要チェック!外壁のシーリング材でよく起こるトラブルとその解消法
窯業系サイディングの外壁の目地やひび割れ補修に使用したシーリング材の上に塗装を施した際に「汚れが発生している」「ひび割れが発生している」「膨れている」など、不具合と思われる症状が出たことはありませんか?
シーリング材はその上から塗装する際、施工方法によって不具合が見られる場合があります。
今回は、実際に発生したトラブル事例を汚染・ひび割れ・膨れに焦点を当て、わかりやすくQ&A形式にて、その原因と事前・事後対策を紹介いたします。
※シーリングとコーキングの違いについて
シーリングはコーキングと同義語の用語で、窯業系サイディングの目地部・ひび割れ補修に使用されるものです。今回の記事ではシーリングと呼称します。
①シーリング材上の塗膜の汚染について
Q.外壁目地部だけ色が変わって目立っているのはなぜ?
A.可塑剤が表面に染み上がり塗膜が柔らかくなっているから
シーリング材に含まれる「可塑剤」が塗膜表面に染み上がり、塗膜が柔らかくなることで、汚れが付きやすくなっていることが原因です。
可塑剤は、シーリング材に柔軟性を付与するために添加されていますが、樹脂に馴染みやすく、塗膜を軟化させる性質があります。この可塑剤がシーリング材上の塗膜に染み上がってくることで塗膜表面にベタつきが発生し、そこに埃やゴミなどが付着することで汚染が発生します。
事前対策
塗装工事を行う前に、ノンブリードタイプのシーリング材(※1)で打ち替えるか、目地をシンナー拭きしてから可塑剤の染み上がりを抑制する特殊なプライマー(※2)を塗装し、下塗材、上塗材の塗装を行ってください。
事後対策
ノンブリードタイプのシーリング材(※1)で打ち替えるか、目地をシンナー拭きしてから可塑剤の染み上がりを抑制する特殊なプライマー(※2)を塗装し、下塗材、上塗材の塗装を行ってください。
※1:可塑剤が塗膜へ染み上がりにくいシーリング材。
※2:「バリヤープライマー」などと呼ばれています。取り扱いメーカーへご確認ください。
②シーリング材上での塗膜のひび割れについて
Q.シーリング材を打ち替えした後、シーリング材上で塗膜のひび割れを発見。ひび割れが発生した原因は?
A.シーリング工事と塗装の工程間隔が短いから(塗装直後に発生した場合)
シーリング工事と塗装工事の工程間隔が極端に短かく、硬化途中に塗装を行った可能性があります。
シーリング材は、打設時に揮発成分を多く含んでいます。硬化が進むにつれて、これが表面から揮発しシーリング目地の中央あたりから凹むことで露出面の表面積が大きくなります。硬化途中に塗装を行い、乾燥した塗膜が引っ張られ、塗膜が割れたと考えられます。
事前対策
現場で使用するシーリング材の施工仕様を確認してください。
各シーリング材で塗装可能な時間を設けているので、塗装工事の際は規定時間を厳守してください。
また、気温や天候などの環境によってお困りの際は、シーリングメーカーまでご確認ください。
事後対策
現在打設しているシーリング材の硬化確認後、タッチアップにて補修してください。
A.建物の振動・気温変化による外壁材の挙動に、塗膜が追従できなかった(塗装後数カ月後に発生した場合)
シーリング目地は、建物自体の挙動 (熱によるボードの膨張収縮) や外的要因 (振動や地震など) により、毎日、伸長・収縮を繰り返しています。そのシーリング目地の日々の挙動に下塗材が追従できずひび割れ、次いで上塗材も連鎖してひび割れが発生いたします。
事前対策
・暴露型のシーリング材を用いて、後打ち工法を行ってください。
・超低汚染リファイン弾性1000MS-IRのような、シーリング目地の挙動に追従できる弾性系塗料で塗装を行ってください。
事後対策
・ひび割れ部分のみ、周辺と同じ塗料でタッチアップをしてください。※再発する恐れがあります。
・シーリング材を打ち替え、後打ち工法に変更してください。
シーリング材上の塗膜のひび割れについて2つの事例をご紹介いたしましたが、見た目だけで原因を特定することは困難です。そのため、今回ご紹介したような塗膜のひび割れが発生した場合は、発生時期などを考慮して総合的に原因を判断してください。
シーリング材の膨れ
Q.シーリング材の増し打ちを行った物件で、シーリング目地上で膨れが発生。膨れを切開すると、シーリング材内部がハチの巣状になっていたのはなぜ?
A.増し打ちの際に、空気を含んだ可能性
シーリング材を増し打ちした際に、間に空気を含んだ可能性があります。そこに直射日光が当たることで、閉じ込められた空気が膨張し、膨れたと考えられます。
事前対策
シーリング材の打設場所によって異なりますが、基本的にシーリング材の増し打ちは推奨しておりません。
シーリング材の打ち替え工事後、塗装工事を行ってください。
事後対策
シーリング材の打ち替え工事を行い、硬化確認後目地上だけタッチアップで再塗装してください。
シーリング材の界面破断について
Q.外壁材とシーリング材の間に隙間ができるように破断が発生したのはなぜ?
A.シーリング材専用プライマーの塗布量が足りなかった、塗り残した箇所があった可能性
シーリング打設時には、外壁材とプライマーの接着を確保するために、サイディング板の小口などに「シーリング材専用プライマー」を塗布する必要があります。そのため、塗布量が足りていなかったり、塗り残した箇所があったりした場合、建物の挙動によりシーリングの破断が発生する可能性があります。
※特に利き手と同じ側は塗りにくいため、塗布量が不十分になることがあります。
事前対策
塗り残しや塗りムラがないようにシーリング材専用プライマーを十分塗布してください。
事後対策
シーリング破断箇所のみ打ち替えを行っていただき、周辺と同じ塗料でタッチアップをしてください。
まとめ
今回は、シーリング材上の塗膜のトラブルを汚染・ひび割れ・膨れに焦点を当てて紹介しましたが、ほかにも多くのトラブル事例があります。
「なぜこのような症状が発生しているか?」と疑問に感じた際は、シーリングメーカー・塗料メーカーに問い合わせましょう。外壁の塗装工事と併せてシーリング工事を行った際はこのような不具合が発生する可能性があります。
場合によってはシーリング材を打ち替える必要があるため、トラブルを発生させないためにも各シーリングの施工仕様等をご確認いただければと思います。
シーリング材に関するそのほかの情報はこちらをご覧ください
関連記事【記事監修】株式会社アステックペイント 谷口智弘
株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」塗装品質の向上のための施工指導を行う「フィールドエンジニア部」を統括する責任者として、高付加価値塗料の研究・開発、塗装現場の品質管理のための活動を行っている。
【運営会社】株式会社アステックペイント
AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。
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