知っておきたい基礎知識!下塗材が塗装工事に果たす役割

現場の研究 塗料・塗装のQ&A塗料塗装 2024.07.22 (最終更新日:2024.10.08)
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塗装工事における下塗材の役割はとても重要です。下地材に適応した下塗材を使用することで、上塗材本来の性能を発揮でき、長期間建物を保護できます。しかしながら、下地材に適応しない下塗材を使用すると、早期に塗膜が剥がれたり、膨れたりする可能性があります。結果的に建物の保護機能が損なわれてしまい、上塗材本来の性能を発揮できない場合もあります。

下塗材と言っても様々な種類があり、「シーラー・プライマー・フィラー」「水性・溶剤」「1液・2液」「色」「機能(遮熱・防錆・難付着対応)」など多岐にわたります。その中から下地やニーズに合わせて下塗材を選択しなければなりません。

本記事では、基本的な下塗材に関する情報【「シーラー・プライマー・フィラー」「水性・溶剤」「1液・2液」】を詳しくご紹介いたします。

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下塗材とは

下塗材とは、塗装工程を化粧で例えると、一番外側に来るファンデーションを塗る前に密着を高めたり、肌の調子を整える化粧水や保湿クリームのような役割になります。様々な肌のタイプに合わせて、化粧水や保湿クリームを選択するように、下塗材も下地材への付着力を高めることに加えて、各用途に合わせて使い分けることができます。また、色のパターンも透明・白・グレー・赤さび・黒などがあり用途によって使い分けます。

下塗材の基本的な役割

下塗材は「下地材への付着性」の他に、「吸い込み止め」、「凹凸や段差を埋める」という役割があります。この章では下塗材の3つ役割について詳しく紹介いていきます。

下地材と上塗材との付着力を高める役割

上塗材を直接下地材へ塗布した場合、付着しない製品がほとんどです。(一部上塗材のみで付着する製品もあります。)下塗材を塗ることで、上塗材の付着力が高まり、塗膜剥離を防ぐことができます(下図参照)。

※なお、既存塗膜がある場合は、前回の塗装で使用した塗料の種類によって下塗材を選定する必要がありますので、事前に改修工事の履歴を確認しておく必要があります。

下塗材の有無による下地材と上塗材の付着性のイメージ図

②劣化した下地材の吸い込みを止める役割

建物の下地材表面は、太陽光の紫外線や熱・雨水によって劣化します。また、経年劣化した下地材表面は防水機能が低下し、水分を吸収しやすい状態になっています。劣化した下地材に対して下塗材を塗布していない場合、上塗材も下地材に吸い込まれてしまいます。結果的に上塗材の塗膜が薄くなり、本来の性能を発揮することができなくなる可能性があります。

そこで、下塗材を使用することで、劣化した下地材に下塗材が浸透し、下地材の吸い込みを抑えます。その結果、上塗材の厚みを確保することができ、本来の性能を発揮できるようになります。

※ただし、下地材の劣化が激しい場合は、下塗材を1回塗りではなく2回塗るなどの対策が必要な場合もあります。

下塗材の塗布量が不十分な場合のイメージ図

③下地材の凹凸や段差を埋める役割

下地材は、経年劣化でひび割れが発生したり、塗膜表面に微細なひび割れが発生することがあります。また、下地材によっては仕上材(吹付タイル・リシン・スタッコなど)による凹凸もあります。

下塗材により、微細なひび割れや仕上材の凹凸をなだらかにすることで、上塗材を均一に塗布することができます(下図参照)。一般的には、微細なひび割れや凹凸を埋めるために微弾性フィラーが使用されます。

また、使用するローラーの種類も凹凸の程度や表現したい模様(ゆず肌やさざ波など)によって変わります。(中毛ローラー・長毛ローラー・マスチックローラー)

凹凸のある下地材に微弾性フィラーを塗装した断面

一般的な下塗材の種類紹介

下塗材の種類(用途別)

下塗材は「プライマー」「シーラー」「フィラー(※ここでは微弾性フィラーを指す)」の3つに分類されます。それぞれの目的や使用場面をご紹介します。

種類用途主な使用場面
プライマー塗料の付着性を上げる金属下地材、難付着系 等
シーラー下地材への塗料の吸い込みを抑える劣化した下地材全般
微弾性フィラー下地材の凹凸を埋め、下地材を滑らかにする凹凸のある下地材(モルタル外壁など)

①「プライマー」

用途:塗料の付着性を向上させる下塗材

プライマーは“最初の”という意味を持つ“primer”に由来しています。プライマーとシーラーの区別は明確に定義されているわけではありません。一般的にプライマーは塗料との付着性を上げることを目的として使用されます。また、プライマーには錆止め機能、難付着系下地材対応など特殊機能を有するものが多くあります。

※当社プライマーの代表製品:

