“結露”が原因による塗膜の膨れのメカニズムと3つの予防対策

現場の研究 性能塗料 2021.10.28 (最終更新日:2024.10.09)
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近年、環境に配慮し、臭いも少なく、耐候性などの性能も溶剤系塗料と同等であることから、屋根・外壁塗装工事を行う上で、「水性塗料」が採用される機会が多くなってきています。 

しかし、水性塗料を施工した現場の中には、施工から一夜明けると、雨も降っていないのに「塗膜の膨れ」が発生したり、場合によっては塗料が流されてしまったりすることがあります。

そのような現象の原因としては「結露」が関係している場合があります。

今回の記事では「結露による膨れが発生するメカニズム」「対処方法・予防方法」について、詳しく解説します。水性塗料にて施工する機会の多い方はぜひ参考のためにご覧ください。

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そもそも結露が発生する原因とは?

「空気が含むことができる水蒸気量(飽和水蒸気量)」は温度によって決まっています。※表1
飽和水蒸気量は、気温が高くなると多くなり、気温が低くなると少なくなります。 

そのため、昼夜の寒暖差が大きい冬の季節には、夜間の急激な温度低下によって空気中に保持できなくなった水蒸気が凝集し、水滴として建物の表面などに付着することがあります。これが原因となって発生する水滴が結露です。 

■主要な温度における飽和水蒸気量

気温(℃) 10 15 20 25 30 
飽和水蒸気量(g/㎥) 4.8 6.8 9.4 12.8 17.2 23.0 30.3 

結露は次のような気象条件の時に発生しやすい現象です
●昼夜の寒暖差が大きい
●比較的湿度が高い
●無風(塗料の乾燥が遅くなる)

結露が原因で膨れが発生した現場

詳細な内容
下地金属屋根
仕様弱溶剤形錆止め下塗材+水性形上塗材 ※水性形上塗材は14時頃施工を終了
施工時期10~12月
環境山間部(昼夜の寒暖差が大きく結露が発生しやすい)
症状翌朝に折板屋根の谷部で水性上塗材の膨れが発生
膨れ

結露による膨れの発生メカニズム

この結露現象は、①~④の流れで、乾燥途中の塗膜表面に結露水が付着したことで発生したと考えられます。

1.空気中の水分が塗膜表面に結露

塗装後、塗膜が完全に乾燥していない状態で、表面に結露によって発生した水分が付着します。 

金属下地は、窯業系サイディングなどと比較して熱伝導率が高く、表面の温度変化が大きくなるため、特に表面に結露が発生しやすい下地です。

メカニズム

※1:特定の成分のみを透過させ、その他の成分の透過が不可能な膜のこと。 塗膜においての半透膜は、水分を透過することのできる乾燥途中の水性塗膜の状態を指します。

2.結露が水性塗膜内部に浸透

半透膜状態の水性塗膜表面に結露が発生すると、水分が乾燥途中の塗膜内部に徐々に浸透します。

メカニズム2

3.結露による塗膜の膨れが発生

浸透した水分が塗膜の裏側に溜まり、塗膜を押し上げることで水膨れが発生します。

メカニズム3

※2:裏側の塗料(未乾燥部)の塗料濃度を薄めようとする際に働く圧力のこと。

4.結露の乾燥により塗膜の膨れ・シワが発生

塗膜の乾燥が進むにつれ、浸み込んでいた結露も徐々に蒸発していきます。しかしながら、膨れて伸びた塗膜が浮いた状態となり塗膜のシワにつながります。

メカニズム4

結露による膨れの対処方法

小さな膨れの場合、塗膜が乾燥すると膨れが目立たなくなることがあります。ところが、一度膨れた塗膜は、乾燥しても付着力が回復することはありませんので、経年によって膨れが再発する可能性があります。

膨れが発生した場合、該当箇所および周辺の塗膜を除去し、再塗装を行ってください。

膨れ

上記写真は水膨れ発生箇所にテープ付着試験を実施した写真です。本来の付着性を発揮できず、簡単に塗膜が剥がれる状況です。

予防方法

前述のような気象条件が重なる場合、結露は発生しやすくなる傾向があります。特に「山間部に位置している物件」や「金属下地の物件」は、さらに結露しやすくなるため注意が必要です。

水性塗料の結露による膨れを避けるためにも以下の対策を推奨します。

対策①
14時までに施工を終了する

日が暮れると、気温が下がり、昼夜の寒暖差によって結露が発生しやすくなります。
そのため、日没までに塗料が十分乾燥するだけの時間を確保して下さい。
※過去に14時以降に施工された物件の不具合が複数確認されています。

対策②
1回あたりの塗布量を減らして、塗布回数を増やす

1回あたりの塗膜厚を薄くすることで乾燥が早まり、結露水が浸み込みやすい半透膜状態の時間を短くすることができます。
※塗布回数を増やして、必ず規定塗布量を遵守してください。

対策③ 
水の希釈量を減らす

水希釈すると、その分乾燥までの時間が長くかかってしまうため、最低限の希釈量で施工をします。

まとめ

この記事では、結露による膨れのメカニズムから、発生した膨れの対処方法・予防方法までをご紹介しました。

今回ご紹介した現場は、金属屋根で膨れた事例ですが、外壁においても同様のメカニズムで膨れが発生することはあります。

膨れが発生した場合、膨れ塗膜を除去し、再塗装することになってしまうため、結露が予想される場合、乾燥時間に注意して塗装することが効果的です。今後、塗装直後の結露には十分注意するよう心がけましょう。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

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谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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