住宅外壁に多いモルタルとは|塗装工事の手順・注意点、オススメ塗料を紹介
日本の戸建て住宅で外壁材シェア率No.2である「モルタル外壁」。
モルタルは、和風の戸建て住宅で多く採用され、コテや吹付けを使用することでデザイン性の高い仕上げを施すことができます。 塗装会社の職人の方はモルタル外壁を塗装する機会も多いのではないでしょうか?そこで今回は「モルタル外壁の特徴」「モルタル外壁の施工手順や注意点」などを詳しく解説します。モルタル外壁を施工する前の基本知識として参考にしてください。
目次
モルタル外壁とは
モルタル外壁とは、日本の戸建て住宅などに使用されている外壁材の種類の一つです。窯業系サイディングに次いで、日本で2番目に使用されている外壁材です。
砂(細骨材)とセメントを水と練り混ぜて、木材・ラス網などの下地にコテで塗り付けることでモルタル外壁となります。
モルタル外壁の特徴をメリット・デメリットでまとめると、以下のようになります。
メリット |
・目地がないためシーリング補修が不要 ・表面に多種多様なデザインを施すことが可能 |
デメリット |
・防水機能がないため定位的なメンテナンスが必要 ・ひび割れが発生しやすい |
特徴① 目地がない
モルタル外壁は、工場で製造された板を現場で組み合わせる窯業系サイディングの「乾式外壁」とは異なり、現場で塗り壁材(原料)を水と混ぜ、コテなどで塗り付けて仕上げる「湿式外壁」です。
このため部材間の目地が不要となり、窯業系サイディングの外壁では必要となるシーリングの打ち変え作業は発生しません。
特徴② 多種多様なデザイン
モルタル外壁は基本的に目地がないため、コテや吹付けでデザイン性豊かな仕上げが可能です。代表的な仕上げには、リシン、吹付タイル、スタッコ、ジョリパットのような凹凸模様があります。
特徴③ モルタル外壁自体に防水性がない
モルタル外壁はセメントを主原料としているため水を吸収しやすいですが、防水機能は備わっていません。このため、雨の影響を受ける表面には仕上げ材や塗装工事が施され、防水機能を確保しています。
しかし、塗膜の経年劣化によっての防水性が低下するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
特徴④ ひび割れが発生しやすい
モルタル外壁は原料や構造上の特性から、施工後1年以内〜経年でひび割れが発生することがあります。
モルタル外壁に発生するひび割れの種類
❶施工後1年以内のひび割れ
モルタル外壁は、「砂(細骨材)」「セメント」「水」を原料としています。施工後は水分がゆっくりと蒸発することで固まります。この水分の蒸発に伴うモルタルの硬化と収縮の過程で、窓周辺などの開口部にひび割れが生じることもあります。
❷経年でのひび割れ
施工後1年が経過してもひび割れが見られない場合でも、モルタルの硬化収縮により脆くなった箇所が、建物の動き(膨張・収縮、地震など)によって時間とともにひび割れる可能性があります。
モルタル外壁で見られる劣化症状
モルタル外壁は定期的なメンテナンスが必要な外壁ですが、具体的にどういった劣化症状が見られるのかをご紹介いたします。
①ひび割れ
モルタル外壁はモルタルの硬化収縮によりひび割れが発生しやすい外壁材です。これを放置すると、雨水が浸入し、結果として建物の劣化が進行します。 そのため、メンテナンス時にはひび割れ補修を行う必要があります。
②チョーキング
チョーキングとは、塗膜や仕上げ材の表面が外部環境(熱・水・紫外線)の影響で劣化し、指で触れると塗膜の色の粉がつくのが特徴です。モルタル外壁表面には仕上げ材や塗装が施されているため、経年でチョーキングが発生します。
塗膜の初期劣化ですが、放置すれば建物のさらなる劣化につながるため、チョーキングが著しい場合は早めの補修を推奨します。
③エフロレッセンス
エフロレッセンスとは、外壁の表面に白い汚染物(炭酸カルシウム)が発生する現象のことです。
モルタル外壁を成形した際に反応できなかったセメント中の未反応の余剰カルシウム成分が、ひび割れなどから浸入した雨水に溶け出し、建材表面で二酸化炭素と反応することで、白い析出物・汚染物となります。
セメントを含む建材で発生する現象であるため、モルタル外壁でも発生する場合があります。表面に汚染物が付着しているため、躯体の劣化に直接つながる症状ではありませんが、建物の美案を損ねてしまいます。
④塗膜の浮き・剥離
塗装後、下塗材の選定間違いや旧塗膜のケレン不足、乾燥不足、異物の付着などにより塗膜が剥離する場合があります。建物を保護する役割である塗膜が剥離すると、躯体の劣化につながるため、早めの補修が必要です。
