注意したい!夏の時期に起きやすい塗料の不具合と取り扱い方法

現場の研究 外壁不具合塗装屋根 2023.09.06 (最終更新日:2024.10.08)
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20230828_夏場
20230828_夏場

「夏」の時期は気温が高く、晴れる日が続くため、塗料の乾燥が早く、屋根や外壁塗装を行う際の塗装工程も比較的スムーズに進むことが多い時期。しかし、気温が高すぎることで塗料自体や塗装工事中に不具合が発生してしまうリスクも高まります。

今回は、夏に起こりやすい不具合事例と正しい塗料の取り扱い方法について詳しくお伝えします。

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事例①】可使時間超過によるゲル化

この事例は2液型塗料でのみ発生する不具合事例です。

塗料やシーリング材、接着剤等において、主剤(A液)と硬化剤(B液)、硬化促進剤などを混合してから「使用可能な時間」のことを「可使時間」といいます。

塗料の場合、可使時間を超過すると塗料の反応硬化が進み、粘度が上昇します。(ゲル化)

粘度上昇が進むと塗装作業が困難になり、塗料本来の色や性能を発揮できないなどの不具合が発生する可能性があります。

ゲル化

一般的な可使時間は、2~3時間で設定されることが多いですが、猛暑時や直射日光下では塗料や希釈剤(水、シンナー)の放置による温度上昇が原因※で、可使時間以内でも粘度上昇が始まることがあります。

実際に夏の現場作業で希釈剤として使用した水道水の温度が高く、可使時間が短くなったという事例も起こっています。

※温度が高い環境下では硬化反応が進みやすいため

事前防止策

・ A液にB液を添加した後は直ちに撹拌し、すぐに使用してください。混合すると反応が始まるため、可使時間以内で塗装できる量を混合してください。

・直射日光下など著しい温度上昇が起こる場所での保管は避けてください。温度が高い程、硬化反応が進みやすく、粘度上昇が起こりやすくなります。

不具合が発生した時の対処法 

可使時間を超過しゲル化した2液塗料は廃棄してください。希釈剤を添加すると一時的に粘度は下がりますが、塗料の反応は進行中のため塗膜性能が低下する恐れがあります。

事例②】水性塗料の表面皮張り

この事例は水性塗料のみで発生する不具合事例です。

塗料缶の内部で、塗料の表面のみが乾燥し写真のように膜が張る現象です。特に夏場は気温が高いため塗料の乾燥が進みやすく、この現象が起こりやすい傾向があります。 膜が張っていることに気が付かずにその状態のまま撹拌をすると、塗料中に細かい粒が発生する場合があります。

皮張り

皮張りが発生する原因

❶ 容器の蓋に隙間があり、水分が失われ表面乾燥が進んだ

水性塗料は、溶媒である「水分」が揮発することで塗膜となります。容器の蓋に隙間がある場合、徐々に水分が揮発し塗料の表面が乾燥、皮張りが発生する可能性があります。夏場は気温が高いため水分が揮発しやすく、皮張りが発生しやすくなります。

❷ 屋外に放置して一部に直射日光が当たり温められ、部分乾燥した

塗料缶の一部に直射日光が当たると、塗料缶内部で温度差が生じます。その結果、溶媒である水分は温度の高い箇所で「水蒸気」となり揮発し、塗膜が乾燥します。(表面が乾燥し、皮張りが発生) 

揮発した水蒸気は、温度の低い箇所で「水分」となり缶内で結露します。

部分乾燥・結露

使い残しを保管し、容器内(塗料缶など)の空間率が高くなった

一度開封した塗料を同じ容器で保管すると、使用した塗料の分だけ空間率が高くなります。

開封前・使用後

空間率が高くなると、空間に含むことのできる水蒸気の量が増加するため、水性塗料中の水分が揮発しやすくなります。その結果、塗料の表面の乾燥が進み皮張りが発生します。特に夏場は気温が高く、水分が揮発しやすい環境となるため、皮張りが発生しやすいです。

開封前・使用後2

事前防止策

・一度開封した蓋はきちんと締め、水分の乾燥を防いでください。
・ 現場で保管する場合は、直射日光を避けて保管してください。 例)日陰に保管する、ブルーシートを上からかける など
・少ない残ネタは空間率を下げるため、小さい容器に移ししっかり密閉して保管してください。

不具合が発生した時の対処法

表面の皮張りを取り除いて使用してください。皮張りに気づかず撹拌した場合は粒となって塗料中に存在するため、ストッキングなどで濾過した後使用してください。

事例③】硬化反応(架橋反応)によるダマの発生

この事例は硬化反応で硬化する2液塗料でのみ発生する不具合事例です。

通常2液塗料は、A液にB液を添加した後、すぐに電動撹拌機などを用いて撹拌を行います。しかし、A液にB液を加えた後撹拌せずにしばらく放置した場合、塗料内にダマ(粒)が発生することがあります。

架橋反応で硬化する2液塗料は、A液とB液を混合することで反応が始まります。そのため、 A液にB液を添加した状態で放置すると、A液に、濃厚なB液が長時間接触した状態となります。

その結果、界面付近で反応が始まり膜が形成され、そのまま撹拌することでダマ(粒)が発生します。

特に夏場は気温が高いため硬化反応が進みやすく、ダマが発生しやすい傾向があります。

粒発生メカニズム

事前防止策

・A液にB液を添加した後はすぐに撹拌し、すぐに使用してください。放置することで部分的に反応が進み、ダマの発生原因となります。直射日光の当たる箇所での混合・放置は反応が早くなるため、直射日光を避けた場所で行ってください。

不具合が発生した時の対処法

ダマや膜の発生は塗料の一部であるため、塗膜の性能には影響を及ぼしません。そのため、ストッキングなどで濾過した後、使用することができます。

塗料の正しい取り扱い方法

今回ご紹介したそれぞれの事前防止策を、最後にまとめてご紹介いたします。特に、気温の上がりやすい夏場の取り扱いには注意が必要です。ぜひ皆様の塗装現場でお役立てください。

【保管】

塗料を保管する際は、以下の点に注意してください。

現場の場合(短期間)資材置き場の場合(長期間)
・塗料や道具などをまとめ、その上にブルーシートをかけて現場を退出してください。※直射日光を避ける、外から見えないようにするため
・直射日光の当たる場所に放置しないでください。
・開封後の塗料缶は、乾燥や水が入り込まないようにビニールマスカーで養生を行い密封してください。
・直射日光の当たる場所や湿度の高い場所には保管しないでください。今回紹介した不具合などが発生する恐れがあります。
・塗料が入っている容器には必ず蓋をしてください。

【撹拌・塗装】

・A液にB液を添加した後は直ちに撹拌してください。
・可使時間内で塗装できる量を混合してください。

まとめ

塗料は温度による影響を受けやすいため、特に気温の高い夏場は塗料の取り扱いや塗装作業に注意が必要です。夏場の塗装品質向上のためにもぜひ参考にされてみてください。

場の安心安全のため、危険物について学び、適正に溶剤塗料を保管していきましょう。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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