「持たざる経営」から「持つ経営」への転換
以前、「インフレ時代において、塗装会社が生き残っていくためには」というテーマで、考えを整理しました。あれから一か月が経ち、インフレ傾向はますます顕著になってきていると感じています。
また、欧米各国がインフレを抑え込むために金利を引き上げ始めており、それが日本の円安を誘導しているとも言えます。金融緩和を続けている日本は今後も円安傾向となり、さらなるインフレを進行させることになるかもしれません。
一つの可能性として、インフレの進行を止めるために日本でも金融緩和を終了させることになれば、過去30年間の大転換期を迎えることになるでしょう。
エネルギー価格や原材料の高騰により世界的なインフレ懸念が起きていますが、日本においては円安がさらにインフレを押し上げていると言われています。
関連記事過去30年間の大転換期と危機感
過去30年間、日本社会はデフレを経験してきており、給与水準もほぼ横ばいでした。先進国で唯一給与水準が伸びていない異常な状態であり、発展途上国に近い水準にもなってきました。
しかしながら、生活水準は30年前に比べて貧しくなっているかというと逆で、全体的に上がってきた感覚があります。その理由は、デフレ経済の中でモノとサービスの価格が下がり続けてきたので、同じ給与水準でも生活レベルは微増してきたからとも言えます。
この構造が、インフレにより全て変わることになります。
これからは、不景気により給与は上がらない中で、物価だけが上がっていく社会となり、多くの国民が困窮していくことになるかもしれません。
さらにコロナ禍において、国が中小企業に対して湯水のように資金繰りを支援してきましたが、その資金が今年から切れ始め、大倒産時代を迎えることになると想定されます。
社会と経済が大きく変わり、大混乱するこのタイミングで、我々は経営をしていかなければならないという危機感を持つべきだと思っています。
インフレ時代に生き残っていくために
前回は、塗料代や協力業者の価格が上がっていく時代においては「販売価格を上げられる実力のある企業が生き残る」という内容で整理しました。
今回は、前回のことも踏まえながら、さらに深掘りしていきたいと思います。
デフレ経済において、多くの企業が意識して取り組んできたことは「持たざる経営」という考え方でした。
土地・建物を持たないで賃貸で借りる、社員を減らして契約社員に置き換える、設備を減らして下請け業者に委託するなどが挙げられます。人とモノが余り、価格が安定している時代においては最も合理的な取り組みだったと言えるでしょう。
しかし、インフレ時代においては「持たざる経営」から「持つ経営」に転換する必要があると考えます。
最近で言うと、半導体ショックで多くの自動車メーカーが生産を止めることになりましたが、半導体の在庫を抱えていた自動車メーカーは早々に回復してきたという事例があります。
これは、インフレ時代のリスクを回避するためには「持つ経営」という考えに切り替えていく必要があるといえる一つの事例でしょう。
塗装会社にとっての「持つ経営」とは
それでは塗装会社にとっての「持つ経営」とは何か、考えてみたいと思います。
まず「在庫を持つ」ということに関しては、神経質になる必要はないと思っています。
各メーカーに同じような塗料があり、多くの塗料は代替えが容易にできると言えます。また、自動車の半導体のように緻密に決められた仕様通りのもの以外は使えないということとも違うと考えられるでしょう。
塗装会社にとっては、「職人を持つ」ということが最も大切な取り組みとなります。
職人不足が間違いなく加速していく時代において、企業は職人を採用する立場から、職人から選ばれる立場へと大きく変わっていきます。職人の社員化という選択肢だけではなく、協力業者であってもほぼ社員同様の待遇と働き方、そして愛社精神を培いながら、強い信頼関係を作り上げていくことが大切になるでしょう。
さらに、「(塗装以外の)技術と設備を持つ」という取り組みも、私はとても重要だと思っています。
例えば、シーリング、板金、足場などは外注業者に丸投げしており、「技術と設備」をほぼ有していない塗装会社は多いと思います。インフレ時代において、真っ先に、そして大幅に価格が上がってくるのは、前述したような工事になります。
今後、それらの技術と設備を有し自社で対応できるようになっていると、原価もコントロールできるようになるので、競合他社との戦いにおいてかなり大きな強みになるでしょう。
アステックペイントからの提案
アステックペイントからの提案としては、まず「シーリング」からスタートすべきだと考えます。
自社の塗装職人を教育し、塗装工事を行う同じ職人が工期の中で工夫をしながら、自らシーリングの打ち換えができるようにしていく流れです。この取り組みのメリットは、現場に入る職人の手間賃を増やしながら会社の利益も増やすことができ、原材料の高騰分を十分に吸収できるようになることです。
現在は、格差社会とも言われています。同じ業種の中でも、一部の勝ち組と大多数の負け組に分かれ、企業収益格差はますます顕著に差が出てくる時代とも言えます。
インフレ時代に生き残っていくための取り組みをいち早く行っていく会社が勝ち組になることは言うまでもありません。
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このコラムの寄稿者と運営者
【コラム寄稿者】
株式会社アステックペイント
菅原 徹
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菅原 徹
株式会社アステックペイント 代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。