モルタル外壁の塗装工事の施工手順
ここからはモルタル外壁を塗装工事する際の施工手順についてご紹介します。
<全体の流れ>
①足場の組み立て → ②高圧洗浄 → ③下地補修・養生 → ④下塗り → ⑤中塗り・上塗り → ⑥足場解体 → ⑦完工
①足場の組み立て
施工物件に合わせて足場を設置します。2階などの高い箇所にも改修工事が行えるよう、足場の設置は必要です。
②高圧洗浄
建物の外壁に付着する汚れや弱った旧塗膜は、新しい塗装の際に塗料の密着を妨げます。高圧洗浄によって汚染物やチョーキングを洗浄することで、塗料の付着性を確保します。
③下地補修・養生
塗装工事に入る前にひび割れや欠損などを補修し、建物(下地)を平滑にしていきます。
下地補修が不十分な場合、雨水の浸入や劣化の原因となるため、劣化状況に応じて適切な補修方法で補修する必要があります。浮きや剥離などの塗膜の劣化は取り除いてください。
【工事のワンポイント】主な下地補修方法(ひび割れ補修の場合)
ひび割れ幅が0.3mm未満の場合は下記の工事を行いましょう。
■シーリング材の刷り込み:ひび割れか所にシーリング材を擦り付けひび割れを補修する工法
■微弾性フィラーの刷り込み:④下塗りで行う工程。ひび割れか所に微弾性フィラーを刷り込みひび割れを補修する工法
ひび割れ幅が0.3mm以上の場合は下記の工事を行いましょう。
■Uカットシーリング工法:ひび割れか所を電動工具で溝を作り、シーリング材で溝を埋める工法
【Uカットシーリング工法の進め方】
また、下地補修と同じタイミングで養生を行います。
塗装時に塗らない部分や作業により傷や汚れが付く可能性がある部分などを、マスキングテープ・ビニールシートなどで被い、周辺や隣り合う面や建材などを保護する役割があります。
④下塗り(下塗材を塗装する作業)
塗装の準備が完了したら、下塗材を施工します。下塗材は、建物の下地と上塗材をしっかりと付着させる役割があるだけでなく、建物の表面の状態を整えて塗装しやすくする役割も持っています。
※下地材の形状や種類、劣化状況によって塗付量が異なります。
⑤中塗り・上塗り(上塗材を塗装する作業)
下塗材を塗装し乾燥させた後、上塗材を施工します。上塗りは多くの場合、2回に分けて行われます。1回目の塗装を「中塗り」、2回目の塗装を「上塗り」と呼びます。上塗材の役割である建物の保護や機能性の付与、美しい外観を維持するために、規定塗布量を守って施工することが重要です。
※下地材の形状や種類、劣化状況によって塗付量が異なります。
⑥足場解体・完工
足場を解体し、塗装工事が完工となります。
モルタル外壁の改修におすすめのアステックペイント製品
アステックペイントでは、モルタル外壁に塗装できる下塗材・上塗材を豊富に取り揃えております。
特におすすめの製品とその特徴を以下にご紹介いたします。
下塗材
製品名:エピテックフィラーAEⅡ、ホワイトフィラーAⅡ
関連記事ポイント:モルタル外壁は凹凸のある表面が多いのが特徴です。これをなだらかに整えるために「フィラー」を塗装することで、上塗材の塗膜厚をしっかり確保し、均一な仕上がりを実現します。
上塗材
製品名:超低汚染リファインシリーズ、フッ素REVO・シリコンREVO
関連記事ポイント:モルタル外壁の凹凸模様には、埃やチリなどの汚れが付着しやすいです。そこで、汚れにくい特性を持った塗料を選ぶことで、外壁の美観を長持ちさせることができます。
※モルタル外壁の損傷や劣化が大きい場合、塗装だけでなくカバー工法などの別の補修方法を検討することをおすすめします。
まとめ
今回、日本の戸建て住宅で外壁材のシェア率No.2を誇る「モルタル外壁」に関する特徴や、改修工事の方法について詳しくご紹介しました。
モルタル外壁の塗装工事を行う際に、参考にされてください。
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この記事の監修者と運営者
【記事監修】
株式会社アステックペイント
谷口 智弘
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株式会社アステックペイント
谷口 智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。
【運営会社】
株式会社アステックペイント
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株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。