金属下地用錆止め下塗材:サーモテックメタルプライマーエポパワーメタルJY
難付着系下地(フッ素・無機・光触媒)に対応した下塗材:プレミアムSSシーラープライマー

②「シーラー」

用途:下地材への塗料の吸い込みを抑える下塗材

シーラーは接着するという意味を持つ“seal”に由来しています。シーラーは上塗材と下地材の密着力を高めるだけでなく、傷んだ下地材に浸透することで、下地材の吸い込みを抑えます。また、一般的にコンクリート、モルタル、窯業系サイディング、木材など建材からのアクを抑える効果を有したものを「シーラー」と呼ぶこともあります。

※当社シーラーの代表的な製品

窯業系サイディングなどに適した水性下塗材:エポパワーシーラー
平板スレート瓦(カラーベスト)などに適した弱溶剤下塗材:サーモテックシーラー

③「フィラー(※ここでは微弾性フィラーを指す)」

用途:下地材の凹凸を埋め、滑らかにする下塗材

微弾性フィラーは、シーラーのように下地材表面に浸透して固める効果はありませんが、下地材表面の凹凸を埋め、下地材を滑らかにすることができます。また、塗膜厚をつけることができ、下地材からの微細なひび割れや既存塗膜の模様を整える目的で使用されます。プライマーやシーラーよりも粘り気(粘度が高い)のある材料であり、マスチックローラー等を用いて下地材の表面に模様や柄をつけることも可能です。

※当社微弾性フィラーの代表的な製品:エピテックフィラーAEⅡホワイトフィラーAⅡ
※既存塗膜のチョーキングなどの劣化が著しい場合、または既存塗膜のないセメント系下地材に塗装を行う場合、微弾性フィラーの付着が悪くなる可能性がありますので、事前にシーラーを塗布することを推奨します。

下塗材の種類(タイプ)

続いては、下塗材のタイプによる性能の違いをご紹介いたします。ここでは、「溶剤タイプと水性タイプ」、「1液タイプと2液タイプ」の一般的な違いについてご紹介します。

①溶剤タイプと水性タイプ

塗料は大きく分けて「溶剤タイプ:溶剤塗料」・「水性タイプ:水性塗料」に分けられます。この2つの違いは、溶媒が溶剤なのか水なのかで分けられます。下記図を参照してください。

・溶剤塗料の溶媒は「溶剤(シンナー成分)」です。溶媒のシンナーに樹脂が溶けており、顔料は溶けずに塗料内に分散しています。

・水性塗料の溶剤は「水」です。水に樹脂と顔料が分散しています。その後、塗料内の溶媒(溶剤・水)が蒸発することで、塗膜になります。

溶剤塗料と水性塗料の構成と成膜イメージ

それぞれの溶剤タイプと水性タイプの一般的な特徴は下記の通りです(表参照)。[貴待1] 

種類特徴主な使用場面
溶剤タイプ・下地材への浸透、固着力が高い ・水の影響を受けにくい・劣化が激しい下地材 ・多くの屋根塗装で使用
水性タイプ・臭いが少ない ・人体に害が少ない ・溶剤タイプと比べると価格が安い。・比較的劣化の少ない下地材 ・多くの外壁塗装で使用

②1液タイプと2液タイプ

さらに塗料は、「1液タイプ」と「2液タイプ」に分類されます。

1液塗料は、1つの塗料缶内の塗料をそのまま使用することができます。
2液塗料は、2つの異なる塗料缶の塗料を混ぜ合わせて使用する塗料です。
それぞれの一般的な特徴は下記の通りです。

種類特徴
1液タイプ・2液タイプと比べると価格が安い ・可使時間※がなく、計量が不要で扱いやすい
2液タイプ・下地材に対して強力な付着力がある。

※可使時間とは、2液タイプを混合したあと使用可能な制限時間のことです。

ここまで、下塗材の種類についてご紹介いたしました。下塗材にも様々な役割がありますので、それぞれの特徴を理解したうえで、現場で最適な仕様を組んでいただくことが必要になります。


まとめ

本記事では、下塗材の必要性についてご紹介いたしました。

少しでも「下塗材」についての知識や必要性を知っていただき、現場で活かしていただけますと幸いです。また、下塗材には上記ご紹介した性能以外の特徴を持った機能性のあるものもあります。そちらに関しては

こちらの「後編」をご覧ください。

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この記事の監修者と運営者

【記事監修】
株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

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株式会社アステックペイント 
谷口 智弘

株式会社アステックペイント技術開発本部 本部長
住宅用塗料市場のマーケティング分析・品質管理を行う「商品企画管理室」、塗料の研究・開発を行う「技術開発部」、塗料の製造・生産・出荷を行う「生産部」の3事業部を統括するマネジャーとして、高付加価値塗料の研究・開発を行っている。

【運営会社】
株式会社アステックペイント

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株式会社アステックペイント

AP ONLINEを運営する株式会社アステックペイントは、建築用塗料を製造・販売する塗料メーカー。遮熱性、低汚染性に優れた高付加価値塗料の研究・開発の他、システム・販促支援など、塗装業界の課題解決につながる事業を展開。2020年以降、遮熱塗料国内メーカーシェアNo.1を連続獲得中。

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