【シンナーとは?】塗装に欠かせないシンナーの用途・種類・選び方を徹底解説

現場の研究 塗料性能 2024.10.04 (最終更新日:2024.10.09)
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塗装において、シンナーは作業に欠かせないアイテムの1つです。
しかし、一言にシンナーと言っても、その種類や用途は多岐にわたります。一般的には、塗料の希釈時に使用されるシンナーですが、選び方や使い方によっては、作業効率に大きく関わることもあります。

この記事では、塗装工事で使用されるシンナーについて、その基本的な役割から種類ごとの特徴、さらには注意事項をご紹介します。

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「シンナー」とは?

※イメージ画像

シンナーとは、主に塗料を希釈する(薄める)ために使用される液体です。溶剤塗料を塗装する場合に必ずと言っていいほど使用します。この章では、シンナーが持つ役割をご紹介します。

①塗料の粘度調整

塗料自体の揮発や乾燥時間を調整でき、塗装における作業性が向上します。

[使用しない場合の不具合] 表面にムラが生じ、仕上りに影響を及ぼす可能性があります。

②金属建材や塗膜表面などの脱脂

脱脂力が高いシンナーで建材表面を拭くことにより、表面に加工された油分を溶かし除去することができます。

[使用しない場合の不具合] 工場で製造された金属建材は、錆を防ぐために油分などで塗膜表面に加工している場合があります。その油分が残っている状態で塗装を行なうと、下地(建材)と塗料の付着を妨げ、密着性に悪影響を及ぼす可能性があります。

③塗料の除去

塗装作業中に溶剤塗料が垂れた・汚れた場合に、水では除去できない溶剤塗料をシンナーを使用することにより、除去することができます。

[注意事項]
サッシ周りや塗装箇所をシンナーで強く拭いてしまうと「塗料の色が落ちる。」 「塗装面がムラになる。」「下地を侵す。」などの不具合が生じる可能性があります。そのため、予め目立たない箇所でテスト施工を行ってから使用することを推奨します。

④塗装道具の洗浄

溶剤塗装作業後、刷毛やスプレーガンなどの塗装道具を洗浄することができます。溶解力が高いシンナーを使用することで、より効果的に洗浄できます。

各シンナーの種類や使い分け

前提として、どの塗料にも対応でき、前章のような全ての効果を持つ万能なシンナーは存在しません。

シンナーと言っても様々な種類があり、塗料の種類や主成分によって使用するシンナーは異なります。各種シンナーと塗料には、相性や溶解力の違いがあり、組み合わせによっては、色の差異や乾燥が遅いといった不具合の原因に繋がることがあります。

これらの不具合を避けるためにも、ここでは塗装現場で主に使用されるシンナーの種類と特長、使い分けについてご紹介します。

シンナーの種類について

塗装作業で主に使用されるシンナーは、「塗料用シンナー」 「ラッカーシンナー」の2種類です。

この2種類は以下の特徴があります。

≪各種シンナーの比較表≫

 臭い溶解力乾燥性
塗料用シンナー弱い弱い遅い
ラッカーシンナー強い強い早い

塗料用シンナー

現場での使用頻度が最も高いシンナーであり、主に弱溶剤塗料の希釈や塗装道具の洗浄などで使用されます。別名、「ペイント薄め液」や「トシン」とも呼ばれています。

ミネラルターペン(同義語:ミネラルスピリット・ホワイトスピリット)である脂肪酸炭化水素を主成分としています。塗料用シンナーの中には、AとBがあり、それぞれに特徴があります。

≪塗料用シンナーA/Bの比較表≫

 純度・価格溶解力乾燥性
塗料用シンナーA高い強い早い
塗料用シンナーB低い弱い遅い

ラッカーシンナー

ラッカー塗料※1の希釈や塗料用シンナーで落ちない汚れの除去、塗装用具の洗浄などで使用されます。また、塗料用シンナーと比べて溶解力が強いため建材や塗膜表面の脱脂に使用する場合もあります。

揮発性の高い溶媒であるアセトンやトルエンなどを主成分としています。ラッカーシンナーの中には高価なものと安価なものが存在し、それぞれに特徴があります。また、弱溶剤塗料にラッカーシンナーを使用した場合、溶解力が強いため、弱溶剤塗料の樹脂に影響を及ぼす可能性があります。

