耐火被覆材
耐火被覆材とは、鉄骨造建築物の鉄骨(骨組み)を火災時の高熱から守り、強度低下・崩壊を防ぐために鉄骨の表面に施す建材のこと。 鉄骨は約350℃以上で急激に強度が低下する性質があるため、耐火被覆材で断熱・保護することで火災時に一定時間の耐火性能を確保する役割を果たす。
耐火被覆材が必要な理由
鉄骨造建築物に耐火被覆材が必要な主な理由は以下の2点だ。
- 鉄骨の熱による強度低下を防ぐ:鉄骨は火災による高温で短時間のうちに変形・崩壊するリスクがある。耐火被覆材が断熱層となり、鉄骨の温度上昇を遅らせることで建物の倒壊を防ぐ
- 建築基準法による義務付け:建築基準法では、鉄骨造の建物に対して一定の耐火被覆を施すことで耐火建築物とみなすと定められており、用途・規模に応じた耐火性能の確保が義務付けられている
耐火被覆材の主な種類
耐火被覆材には施工方法によって主に以下の種類がある。
| 種類 | 工法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 吹き付けタイプ | ロックウール・けい酸カルシウムなどを鉄骨表面に吹き付ける | 複雑な形状にも対応しやすく、広範囲に効率よく施工できる。現在最も広く普及している工法 |
| 巻き付けタイプ | 耐火シート・耐火ボードを鉄骨に巻き付けて固定する | 施工精度が高く、粉じんの発生が少ない。仕上がりが美しく内装への影響が少ない |
| 耐火塗料タイプ | 膨張型耐火塗料を鉄骨表面に塗装する | 薄く仕上がるため意匠性が高く、鉄骨現しデザインの建物に採用されるケースが増えている |
旧来の耐火被覆材とアスベスト問題
かつての耐火被覆材はアスベスト(石綿)を主成分とする吹き付け材が広く使用されていた。しかし以下の問題が社会問題化したことで、現在はアスベスト含有の耐火被覆材の使用は全面的に禁止されている。
- 施工時の飛散リスク:吹き付け工事中にアスベスト繊維が空気中に飛散し、作業従事者の健康被害が発生した
- 経年劣化による飛散:施工後に耐火被覆材が劣化・崩落することで、建物の利用者・居住者がアスベストを吸引するリスクがあった
- 解体工事での問題:既存建物の解体時に、劣化したアスベスト含有耐火被覆材が周辺環境に飛散し、広域的な健康被害リスクが問題となった
現在でも1975年以前に建設された鉄骨造建物にはアスベスト含有の耐火被覆材が残存している可能性があるため、解体・改修工事前には専門業者による事前調査と適切な除去・処理が法律で義務付けられている。
よくある質問(FAQ)
Q. 耐火被覆材のアスベスト含有調査は必ずしなければならないのか?
一定規模以上の建築物を解体・改修する場合、事前のアスベスト含有調査は法律で義務付けられている。 2022年の大気汚染防止法改正により、建物の規模を問わずすべての解体・改修工事において、着工前に石綿含有建材の事前調査を実施し、結果を都道府県知事に報告する義務が課された。アスベスト含有が確認された場合は、専門の資格を持つ業者による適切な除去・封じ込め・囲い込み処理が必要となる。無届け・無資格での除去は法律違反となるため注意が必要だ。
Q. 現在使用されている耐火被覆材の主な素材は何か?
現在の耐火被覆材はアスベストを含まない無機質系の素材が主流となっている。主な素材は以下のとおりだ。
- ロックウール(岩綿):吹き付けタイプの耐火被覆材として最も広く使用されている。優れた耐火・断熱性能を持ち、アスベストとは異なる安全な無機繊維だ
- けい酸カルシウム:ボード状・吹き付け状で使用される。耐熱性・断熱性に優れる
- 膨張型耐火塗料:火災時に塗膜が膨張して断熱層を形成する塗料。デザイン性を損なわずに耐火性能を確保できる点が特徴だ
Q. 耐火被覆材の劣化・損傷が発生した場合はどう対処すればよいか?
耐火被覆材が劣化・損傷した場合は、そのまま放置せず専門業者に補修・補強を依頼することが重要だ。対処方法は損傷状況によって異なる。
- 部分的な崩落・剥離:損傷箇所に同種の耐火被覆材を吹き付け・巻き付けで補修する
- 広範囲にわたる劣化:既存の耐火被覆材を除去したうえで、新たな耐火被覆材を施工する全面補修が必要となるケースがある
- アスベスト含有の耐火被覆材が損傷している場合:飛散防止措置を講じたうえで、石綿除去に係る資格を持つ専門業者による対応が必要。自己判断での補修・除去は法律違反となる場合があるため、まず専門業者に調査を依頼することが重要だ






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