって大きい現場だったら1つの仕事だけで成り立つと思うんですけど、細かい部分に関しては、もう1人で行ったら、全部できちゃいます。
仕事を売上げをどんどん伸ばされている企業さんとかもいますし。
今回、アステックペイントさんで言うとやっぱり屋根とか防水。難易度的には、そんなに難しくないと思うので、そういうところを、近いところをやっていくことによって外に出ていくお金が全部、自分の会社の中で自分と職人さんでできるっていうことのメリットってめちゃくちゃでかいと思うので、挑戦されてみたらいいんじゃないかなと思います。
塗装業界へのメッセージ
関:最後のお知らせですけれども小山社長の方も、YouTubeで職人道場の普段の様子とか色んなバラエティーに富んだ動画をアップされています。
「こやさんTV」というお名前で検索をいただくか、以下にURLを貼っておりますので、皆さん、そちらもぜひご登録をだければと思います。
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■こやさんTV https://www.youtube.com/user/Koyamamegastep
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最後になりますけれども、見ていただいている方に向けて、小山社長より熱い熱いエールをいただければ、と思います。よろしくお願いします。
小山社長:多能工って、本当に難しいと思います。それは何に手を出すかで、塗装屋さんが大工に手を出して、これはもうほんとに大変なことになると思います。
ただ今回の、このアステックペイントさんの専用研修のように、屋根のカバー工法でしたり、シール防水でしたり。すぐ身近にあって、もしかしたら今の管理体制で品質管理までできちゃうような、すぐ身近にあるものだったら、ほんとに職人道場をうまく生かすことによって超短期間で成果、利益まで生むことが可能だと思います。
そういう形でまず1個ずつやれる職種を増やしていくって、一気に多能工っていうよりかは1つずつ身近なところから増やしていくっていうことで、みんなで明るい未来を作っていけたらいいなと思います。
菅原より一言
菅原社長:1つ明確に理解できたことは、多能工化はとても難しいということは十分理解できました。
しかしながら、もう1つ明確に理解できたことは、だからチャンスであるということも理解できました。
他社がなかなかできないことだから、ここに生き残りのチャンスがあるということだと思います。
そして、多能工化の成功の鍵は経営者の覚悟ということなので、もう、経営者がやると決めて成功するまでやり続けると、とてもシンプルなことだというふうに私は思っています。
幸いにして、職人道場さんとのタイアップが決まりまして、職人さんを育成できる場がある。そして小山社長からアドバイスがもらえる環境にある。このような環境がありますので、ぜひとも活用いただきたいというふうに思っています。
他社ではなかなかできない多能工化を育成できる環境があれば、新しい技術を身につけることができ、職人さんの給与を上げることができて、結果として新しい職人を採用できる。良い循環が生み出せることも可能だと思っています。
ぜひとも多能工化をチャレンジしていただきたいというふうに思っています。
おまけトーク
関:聞いてみたかったんですけど、職人さんっていうと、我々も接する機会ありますけれども割とやんちゃな人というか、そういう尖ったような方々も多くいると思うんですけど。
そういう人たちが全国から集まった場合、喧嘩みたいなことはあるんですか?
小山社長:ありますよ。
総合格闘技のプロ試験を受けているようなのが、友達同士で道場に来て、それで大喧嘩が始まった。殴り合いとか始まるんですよ。他の会社の生徒に手を出すっていうか、友達同士で。
それから僕の部屋に呼び出しして、夢なわけですよ、職人の地位向上が。それを邪魔するんじゃねえっつっていう話をすると、もうそこで泣き出して「すいませんでした」って。次の日寝坊します(笑)
でもやんちゃな子は、結構ちゃんと話したら伝わるっすよ。真剣にこっちがやっていることを、やっぱりまっすぐなんで言っても、これをやっぱり邪魔するつもりはないわけですよね。
【メディア運営会社】株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。
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