※1:トルエンやアセトンなど揮発性の高い溶媒に、アクリル樹脂などを溶かし、揮発性を利用し乾燥させる塗料です。

≪ラッカーシンナーの比較表≫

 溶解力乾燥性価格
ラッカーシンナー(新液)強い遅い高価
ラッカーシンナー(再生品)弱い早い安価

専用シンナー

その他には、強溶剤タイプのアクリル、ウレタン、エポキシ塗料などを希釈する際は、各塗料の性質に合わせて成分を変えた専用シンナーを使用します。以下に、代表的な専用シンナーをご紹介します。

≪例 :各種塗料に使用する専用シンナー≫

強溶剤塗料名主な使用場面シンナー種類
アクリル樹脂塗料床材アクリルシンナー
ウレタン樹脂塗料屋上防水ウレタンシンナー
エポキシ樹脂塗料床材エポキシシンナー

上記の様に、強溶剤タイプの塗料では専用シンナーを指定していることが多く、使用しない場合は塗装の仕上がりや乾燥時間に影響を及ぼし、塗料自体の品質を低下させてしまいます。そのため、代用はできません。

シンナー取り扱いの注意事項

 ここでは、シンナーを取り扱う際の注意事項をご紹介します。前提として、各メーカーの仕様書を順守ください。塗料は、使用するシンナーや希釈量、推奨される季節などが定められている場合があります。使い方を誤ると、塗料本来の性能を発揮できずに不具合を引き起こす可能性があります。また、使用方法・作業環境や保管方法が適切でない場合、最悪のケースでは健康被害や火災の原因となる危険物であるため、適切な使い方を心がけましょう。

①希釈方法

シンナーは希釈するために使用しますが、適切な希釈率にて使用することが重要です。
希釈量が極端に少ないと、粘度が高く塗りにくくなり、反対に希釈量が多いと塗料が薄くなり、塗料本来の性能を発揮できない場合があります。

希釈率は、使用する塗料の種類、道具の種類、気温などの条件によって異なります。必ず塗料缶に記載されている注意事項や仕様書、カタログ等をよく読み、適切な希釈率を守って作業を行ってください。

②取り扱い方法(火気厳禁、換気、処分)

機溶剤であるシンナーは、危険物第4類 第1石油類および第2石油類に該当します。そのため、有害物質が含まれており、人体に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、安全データシート(別名:SDS)などをしっかり確認することが重要です。また、シンナーを取り扱う際は、防毒マスクや保護メガネなどの保護具を着用することで、より安全に作業できます。

火気厳禁

引火性液体であるシンナーは、完全に乾燥するまでは周辺での火の使用は避けてください。最悪の場合、シンナーに引火して燃え広がり、塗料保管庫で火災事故が発生する恐れがあります。正しい有機溶剤塗料の保管方法を知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

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換気

シンナーを長期間吸引した場合、頭痛やめまい、吐き気などの人体への毒性があると言われています。そのため、基本的には風通しの良い屋外で使用し、屋内で使用する場合は換気をこまめに行い、適度な休憩をとることを推奨します。

処分

絶対に排水溝に直接流してはいけません。少量のシンナーの場合、シンナーを新聞紙や布に染み込ませ、風通しの良い日陰でしっかりと乾燥させた後、地域自治体の定めるルールに則り、処分してください。

大量のシンナーの場合、産業廃棄物の専門業者に依頼して処理してもらう必要があります。

アステックペイントのシンナー製品

アステックペイントでは、塗料用シンナーAに分類される「アステックシンナーDX」を取り扱っています。アステックペイントが販売する弱溶剤系塗料を希釈するための推奨シンナーです。

まとめ

今回の記事では、塗装作業で頻繁に使用されるシンナーについて、その基本的な役割から種類ごとの特徴、注意事項をご紹介しました。シンナーは使用する塗料によって使い分ける必要があります。

正しく使用することにより、作業効率は向上しますが、危険物であることを理解し、安全に配慮して日頃の作業を行うように心がけましょう。この記事を通して、適切なシンナーの知識を深め理解していただき、現場の施工品質向上にお役立ていただければ幸いです。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

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株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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