「一人親方問題」に向き合う

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近年、建設業界において「偽装一人親方問題」が深刻化しているようです。「偽装一人親方問題」とは、働き方の実態としては従業員とほとんど変わりがないのに、会社が社会保険料の負担を免れることなどを目的として、請負の形態で契約締結されている「偽装請負」の状態にある一人親方のことを言います。

多くの一人親方は、「一国一城の主となって、たくさん稼ぎたい」などの夢を持って独立したという経緯があったと思います。しかし実態は、従業員とほとんど同じ働き方をしながら、社会的に全く守られない環境に身を置いている状況となっています。加えて、今後インボイス制度や働き方改革などの難題が山積みとなっており、一人親方が生き残ることが難しい時代になっていくのではと危惧されています。

一人親方への転換の背景

※イメージ写真

国土交通省が推計した「一人親方の推計人数」によると、建築技能者総数324万人のうち一人親方が51万人(15.6%)となっており、正規従業員183万人(56.5%)を除いてみると、その割合の高さが際立っていることがわかります。

また、同じく国土交通省の「社会保険の加入及び賃金の状況等に関する調査」を見ると、従業員9人以下の会社で「継続的に従事する一人親方がいる」と回答した割合が、令和元年の32.5%から令和2年には36.4%へと大幅に上昇しています。このことから、会社が社会保険負担軽減などを目的に従業員の一人親方への転換を実施してきたことは否定できず、この傾向はこれからも変わらないでしょう。

塗装会社の抱えるリスク

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国土交通省は、令和2年6月より「建設業の一人親方問題に関する検討会」を継続的に開催していますが、その目的を「技能者の処遇改善や法定福利費を適正に負担する企業による公平・健全な競争環境の整備を図るため、規制逃れを目的とした一人親方防止対策、一人親方の処遇改善対策等の諸課題に関し実効性の施策を推進する」としています。つまり、企業が「社会保険」や「長時間労働規制」の負担軽減を目的として、自社の従業員に一人親方もしくは個人事業主として独立を強要するようなことの撲滅を目指しているということです。

さらに、一人親方に発注している企業に対して、実態が従業員と同様の労働者として扱い、会社の社会保険や労災保険などに加入させていない場合には、年金事務所などから過去にさかのぼって保険料を徴収される事例も出てきています。 一人親方と従業員の定義は明確になっている(表1)ので、一人親方を従業員と同じ扱いをしていくことが経営リスクになっていくことも理解しておく必要があるでしょう。

一人親方の抱えるリスク

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一人親方が抱えるリスクで最も大きいのは、死亡・事故災害とその補償となるでしょう。

厚生労働省の「建設業における労働災害発生状況・一人親方等の死亡災害発生状況」によれば、2021年死亡災害発生状況の死亡者数合計値382人のうち従業員が288人(約75.4%)、一人親方が94人(約24.6%)と、従業員(56.5%)と一人親方(15.6%)の建築技能者総数の比率から考えると、明らかに一人親方の方がより危険な環境で仕事を行っていることが推測されます。

このような背景の中、「一人親方等の労災保険の特別加入制度(一人親方労災保険)」が推進されていますが、アンケート調査(2018年実施)によると14.1%が未加入で、加入しない理由として、「保険料を負担したくない(26.5%)」が最も多く、次いで「民間保険加入済み(24.9%)」、「制度を知らなかった(24.7%)」という回答となっています。

元請けの塗装店としてできること

前述の「建設業界の社会保険加入推進」や「インボイス制度開始」などは、国策として動いているため決して後戻りすることはありません。2023年以降は、大倒産時代が到来することも予想されており、給与の高さに対して生産性の低い自社職人を多く抱えるのは容易なことではありません。

一方で、職人の絶対数自体はますます不足していく時代において、相当の比率を占める一人親方と向き合わないと一人親方からの信頼を失い、塗装店としての未来が閉ざされる可能性すらあります。

一人親方問題への向き合い方

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まずは、お互いの共存・共生のために「一人親方問題」と向き合うことから始め、少しずつ改善していくしか道はないと思います。その中であらゆることを議論していくことになると思いますが、本質的にはほとんどが「コスト負担」の話にしかなりません。よって、前向きに改善していくためには、塗装会社として「塗装工事の販売単価」を上げていく努力をしていくしか解決の手段はないでしょう。

「一人親方問題」は塗装業界全体の大きな課題であることは間違いありません。アステックペイントとしても、少しでも課題解決の一役を担っていければと思っています。

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