事前対策で施工品質向上!水性クリヤー塗料で発生する「白濁」の原因と対処法

現場の研究 塗料外壁工事・工法 2022.11.16 (最終更新日:2024.01.16)
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「水性クリヤー塗料」を使用した際、塗膜が白ぼけて仕上がったご経験はありませんでしょうか。水性クリヤー塗料は、乾燥前だと白く濁って見えるケースがありますが、乾燥に伴い、透明になっていきます。

しかし、事例によっては、乾燥しても塗膜の白ぼけ(以下白濁)が消えないことがあります。
この現象は、塗料が溜まりやすい凹部に空気の泡を含んだ塗料が溜まり、泡が抜けずに成膜したことで発生している可能性が考えられます。
今回は、その水性クリヤー塗料の泡による白濁の事例、発生メカニズム、対策についてご紹介します。

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水性クリヤー塗料による白濁の事例

まずは、実際に白濁が発生した事例を紹介いたします。

■発生傾向の共通点

材料下地発生傾向
水性クリヤー塗料目地模様の溝が深い窯業系サイディング板・全面をローラーで塗装し、塗料が溜まりやすい目地模様の凹部を中心に白濁が発生している。
・拡大すると、塗膜中に泡が含まれており、施工後数ヶ月経過しても消失せず、白濁が残っている。

事例①

事例②

このように水性クリヤー塗料が泡を含んだ状態で部分的に溜まった場合、白濁した状態で仕上がるケースがあります。

白濁が発生するメカニズム

水性クリヤー塗膜の白濁は、樹脂の色(乳白色)ではなく、「泡の発生」が原因です。
弱溶剤系のクリヤー塗料は、表面張力が低く泡が弾けやすいため白濁は発生しませんが、水性クリヤー塗料は、弱溶剤系に比べると泡が抜けにくいため、塗料に泡を含んだ状態で凹部に溜まるとその部分の泡が抜けず、白濁につながる場合があります。

■メカニズム詳細

① ローラー施工時、塗料中に空気を巻き込み、部分的に塗料が溜まる。
② 時間経過とともに塗料に含まれた空気の泡が抜けていくが、塗料が溜まった箇所に泡が残る。
③ 泡が完全に抜けきらず残った箇所は、透明度がなく白濁して見える。

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白濁発生を防ぐ対策

水性クリヤー塗料の泡による白濁が発生した場合、きれいに補修することは困難となるため、まずは発生させないような事前対策をとることが非常に大切になります。

■事前対策

・塗料撹拌時に空気を含みにくくさせるために、塗料液面から電動撹拌機の羽が見えないように緩やかに撹拌する。
・ 塗料を水希釈し、粘度を下げることで、泡を弾けやすくして塗装する。
・ 塗装時にダレなど、塗料が溜まった箇所は刷毛などで塗り広げる。

■事後対策

白濁が一部に発生した場合に限り、以下の補修方法によって、わずかにぼかすことができます。

① 白濁が発生している箇所に塗料用シンナーを刷毛で塗る。
② シンナー乾燥後の膨潤状態のうちに軽くワイヤーブラシで白濁塗膜箇所を削る。
③ 水性クリヤー塗料でタッチアップする。

補修により泡の跡が目立ちにくくなりますが、完全に除去することは困難となるため、事前対策をしっかり行う必要があります。

まとめ

今回は、水性クリヤー塗料を使用した場合の白濁の事例・発生メカニズム・対策について紹介しました。
水性クリヤー塗料の白濁補修は困難なため、事前対策が非常に大切になります。皆様の現場品質向上のお役立てできましたら幸いです。


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記事監修】株式会社アステックペイント 谷口智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」塗装品質の向上のための施工指導を行う「フィールドエンジニア部」を統括する責任者として、高付加価値塗料の研究・開発、塗装現場の品質管理のための活動を行っている。

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運営会社】株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。

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