塗装や補修工事で使っていけない?「シリコーン系シーリング材」とは
塗装工事の現場調査や工事の際、施主様が外壁のひび割れ・欠損などをホームセンターで購入されたシーリング材で補修をされている物件・開口部や建具周辺に後からシーリング材で補修をされている物件など見たことあるのではないでしょうか。
そういった場合、屋根外壁塗装工事にあまり適さない「シリコーン系シーリング材」の可能性があります。
シリコーン系シーリング材は、そもそも塗料の相性が悪い上に、シリコーンオイルがにじみ出ている箇所も塗料が付着しにくい傾向があります。
今回は、現場調査時や塗装工事で注意が必要な「シリコーン系シーリング材」についてその特徴や性質、屋根外壁改修で使用した場合の影響などを解説します。
シーリング材とは
シーリング材とは、建物などの部材間に発生する隙間や結合部を埋めるための柔軟性を持った詰め物のことです。その目的は「防水性」にあります。防水性を持つシーリング材を隙間に埋めることで、部材のずれや目地からの雨水・結露水・空気の浸入を防ぎます。
シーリング材には様々な種類があり、使用目的が異なります。目地部の状況(動きが大きい・少ないなど)や周辺環境に合わせて使い分けられます。
主な特徴 | 使用箇所 | |
ポリウレタン系シーリング材 | 柔らかいスタンダードなシーリング材で屋根・外壁塗装工事で使用されることが多い。 ・外壁材同士の緩衝機能に優れている。 ・ 外壁塗装色と共色シーリング材、高耐候性シーリング材などの様々な種類が発売されている。 | ・外壁と外壁の間の隙間や開口部(窓サッシ廻り、ドア廻りなど) ・その他に外壁材や屋根材のひび割れ補修にシーリング材を使用する工法もある。 |
変成シリコーン系シーリング材 | ・柔らかいスタンダードなシーリング材で屋根・外壁塗装工事で使用されることが多い。 ・外壁材同士の緩衝機能に優れている。 ・外壁塗装色と共色シーリング材、高耐候性シーリング材などの様々な種類が発売されている。 ・ ポリウレタン系との違いは、シーリング材の硬化速度が早く、工期短縮が期待できる点。 | ・外壁と外壁の間の隙間や開口部(窓サッシ廻り、ドア廻りなど) ・その他に外壁材や屋根材のひび割れ補修にシーリング材を使用する工法もある。 |
シリコーン系シーリング材 | ・非常に高い撥水性を持ち耐久年数も高く、耐熱性に優れたシーリング材。 ・ ホームセンター等でも広く販売されており、安価な製品も多くある。 | 主に台所、浴室など水で濡れてしまうような箇所で使う。 |
屋根外壁改修や補修工事で注意が必要な「シリコーン系シーリング材」
紹介したシーリング材の中でも、屋根・外壁改修において特に注意が必要なのが「シリコーン系シーリング材」です。高い撥水性と耐久性を持つ一方、以下の理由から注意が必要です。
≪注意が必要な理由❶ 塗料が付着しづらい≫
シリコーン系シーリング材は撥水性が非常に高いため、台所や浴室等の「水濡れしやすい箇所」で使用されることが多いです。 しかし、外壁材の板間目地や屋根・外壁の補修などで使用すると、高い撥水性の影響で塗料の付着が悪くなり、はじき・付着不良などが発生しやすく、正常に成膜できない可能性があります。
≪注意が必要な理由❷ 汚れが付着しやすい≫
シリコーン系シーリング材には「シリコーンオイル」と呼ばれる油成分が含まれています。これはとても疎水性が高く揮発しにくく、経年の降雨により徐々に目地周辺ににじみ出ます。撥水性が高い(親油性が高い)ことで汚れの原因となる排気ガスのカーボンなどの塵やほこりが付着しやすく、汚染が発生します。
また、撥水性の高いシリコーンオイルが周辺にじむことにより、シーリング材周辺の塗料の付着も悪くなり、早期剥離などの不具合が発生する可能性があります。
シリコーン系シーリング材は屋根・外壁で以下に使用されていることが多いです。
≪使用されている箇所の例≫
・屋根、外壁のひび割れ補修箇所
・エアコンホースカバーや排気口の周囲部分
・工場屋根の継ぎ目やボルト部分
・施主様が自分でメンテナンスを行っている箇所
屋根・外壁にシリコーン系シーリングを使っている場合の対処
屋根・外壁のひび割れ補修や建材の板間目地などにはシリコーン系シーリング材を使用しないでください。塗装工事で使用する塗料の付着が著しく悪くなり、不具合に繋がる可能性が高くなります。
すでにシリコーン系シーリング材が使用されている場合は、以下の手順で対応します。
1.シーリング材の撤去
2.シリコーンオイルがにじんでいる可能性があるため、撤去箇所及び周辺箇所を塗料用シンナーやラッカーシンナーで清掃
3.変成シリコーン系シーリング材など、屋根・外壁改修に適切なシーリング材への打ち換え
ただし撤去や打ち換えが困難な場合、シリコーン系シーリング材上への塗装を可能にする材料(専用プライマー・下地処理用バインダーなど)を選定し、塗装を行います。 ※下記他社製品とアステックペイント製品との付着性試験は実施できていません。
まとめ
今回は塗装作業や補修時に注意が必要な「シリコーン系シーリング材」についてご紹介しました。シーリング材には様々な種類があり、性能や性質により使用箇所が異なります。適切な材料の選定、また、適切な改修方法での工事を実施しましょう。
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【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。