【冬は寒くなるの?】冬場の遮熱塗料の効果を徹底解説
遮熱塗料は、太陽光の近赤外線を効果的に反射することで、室内の温度上昇を抑制することができる塗料です。そこで、近年、省エネ対策として遮熱塗料のニーズが高くなってきています。夏の省エネ効果が高いため、遮熱塗料による改修工事に対し、一部助成金が出る自治体もあります。
一方、「冬でも太陽光を反射するのだから、遮熱塗料を施工すると冬は寒くなるのではないか?」と考える方もおられるのではないでしょうか?事実、当社でもそういったお問合せをいただくことがあります。結論からいうと、冬の遮熱効果は非常に小さくなるため、室内の温度変化に及ぼす影響はほとんどありません。本記事では、簡易検証の報告とあわせて、冬の遮熱効果が小さくなる理由についてご紹介いたします。
検証方法と結果
一般塗料(遮熱効果がない塗料)と遮熱塗料、それぞれを塗布した金属板で検証しました。
【検証塗料】 ◯一般塗料 色:N-60、近赤外線日射反射率:約19% ◯遮熱塗料 色:N-60、近赤外線日射反射率:約65% |
検証① 屋外での比較
一般塗料と遮熱塗料を塗布した金属板を冬の屋外に設置し、温度の違いを比較します。
塗装面の表面温度 | |
一般塗装面 | 26℃ |
遮熱塗装面 | 23℃ |
温度差 | 3℃ |
一般塗料と遮熱塗料の塗装面の温度差はわずか3℃でした。
検証② 遮熱実験器具での比較
検証①の測定値を参考に、各季節を想定したときの一般塗装面と遮熱塗装面の温度を比較します。遮熱実験器具 を用いて、一般塗装面が30℃(冬)、50℃(春秋)、70℃(夏)になった場合の遮熱塗装面の温度測定を行いました。
冬 | 春・秋 | 夏 | |
一般塗装面 | 30℃ | 50℃ | 70℃ |
遮熱塗装面 | 22℃ | 34℃ | 50℃ |
温度差 | 8℃ | 16℃ | 20℃ |
春・夏・秋の温度差が大きいのに対して、冬の温度差は8℃と差が小さいことがわかりました。
冬の遮熱効果が小さい理由
冬の遮熱効果が夏に比べて小さくなる理由は、夏と冬の日射強度と日射量の違いがあります。
①日射強度の違い
太陽光は季節による違いはありませんが、太陽光が地面に当たる日射強度が違います。
冬は太陽光の照射角度が低いため日射強度は弱く、夏は太陽光の照射角度が高くなるため日射強度が強くなります。
■夏と冬の日射強度
②日射量の違い
冬は夏に比べて日照時間も短いことから、日射量が小さくなります。下表に、冬と夏の1㎡当たりの平均日射量を示します。夏に比べると冬は平均日射量が約1/2になることがわかります。
夏 | 冬 | |
平均日射量(大阪市) | 4.7kWh/m2 | 2.3kWh/m2 |
まとめ
冬は日射量が少なくなる分、遮熱塗料の遮熱(塗装面温度上昇の抑制)効果が小さくなり、室内温度変化に及ぼす影響はほとんどなくなるものと考えられます。
日本建築学会の講演発表資料でも、遮熱塗料は夏に遮熱効果を発揮し、冬は室内温度変化に与える影響は見られないという結果が報告されております。1)
遮熱塗料をご検討されるときの参考にしていただければ幸いです。
※出典論文:1)田村昌隆ら:講演番号1519,「 太陽熱高反射率塗料の性能に関する研究」( その 9 戸建て住宅を想定した実験棟を用いた空調機稼働実験 ),日本建築学会2009年度学術梗概集A-1 材料施工,pp.1037~1038,2009.8
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この記事の監修者と運営者
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。