ブラッシング現象(艶引け)の原因と対策を紹介
昼夜の寒暖の差が大きい、春の初めや秋の終わりごろ、朝現場に行ってみると「昨日塗装した屋根が白くぼやけている」「なんだか屋根の見栄えが悪く見える」といった経験はありませんか?
これは「ブラッシング(艶引け)」と呼ばれ、溶剤系塗料を塗装した際に起こりうる仕上がり不良の一つで初春や晩秋の晴天・無風の日など、昼夜の寒暖差が大きくなる時期に発生しやすい現象です。
今回はこの「ブラッシング(艶引け)」について、発生する原因・事前対策・事後対策をご紹介いたします。
ブラッシングとは?
ブラッシングとは、溶剤系塗料の乾燥途中に塗膜の表面が荒れてしまい、本来あるはずの艶がない状態(艶が引けた状態)で仕上がる現象です。
ひどい場合には、部分的に艶ムラになる、全面の艶がなくなってしまうことがあります。
※ブラッシングは「塗膜表面の仕上がり不良」であるため、塗膜の機能・性能には影響を及ぼすことはありません。
発生メカニズム
塗膜の表面が荒れてしまう主な原因は塗膜表面への「結露水の付着」です。
なぜ結露水が付着すると艶がない状態に仕上がって見えるのか、そもそもなぜ結露が発生してしまうのか、イラストを用いながらブラッシングの発生メカニズムを説明します。
① 日暮れ前に溶剤塗料(イラストでは弱溶剤上塗材)を塗装します。
② 溶剤塗料の塗装面から溶剤成分が揮発します。
溶剤成分は、周りの熱を奪いながら揮発をする(気化熱を奪う)ため、塗膜表面の温度は下がります。
③ 日暮れになり、周辺の気温が一気に下がります。
気温が下がることで空気中に含まれる水蒸気の割合が増えます。
④ その結果、塗膜表面の温度が下がるため周辺の気温との差が生じ、かつ空気中に含まれる水蒸気量が増えることによって、塗膜表面に結露水が発生します。
⑤ そして、未乾燥の塗料表面は霧状の結露水に表面を押され、細かい凹みができます。
⑥ その状態のまま乾燥した塗膜は、表面の細かな凹凸により光が乱反射を起こし、
艶がない状態、つまり「ブラッシング」が発生します。
発生傾向
結露水は温度変化や周囲との温度差が大きいほど発生しやすくなります。
そのため、ブラッシングは、熱伝導率の大きい(温度を伝えやすい)金属系下地で発生しやすい傾向があります。
窯業系下地(カラーベストなど)では金属に比べて、熱伝導率が小さい(温度を伝えにくい)ため、結露が発生しにくく、ブラッシングも発生しにくいです。
ブラッシングを発生させないためには?
ブラッシングは、乾燥が進んでいない塗膜表面に、結露水が付着してしまうことにより発生します。
そのため、ブラッシングを発生させないための事前対策として、
①塗膜表面の乾燥を早める
②結露水の発生しやすい環境を避けることが挙げられます。
具体的対策
・昼夜の寒暖差が大きい日や無風状態の場合、日暮れ前に塗膜の乾燥時間を充分に確保するため、早めに施工を切り上げる。
・高湿度の場合は結露が発生しやすくなるため、極力施工は避ける。
ブラッシングが発生してしまった場合は?
ブラッシングは「塗膜表面の仕上がり不良」であるため、塗膜の機能・性能には影響を及ぼしません。
そのため、本来の色・艶感へ戻すために、上塗材を1回塗り重ね、補修を行ってください。
なお、再度ブラッシングを発生させないために、高湿度や無風、昼夜の寒暖差が大きい日を避けて塗装を行うようにしてください。
まとめ
今回は、これからの時期に発生しやすい不具合事例「ブラッシング」についてご紹介いたしました。
塗膜の機能・性能に影響がある症状ではないですが、塗装の目的の1つである「美観」が損なわれる恐れのある症状です。
ブラッシングを発生させないための事前の対策を知り、ぜひ皆様の現場で活用していただけますと幸いです。
【記事監修】株式会社アステックペイント 谷口智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」塗装品質の向上のための施工指導を行う「フィールドエンジニア部」を統括する責任者として、高付加価値塗料の研究・開発、塗装現場の品質管理のための活動を行っている。
【運営会社】株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。
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