大倒産時代に生き残るために

代表コラム 外壁屋根防水材 2022.11.16 (最終更新日:2024.01.16)
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帝国データバンクが2022年7月に発表した報告によると、コロナ禍以降「ゾンビ企業」が16.5万社と増加し、全企業の1割強が該当するというものでした。

ゾンビ企業とは、事業利益で利払いを負担しきれていない企業のことです。すなわち、過剰債務状態であり、実質的には倒産状態にあるとされる企業を指します。そんな企業が、10社に1社あるという衝撃的な報告であり、さらにゾンビ企業を業種別にみると、「建設業」が全体の34.3%と最も多いという事実があります。

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この現状は、ある程度予想できていたと思っています。

コロナ禍で経営環境が悪化し多くの中小企業が経営難に陥った時、政府からのジャブジャブの助成金や支援金、さらに2020年3月からは実質無利子(利子の免除)・無担保での融資、通称「ゼロゼロ融資」が大規模に行われ、本来であれば倒産するはずの企業までもが延命されました。

結果として、増えるはずの企業倒産数が抑制されるどころか、過去50年間で最低の倒産数となりました。

しかしながら、ゼロゼロ融資の返済期限を迎える「2023年6月あたり」が返済のピークとされており、返済が始まり始めた「2022年4月」から明確に倒産件数は増加に転じています。これから来年以降にかけて大倒産時代を迎えることになると容易に想像できるでしょう。しかも、大倒産時代の主な犠牲者となるゾンビ企業の35%近くが建設業、つまり我々が関わる業界となります。

ゾンビ企業に巻き込まれないために

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※イメージ写真

まずは、10社に1社の実質倒産しているゾンビ企業に巻き込まれないよう手を打つことが重要です。ゾンビ企業の見つけ方について、ある大学教授のコラムで書かれていたものが参考になりましたので紹介します。

【ゾンビ企業の見つけ方】
① 最近、急に中間管理職、それも仕事ができる社員が辞めている
② 締め日に社長や経理部長が社内にいない
③ 急に発注量を増やしてきた

塗装会社にとっては、取引のある元請企業の中にゾンビ企業があるか、という観点で見ることになりますので、上記3つがそのまま当てはまらない場合もあるでしょう。しかし、取引のある元請企業を客観的に現段階で見つめ直すことはとても重要です。大きな金額が不払いになることで、自社の経営危機と瞬間的に直面することになります。

冒頭でご紹介した帝国データバンクの調査結果をさらに詳しくみると、ゾンビ企業の全体の7割超が業歴30年以上の企業であるという事実もあります。すなわち、付き合いの長い取引先だから安心ということはなく、むしろリスクが高いという観点で取引先を見つめ直す必要があるということです。

幸運なのは、リーマン・ショックのように突然やってくる危機ではなく、ある程度予測ができる危機のため、今から準備しておけばまだ間に合うかもしれないということです。

自社が潜在的なゾンビ企業だとしたら

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次は、自社が潜在的なゾンビ企業だとしたら、どのように対応すればいいのかを考えてみたいと思います。

すでに起きているインフレによる原価高騰、世界的に起きている景気後退により、来年は経営環境が大きく悪化することが予想されます。すなわち、今と同じことをやっていたら、業績はさらに悪化していくことは確実です。その中で、まず絶対に行わないといけないのが、「値上げ」です。原価が上がっているのに値上げしない企業は淘汰の道を歩むしかありません。塗装業界において、効率的な規模拡大はできないからです。

「値上げ」をするということは、競合他社と比較して全てを上回っておく必要があります。知名度、商品力、営業力、提案力、工事品質などの全てを競合他社より上回ることが大前提です。それらの準備を行いながら、「値上げ」することが絶対条件となります。

「両利きの経営」が必要な時代へ

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※イメージ写真

その上でとても有効だと考えるのは、「両利きの経営(チャールズ・A・オライリー著、東洋経済新報社)」に書かれている内容だと思っています。

両利きとは、左右の両手がどちらも利き手であるかのように自在に使えることを意味しますが、著書では「深化」と「探索」の両利きが必要であると説いています。「深化」は既存の事業をもっと深く極めていき、自社のサービスの価値と品質を高め続けていくことを指します。

「探索」は、新規の取り組みをし続けることで、「深化」と「探索」の二つを同時に高い次元で両立していくことが大切と記されています。私は、まさしく今の時代に必要な考えだと思っています。

来年から経営環境がより悪化することは確実です。既存事業をもっと極める取り組み(深化)を行いながら、結果として値上げも実現させ、その上で新たな取り組み(探索)を確実に行うといった、「両利き」で経営していくことが本当に必要な時代だと思っています。

新しい取り組みに関しては、アステックペイントとしても皆様と関わりながら実現できるようにしっかり取り組んでいきたいと考えています。


コラム寄稿】株式会社アステックペイント代表 菅原徹

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菅原 徹(すがはら とおる)

株式会社アステックペイント代表取締役
2000年10月に株式会社アステックペイントを創業して以来、高付加価値な住宅用塗料の研究開発・製造・システムやアプリ開発・販促支援など、あらゆる角度から塗装業界の発展を目指し、事業展開している。

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