【情報更新】塗装工事の現場で発生した「転落事故」事例と対策

現場の研究 安全対策足場 2022.03.15 (最終更新日:2024.10.09)
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近年、労働災害による死亡者・死傷者数は、減少傾向にあると言われていますが、「建設業における労働災害発生件数」は非常に多い状況です。中でも最も多いのは工事現場での「転落・墜落」による事故です。

転落や墜落による事故は日頃から安全対策を万全にすることで発生を抑制することができます。今回は、塗装工事の現場で実際に発生した「転落」の事故事例を交えて、事故防止のための対策を紹介します。

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建設業における労働災害発生状況(令和4年)

厚生労働省が発表する統計資料によると、令和2年の建設業における労働災害による死亡者数は281名、死傷者数は14,539名という統計結果が出ています。

その中でも、最多の事故は「転落・墜落」で、死亡者数は95名、死傷者数は4,756名という結果です。

建築業(令和4年) 死亡者数 死傷災害 
墜落・転落 1164,594 
転倒1,734
はさまれ・巻き込まれ 281,706 
崩壊・倒壊 27
激突され 16 800 
交通事故(道路)24
飛来・落下16 1,318 
切れ・こすれ1,272
動作の反動・無理な動作940
高温・低温物との接触233
合計28114,539
出典:厚生労働省:労働災害発生状況
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/

塗装工事の現場での転落の事故事例と予防対策

①移動はしごに乗り、塗料のふき取り作業中に転落

足場
※イメージ写真
項目事例概要
発生状況 移動はしごを玄関先の土盛り箇所に立て掛け、高さ約170cmの位置で「ひさし」の上の塗料の拭き作業を行なっていた。
作業中にはしごの脚部が後方に滑り、作業者は仰向け状態で、足・腰・頭の順でアスファルト舗装の上に転落した。
被災状況保護帽を着用していなかったため、後頭部を強打し、8日後に脳挫傷により死亡が確認された。
事故原因・1人で作業をしていた。
・不安定な土盛り箇所に移動はしごを設置していた。
・はしごの滑り止め(転位防止措置)が不十分だった。
・2m未満の高さであったため、保護帽を着用していなかった。
・作業中の監視が不十分だった。
予防対策・高所作業に移動はしごを使用する場合、設置場所の安定性などを確認する。
・ロープで建築物と固定させ、移動はしごの滑り止め(転位防止措置)を確実に行なう。
・作業時の高さに関わらず、保護帽を着用する。
・作業の監視を行なう。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害事例
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100572

②サンルーフ付近の塗装中に、テラス板を踏み破り転落

物干し
実際の現場で物干し台を破損させた様子
項目事例概要
発生状況テラス板の取り外しができないサンルーフ付近で屋根塗装を行なっていた。
作業中に、テラス板に誤って体重をかけてしまった結果、転落した。
その際に、テラス板・物干し台を破損させ、地面に頭部を強打した。
被災状況保護帽を着用していたため、大事には至らなかったが、数日間の休業となった。
事故原因・テラス板がシーリング材で固着されていて脱着できなかった。
・塗装作業時に後方の安全確認を怠り、誤ってテラス板に体重をかけてしまった。
予防対策・テラス板が脱着可能な場合は取り外す。
・作業時の安全確保のために、サンルーフ上に道板を設置する。

③フェンス破損による転落

フェンス
※イメージ写真
項目事例概要
発生状況概要
<状況>
高さ約7~8mの擁壁上の工事中
<事象>
①道路に面している面にフェンスが設置されていた
フェンスの強度低下に気づかず、足場の昇り降りの際にフェンスに乗ってしまった
②その結果、フェンスが破損し約7~8m下の地面まで落下した
③1名で作業を行っていたため、発見までに時間を要してしまった
被災状況全身を強打し、頭蓋骨骨折、大腿骨骨折
全治約2年の大けが
事故原因・足場が狭く作業しにくい状態だった
・足場の昇り降りでフェンスの乗ってしまった
・フェンスが経年劣化で強度低下していた
予防対策・落下危険箇所を事前に確認し、物件に元々備わっている部材などに体重をかけない
・足場の昇り降り用の昇降階段を設置する

④ 塗装作業中の転落

塗装
※イメージ写真
項目事例概要
発生状況<状況>
3階のベランダ防水工事中
<事象>
①強溶剤系の製品を使用し、その製品の蒸気がこもりやすい状況だった
②その状態で防毒マスクを付けずに作業していたため、溶剤の蒸気を多く吸い込み、立ち眩みやめまいが発生
意識が薄れた状態で足場に移動しようとしたところ足場とバルコニーの間の養生に気づかず、養生箇所に乗ってしまいそのまま転落
被災状況3階建て(約10m)の高さから転落し、全身を強打
現場復帰をするまでに約2週間を要した
事故原因・有機溶剤の蒸気がこもりやすい状態だった
・防毒マスクなど溶剤の対策を行っていなかった
・足場とベランダの間に養生をしていた
予防対策・防毒マスクを着用して作業を行う
・足場と外壁面の隙間を狭くする
・足場と外壁面の隙間の調整が難しい場合は、転落防止用のネットを設置する

⑤ 現場調査中の転落

屋根
※イメージ写真
項目事例概要
発生状況<状況>
屋根の現場調査中
<事象>
①屋根の現場調査を行うために、1人で2階建て(約6m近く)の戸建て住宅屋根に登り、足を滑らせて地上まで落下
②ヘルメットは着用していたが、その他の墜落防止措置は取っていなかった
被災状況両足のかかとを骨折、および全身打撲
事故後3~4ヶ月は歩く事ができず、車いす生活
仕事復帰には数年かかった
事故原因・墜落防止措置を取らずに屋根に登った
・屋根面が滑りやすかった
予防対策・転落防止措置を行っていない状態で屋根に登らない
・高所点検カメラ・ドローンを活用し、調査を行う

移動はしご使用時の転落事故対策

移動はしごを使用する際には、設置方法が重要です。厚生労働省が配布している、はしごの使用時の注意点をまとめたシートがありますので、ぜひご参考ください。

基準
出典:厚生労働省 リーフレット「はしごを使う前に/脚立を使う前に」
https://www.mhlw.go.jp/content/000746780.pdf

まとめ

本記事では、塗装作業中の工事現場における転落の事故事例をご紹介しました。

今回の2現場の事例は、適切な安全対策ができていれば防げた事故と考えられます。

高所作業を行った際の転落事故は、頭部の強打などによって命を落とす恐れがあります。また大事に至らなかった場合も、後遺症が残る可能性もあります。

皆様の現場で同様の事故を起こさないためにも、安全な塗装現場づくりのためにぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

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谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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